表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者「娘さんを僕をください」  作者: 筆我尾曾井
1/7

第001話「元勇者は伝説後に家族と幸せに生きる」

「待ってくれ! お前、俺たちを置いて一人で魔王の前に進む気か!?」


 全世界を恐怖に貶めた魔王の扉の前に立つ一人の男へ向けて、満身創痍の男が叫ぶ。


 男の周囲には男二人、女が三人おり、その全員が男と同じように立つことすら難しいほど全身が傷ついていた。


 そんな中に一人、魔王の扉の前に立つ唯一ほぼ無傷の男が口を開いた。




「当たり前だ。


 俺は魔王と合うためにここまで来たんだ。


 だからこれから先、お前たちは来るな」


 背後にいる者たちに全く一瞥せずに男はそう言った。


 そんな男に反対するかのように、金色の髪と白い鎧を着た女が一人、痛む体を耐えながら立ち上がる。




「ふざけないで!!


 今の私たちが()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()しかないのよ!!


 貴方が一人で行ったら……私たちにあなたを見殺しにしろって言うの!?」


「そうです。考え直してください」


 彼女の言葉に同調するように次々と止めろと、考え直せと言う声が響く。


 しかし、そんな彼らの言葉に肩を震わせながらも男は止まらず、目の前の扉にそっと触れる。




「それでも俺は魔王に合わなきゃいけないんだ。


 俺の……いや、俺たちの未来のために」


 ギ―と言う音と一緒にゆっくりと扉が開く。


 恐らく、誰も止められないと悟ったのだろう。


 さっきまで開いていた口を閉じ、彼らは全員自分の無力感を噛みしめるかのように唇をかんでいた。


 そんな中、ただ一人金髪の女だけが諦めずに叫んだ。




「ま、待って、ユウ。お願いだからやめて!! 私……貴方のことが……だからお願い」


「……」


 扉のノブが力で歪む音と女の悲痛な声が重なる。


 しかし、その音を無視しながら男は扉を完全に開き、その先へと進む。




「じゃあな。お前らさようならだ」


「いやああああああ!!」


 そして、女の甲高い悲鳴は扉が完全に閉まるまで響くのだった。




「よく来たな。勇者、ユウ。


 話は聞いている。早速始めよう」


 絢爛とした華々しい部屋の中に響く邪悪と優雅さを混ぜたかのような魔王の声。


 その姿は正に異形としか言えず、骨でしかないにも関わらずその節々から力強さを感じさせた。


 そして、その隣には、誰も見たことがないほどの黒髪の絶世の美女がいた。


 そんな二人を前に、喉を鳴らした勇者は刀を抜き、その刀を地面に突き刺した。




 その後、勇者と共に魔王とその仲間は全員姿を消し、世界は救われた。


 一人の勇者の尊い――――
















「娘さんを僕にください!!


 魔王(おとう)さん」




「こちらこそ、娘をよろしく頼む。幸せにしてあげてくれ。


 我が勇者(むすこ)よ」
















 幸せと共に。




 そして、勇者が消えてから数年後。


「ふう、ただいまー。


 はい、今日は結構野菜収穫できたぞ」


「お疲れ様です。いつもご苦労様」


「こちらこそ。


 ジークの子守りお疲れ様。


 ジークは?」


「もうすっかり寝ているよ。


 あ、あとお父さん来てるよ」


「やあ、孫と義息子の顔を見たくてね。


 失礼しています」


 消息を消した勇者は魔王の娘と家族となり、数年後、息子が生まれた。




「いえいえ、お義父さんも家族なんですから失礼だなんて言わないでくださいよ」


「なら、ユウも敬語は止めてください……って、それなら私もか」


「ふふふ、もう二人ったら」


 そうこれは、魔王の居なくなったそんな世界で生きる。


 元勇者と元魔王の家族の物語である。

不意に自分が笑える作品が出来たので、書きました。

もし楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ