(7-03) 特別
「昼」「夜」「朝」「夕方」
えっと、それから……。
「人間」「敵」「味方」「危険」「安全」
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「ある」「ない」「できる」「できない」
今日も、いろいろな言葉を教えていただきました。発音と意味をメモしたノートも、だいぶたまってきましたね。
発音は合ってるでしょうか? あ、これでいいみたいです。聖竜王様に褒めていただけました。
その時、聖竜王様の羽音が。あれは、ルーザンの聖竜王様ですね。
ルーザンの聖竜王様はうちの聖竜王様と相性が良いらしく、毎日のように訪ねてこられます。おかげで、ネルさんやフィマさんとは、すっかり仲良くなってしまいました。
二人が降りてきたので、私はいつも通りそちらの相手を、と思ったのですが……。え、挨拶ですか?
あ、確かにそうです! 今こそ、日頃の練習の成果を見せる時です!!
「こんにちは」
ルーザンの聖竜王様に、とても喜んでいただけました。私の言葉、どうやら他の聖竜王様にもちゃんと通じたみたいです。
「シーナ、あれ、何をしたの?」
喜んでおられるルーザンの聖竜王様を見て、ネルさんが不思議そうに聞きます。
「いえ、ちょっとご挨拶を」
「挨拶って?」
「聖竜王様に、聖竜王様のお言葉での挨拶を教えていただいたので」
ネルさんとフィマさんが、目を丸くします。
「聖竜王様の言葉なんて、私たちにも話せるの?」
それが、わりと話せるのです。正直、試してみた私自身がびっくりしてるくらいですけど。
挨拶の他にもいろいろな言葉を教えていただいてることを話すと、二人はますます信じられないという顔です。
「あの、ところで……」
フィマさんがおそるおそる……という感じで聞いてきました。
「シーナさん、さっき聖竜王様に名前で呼ばれてませんでした?」
ええ、呼ばれてました。最初に名前を聞かれ、それからは普通に名前で呼ばれていることを説明すると、二人は再び信じられないという顔です。
「聖竜王様が私たちを名前で呼ぶなんて、聞いたこともないんだけど」
え、そういうものなんですか?
その時、聖竜王様のお声が。
あ、二人の名前ですか? ええ、わかります。
聖竜王様に二人の名前の発音を伝えてから振り返ると、二人は何が起きてるのか理解できていない顔で、ポカンと口を開けたまま固まっていました。
あ、ルーザンの聖竜王様のお声が。ネルさんとフィマさんを名前で呼ばれました。
「あ、はい!」
「は、はいっ!」
二人の返事の声が、少し緊張気味です。
そうでした。二人は、名前で呼ばれるのはこれが初めてなんですよね。私は、もうだいぶ慣れましたけど。
「それにしても、不思議な聖竜王様だな。私たちに名前を聞いたり言葉を教えたりする聖竜王様なんて、初めて聞いた」
それについて、実は以前に少し説明していただいたことがあるのです。
うちの聖竜王様は、こことは違う別の場所? 世界? から、最近こちらに来られたばかりなのだそうです。そのため、普通の聖竜王様とは少し違う考え方をお持ちらしく、私の扱いや私に期待することなども、普通の聖竜王様とは少し違うかもしれないと。実際、違うみたいですね。
もちろん、私は何でもかまいません。聖竜王様のどんなご期待にも、精一杯応えるだけですから。




