【6-05】 子供
「ねえ、ヴィル。もう、エルンに洞窟に来てもらった?」
「まだよ。さっき初めて会ったばかりだもの」
「それなら、これからみんなで行かない?」
そういえば、ルーザンが初めて来た時も、洞窟に案内してもらったな。
「そうね。エルン、暇なら来ない?」
当然ながら、特に予定はない。せっかくだし、ちょっと行ってみるかな。
二頭がひと声かけると、四人の巫女が慣れた様子でそれぞれの主の背中へと登っていく。シーナはどうする? あ、さっき何かの作業中だったの? だったら、今日は続きをしながら留守番してなさい。
飛び立って間もなく、ルーザンとヴィルがまた近所の若いオスドラゴンについての議論を始めた。飛びながら、まだ女子会の続きをやる気らしい。
仕方ないので、ぼくは二頭の少し後ろをのんびり飛んでいたんだけど……。
「あ、エルンさんだ」
「こんにちはー」
下の方から声が。見下ろすと、小さな子供ドラゴンが二頭、ぼくの方に向かって上昇してくるところだった。
「あ、ああ。こんにちは」
この二頭には見覚えがある。前に挨拶に来た熟女ドラゴンのアルシエさんが連れていた、幼いきょうだいドラゴンの姉と弟だ。
「何してるの?」
「洞窟に帰るとこ」
話を聞いてみると、どうやら他の子供ドラゴンの洞窟に遊びに行っていて、これから帰宅するところらしい。
ちょうど方向が同じだというので、子供たちを加えて5頭編隊になった。本来は単独行動が基本のドラゴンがこんなにまとまって飛ぶのは、かなり珍しい光景なのだとか。
「着いたよ。あそこ」
「あそこー」
子供たちが指す方を見下ろすと、前方の山の斜面に草の広場があり、アルシエさんが寝そべっているのが見えた。このあたりは初めて来たけど、アルシエの洞窟ってこんなところだったのか。
「それじゃ、さようなら」
「またねー」
子供たちが、手……いや、しっぽを振りながら降下していく。
「ただいまー」
「あら、おかえり」
子供たちが、広場に着地する。そして……。
弟が突然、アルシエさんの胸元に頭を突っ込んだ。アルシエさんは、特に驚く様子もなく、子供の頭を両前足で優しく押さえながら首に頬ずりする。
……ん?
しばらくして弟が離れたところで、今度は姉もアルシエさんの胸元に頭を差し込んだ。アルシエさんは、また同じように頭を両前足で優しく押さえながら首に頬ずりする。
……んん?
あれって、もしかして、さっきぼくがヴィルにやられていた不思議な絡み合いと同じもの……なのでは?




