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【1-07】 夜の森で

 遠くで、時々フクロウの鳴き声が聞こえる。

 ぼくは今、夜の森の奥深くにいるんだよな。真っ暗な森の中に一人で……。いや、暗くはないんだけど。周囲を見回せば昼間と変わらないくらい明るいので、あまり怖くはないけど。


 でも、一人でぼんやりしてると、いろいろと変なことを考えてしまう。

 お化けが出たらどうしよう。こんなに明るいけど。

 いや、明るいのはぼくだけの個人的な事情であって、客観的に言って今が夜であることは間違いないんだから、お化けにとっては別に出るのを躊躇する理由は何もないはず。


 ドラゴンといえば、ファンタジーの中では、モンスターの最強種といった扱いを受けることが多い気がする。ゲームなんかでも、ラスボスとして登場することが多いよな。

 ということは、ダンジョンを徘徊するアンデッド系のモンスターなんかは、ドラゴンにとっては味方と考えていいんだろうか。いや、むしろ手下扱いでもいいのか?


 いや、そうとも限らないか。

 ぼくは今、ダンジョンの支配者をやってるわけじゃない。つまり、モンスターたちにとって、ぼくは直属のボスではないわけだ。だとすると、ぼくを見たモンスターたちがどう出てくるかは、ちょっと微妙な話になってくるはず。

 ぼくのことを、自分たちのボスと同格の存在と見なして敬意を払ってくれるのが、ぼくにとって一番理想の展開なんだけど。もしかしたら、うちのボスのライバルということで、排除するべき敵と見なして攻撃してくるかもしれない。


 いや、ここはただの森の中であってダンジョンの中ではないのだから、モンスターなんてそうそういる訳がないか。そもそも、この世界にモンスターがいるのかどうかもわからない。ドラゴンがいるくらいだから、もしかしたらいるのかもしれないけど。そういうのも、村で聞いてみたかったんだけどな。

 でも、幽霊は?

 アンデッド系モンスターと怪談なんかに出てくる怨霊は、またちょっと違う存在なのではないだろうか。


 でも、ここは人里離れた山奥。

 幽霊の正体を、この世に恨みを残して亡くなった人の怨念のようなものだと仮定するなら、幽霊の活動範囲は人間の活動範囲とだいたい重なっているはず。だとしたら、こんな山奥だと、あまりにも寂しい場所過ぎて幽霊すらいないということも考えられるわけだ。

 まあ、何かの理由で山に入って、遭難して亡くなる人もいるだろうから、少しはいるかもしれないけど。


 いや、幽霊にとって、ターゲットになるのは人間だけなのでは?

 もし森の中に幽霊がいても、ドラゴンの前に出現しても無意味と判断して、見逃してもらえるかもしれない。


 いや、考えてみれば、この世界に出る幽霊は、おそらくこの世界で亡くなった人だろう。そうなると当然、幽霊も生前に使っていたこの世界の言葉を話すはず。

 だとしたら、ぼくには幽霊が何を言ってるのか理解できない可能性が高い。せっかく幽霊が出てきて何か恐ろしい呪いの言葉なんかを呟いても、ぼくには何を言ってるのかまったくわからないはず。

 怨霊の呪いというのは、言葉が理解できない相手に対しても発動できるんだろうか? そもそも、幽霊の呪いというのは、ドラゴンに対しても有効なのか?


 いや、幽霊は人間だけとは限らないかもしれないな。もしかしたら、ドラゴンの幽霊もいるかもしれない。

 ドラゴンの幽霊なら、わざとドラゴンばかりを狙って出現するかもしれないし、ドラゴン語(?)を話すかもしれない。だとしたら、ぼくにも呪いの言葉が理解できる可能性がある。呪いだって、おそらくドラゴンに掛けることを前提にチューニングしてあるはず。


 でも、化けて出なければならないほどの非業の死を遂げるドラゴンなんているんだろうか。

 志半ばで勇者に倒されたドラゴンとか? ドラゴンの志というのが、どんなものなのかよくわからないけど。

 あれ? でも、そうなるとそのドラゴンが恨んでいるのは勇者――つまり人間ということになるから、幽霊ドラゴンの呪いのターゲットはやっぱり人間なのか?


 なんか、よくわからなくなってきたな。馬鹿なことを考えてないで、もう寝よう。

 おやすみ、って誰もいないけど。

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