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【5-02】 ドラゴン

 ぼくが海の向こうから来たと聞いてから、ルーザンの態度がはっきりと変わった。具体的には、何を言うにも、ぼくが何も知らないことを前提にきちんと解説を添えてくれるようになった。

 ぼくを置き去りにして勝手に話が進むことがなくなったので、とても助かる。どうやらここは、海の向こうから来たと答えるのが正解だったみたい。


 ルーザンの説明によると、ぼくが最初にいた場所は大きな大陸なのだという。そして、海峡を挟んでこっち側は島らしい。ただ、島と言ってもかなり大きいみたい。ぼくが何日も飛び続けても横断できなかったのから、かなり広いのは間違いないだろう。

 そして、野生(?)のドラゴンの生息地は、世界中でもこの島の中だけ。つまり、海の向こう出身のドラゴンは、普通ならいるはずがないわけだ。もしいるとしたら、かなり複雑な事情を抱えていると考えて、まず間違いないことになる。

 ルーザンが驚いていたのは、普通のドラゴンだと思って気軽に声をかけてみたのに、実はものすごく特異なドラゴンだと気付いたから。


 そして、巫女について。

 巫女とは、洞窟で暮らしながらドラゴンの身の回りの世話をする人間のこと。ドラゴンは、数人の巫女を従えているのが普通らしい。

 ルーザンが乗せていた二人の少女は、ルーザンに仕える巫女だった。そして、ぼくの洞窟にいる少女の様子を説明してみたところ、やはり彼女はぼくに仕える巫女と考えてまず間違いないとのこと。

 ただし、彼女が当初自分を生贄と勘違いしていた理由はよくわからない。普通の巫女はそんなことはなく、最初からドラゴンの世話をするつもりで洞窟にやって来るものらしいんだけど。

 何にしても、彼女が何者で、どんな理由でぼくの世話をしているのかがはっきりしたのは良かった。彼女がぼくの巫女なら、今後もずっと洞窟にいるはずだという。彼女が、いずれ町に帰っていく一時的なお客さんではなく、これからもずっとここにいるつもりなら……。

 時間をかけてじっくりと取り組むことができるなら、試してみたいことはいろいろある。例えば、彼女との会話とか。彼女に頼めば、人間の言葉を教えてもらえるかな?


 それから、『エルン』について。

 ドラゴンのための洞窟はたくさんあり、それぞれにちゃんと名前が決まっているという。例えば、今ぼくが住んでいるこの洞窟は、ドラゴンたちの間では『エルンの洞窟』と呼ばれている場所らしい。

 しかも、関連してもうひとつ重要な話が。

 ドラゴンには、自分が住んでいる洞窟の名前を自分の名前として使う習慣があるらしい。つまり、ぼくのドラゴンとしての名前は、ぼくも知らない間に『エルン』に決まっていたことになる。いろいろ考えなくても自動的に名前が決まってしまうのは便利だけど、なんかややこしい気もするな。

「ところで、この洞窟はどうしてエルンという名前なの?」

「私も知らない。理由はわからないけど、ずっと昔からそう呼ばれてる」

 あ、そう。


「でも、ドラゴンの洞窟がたくさんあるということは、ドラゴンはその辺にたくさんいるの?」

「うん。わりといるよ」

 どうやら、ドラゴンの洞窟は山をいくつか越えれば大抵ひとつやふたつはあるらしい。ただし、それらの全てにドラゴンが住んでいるとは限らず、今は空き家となっている洞窟もたくさんある。この洞窟が、ほくが見つけた時は空き家だったように。

 それでも、ご近所と言える範囲だけでも数十頭はいるとか。まあ、ドラゴンにとっては、ご近所と言ってもかなり広い範囲なのかもしれないけど。

 島全体となると、何頭いるのか想像もつかないらしい。


 なお、空き家の洞窟は、特に誰かに断らなくても自由に住み着いていいらしい。だから、ぼくが今このエルンの洞窟に住んでいることはドラゴン的には完全に合法で、何の問題もないとのこと。とりあえず、不法占拠で揉めたり追い出されたりする心配はなさそう。


 こっちの島の中だけに限れば、ドラゴンは思ってたよりもどこにでもいる普通の生き物らしいな。山いくつもの範囲に一頭づつだから、人間の人口よりはずっと少ないだろうけど。

 しかも、伝統とか習慣とか、けっこうしっかりとした社会を築いているみたいだし。突然海の向こうからやって来たドラゴンが、そんな中に受け入れてもらえるのだろうか?

これまでのまとめをしつつ、大きく方向転換しております。もしかしたら期待してたのと違うと感じる人が出始めるかもしれませんが、なるべくよろしくお願いします。

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