(4-08) 修道院の夜
ふと見上げると、空には夕闇が迫っていました。
あ、もうこんな時間ですか。そろそろ戻らないと。聖竜王様が、夕食を食べようと待っておられる頃ですね。続きはまた明日。
えー、現在、空のお皿を前にして悩んでおります。もう一杯食べるか、やめておくか……。今日は気合いを入れて広場の掃除をしたので、いつもよりお腹が空いてて……。
……たぶん、聖竜王様は私の体型なんて気にされませんよね。やっぱり、もう一杯いただきます。
さて、夕食後はいよいよ聖竜王様のお手入れの時間です。桶に水を汲んで、ブラシとタオルも用意して、では始めましょう。
まずは、ブラシで軽く汚れを落としていきます。いきなり水で拭くよりも、最初に軽く払ってからの方が綺麗になりますよね。
大きな面積の場所は大き目のブラシで。狭い場所は細いブラシで。爪の間などは、ちょっと固めのブラシで。いろいろなブラシをたくさん用意しておいて正解でした。
ざっと汚れを落としたら、絞ったタオルで鱗を拭いていきます、
まずはお顔の周辺から。気持ちよさそうに目を閉じておられる聖竜王様って、ちょっとかわいいかも……とか思ってみたり。
つのもしっかり磨きましょう。つのはかなり高いのですが、聖竜王様が拭きやすいように頭を傾けてくださるので、踏み台は必要ありません。
首から肩のあたりへ。そして背中です。準備を整えて聖竜王様の横に立つと、聖竜王様のしっぽが私の背中に。しっぽに浅く腰かけるような格好で体を押し上げていただき、背中へ移ります。ちょっとした曲芸みたいで、聖竜王様との一体感が感じられて好きな瞬間です。
背中に登ったら、まずは肩のあたりに跨がらせていただきます。拭きながら少しずつ後ろへ移動していき、腰に着いたら背中は終わり。地面に滑り降ります。
翼もきちんと裏表拭きましょう。脇腹からお腹、そして脚へ。しっぽの先までしっかり拭いて、すべて完了です。
聖竜王様は、今夜もピカピカです。ただでさえ綺麗な聖竜王様が、私の手でますます綺麗に。
癖になりそう。いや、もうなってますけど。
ふー、今日も頑張りました。これで、本日の修道院の業務はすべて終了です。
後は寝るだけなので、そろそろ寝間着に着替えましょうか。聖竜王様のお手入れで汗をかいたので、裸になったついでに体を拭きながら。
着替えながらふと見ると、聖竜王様が洞窟の外を見ておられます。星が綺麗ですね。明日も晴れるでしょうか?
暗い洞窟の中でのんびりしていると、すぐに眠気が襲って来ます。あー、あくびが止まらなくなってきた。
あ、聖竜王様が布団に入られます。そろそろ就寝時間のようです。では、私も。
聖竜王様、今夜もよろしくお願いします。
失礼して布団に上がり、聖竜王様の隣で横になります。
聖竜王様の翼が真上に……。体に感じる軽い圧迫感。そして、ふわっと包み込まれるような温かさ。あ、ますます眠気が……。
少し明日の予定を考え……。ま、いいか。どうせいつも通りですよね。もういいです。寝ます。
おやすみなさい。
これで、4章を終わります。
5章では、新キャラが登場して話が大きく動き、やっと世界観の輪郭が見えてくる予定です。




