【4-07】 洞窟の夜
気が付くと、洞窟の中がだいぶ薄暗くなっていた。外を覗くと……。あ、夕焼けがきれい。もうそんな時間か。
その時、外にいた少女がちょうど戻って来た。よし、では夕食にしようか。
ふう、お腹いっぱい。少女も食べ終わって……。と思ったら、少女が空になった皿を持ってまたやって来た。
どうした? ああ、おかわりか。いいよ、どんどん食べなさい。
そして夕食後は、いよいよぼくの体のお手入れタイム。拭いてもらうと気持ちいいので、けっこう楽しみだったりする。
少女が、棚から道具を持ってやって来た。では今夜も頼む。
以前は絞った布で拭くだけだったけど、今回少女はブラシを持ち込んできた。まずは、そのブラシで、体の下の方を中心に、付いた砂などを払い落とす作業から。鱗や爪の間に入ってる砂を取り除いてもらうのは、けっこうすっきりして気持ちいい。場所によって大きさや固さの違う何種類ものブラシを使い分ける少女のこだわりが、なかなか頼もしい。
そして、全身の鱗を拭いていく。使うのは、ありあわせの布で拭いていた以前と違って、本格的なタオル。さらに水を汲む桶も用意して、何度も川までタオルを洗いに行く必要もがなくなった。
では、まず頭から。もちろん、つのも忘れずに。そして首へ。拭く場所が変わると、ぼくも体を一番拭きやすそうな格好に動かして協力する。
次は背中だな。少女が準備を整えてぼくの横に立ったところで、しっぽで少女の体を押し上げて背中へ登らせてやる。
背中を拭き終わった少女は再び地面に滑り降り、胴体から脚、そして最後にしっぽへ。
大きなぼくの体を拭くのはかなりの重労働だと思うんだけど……。なんか、拭いてる時の彼女って、妙に楽しそうなんだよなあ。
ぼくの体を拭くのが、少女のその日最後の仕事だ。
あとは寝るだけとなった少女は、とりあえずパジャマに着替え……。いや、待て! だから、ぼくの目の前で平然と服を脱ぎ始めるなとっ! しかも、夜は下着までっ!!
……外の景色を眺めてるから、早く着替えなさい。
パジャマに着替えて歯磨きなども済ませた少女は、しばらくのんびりしていたが、やがてあくびをし始めた。では、そろそろ寝るか。
ぼくが布団に上がって寝転ぶと、少女もかなり眠かったのだろう。いそいそとやって来た。
そして、ぼくに向かって何かを言った。言葉はわからないけど、たぶん夜の挨拶だろうと推測する。
少女が布団に這い上がってぼくの横に寝転んだところで、彼女の体を覆うように、片側の翼を布団の上にぺたんと広げる。しばらく翼の下でもぞもぞ動いていた少女は、やがて静かになった。
はい、おやすみ。




