表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/117

(4-04) 修道院の午後

 えっと……、馬車が来るのは今日の午後のはずてす。そろそろ来てもいいころですよね。


 実は、今後は教会の馬車が、定期的に様子を見に来てくれることになっているのです。なにしろ、ここは正式な修道院ですし。

 ただ問題なのは、馬車が来ると聖竜王様が警戒されることです。聖竜王様に安心して暮らしていただけるように環境を整えるのが、私の大事な仕事のひとつです。そんな私が、かえって聖竜王様を警戒させてしまうのはまずいですよね。

 聖竜王様になるべく安心していただけるようにと、一応作戦は考えてあるのですが……。どれだけ効果があるかは、やってみないとわかりません。


 のんびり寝転んでおられた聖竜王様が、立ち上がって入り口へ向かわれました。散歩にでも行かれるのかと思ったのですが……。違うみたいですね。入り口で立ち止まって、外を覗いておられます。

 これは、明らかに馬車の音に気付いて警戒しておられる時の様子です。ということは、いよいよ来たみたいですね。


 私も聖竜王様の横へ行って外を覗くと、ちょうど広場に馬車が入って来るところでした。

 馬車は、広場に入った直後に停車。あまり洞窟に近付くと聖竜王様が警戒されるので、馬車は広場のもっとも洞窟から遠い位置で停まること。打ち合わせ通りです。


 私が馬車まで行ってドアをノックすると、教会の人が降りてきました。これも打ち合わせ通りです。

 知らない人間が勝手にうろうろすると聖竜王様が警戒されると思うので、私が来るまでは馬車から降りないことによって、すべてはきちんと私が許可し管理している出来事であることを示す演出……のつもりなのですが、どれだけ効果があるのかはわかりません。もし私が聖竜王様から信頼されてなかったら、何の意味もありませんよね。そんなことはない……と信じたいですけど。


「シスター・シーナ。何か問題はないか?」

「はい。今もところは大丈夫です」

 一通りの報告を済ませた後、せっかくなので最近のニュースや話題など、いろいろと話を聞かせてもらいました。

 王都では、要人の暗殺未遂があったとかなんとか。世間では、物騒なニュースもいろいろ起きているようですね。聖竜王様が一日中ごろごろ……いえ、のんびりしておられるだけの平和な洞窟とは、まるで別世界のような話です。


「さて、ではそろそろ帰ろうかな」

 あ、もうそんな時間ですか。町の話題が楽しくて、つい話し込んでしまいました。

「何か、足りないものはあるか?」

「えーっと、今のところは……。あ、もしできれば、小さめのブラシの予備がもう少し欲しいなと」

「ああ。次回に持って来よう」


 馬車が帰って行くのを見届けてから洞窟に戻ると……。聖竜王様は、まだ入り口におられました。でも、地面にお腹を付けてゆったりと座っておられます。これは、どう見ても臨戦態勢ではありませんよね。今までに比べれば、少しは警戒を緩めておられる……と考えていいのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ