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(4-02) 修道院の朝

 目を開けると……、少し明るいような。

 体を捻って横を見ると、布団と翼の隙間から光が漏れていました。朝のようですね。

 その時、周囲が一気に明るくなりました。聖竜王様が、さっきの動きで私が目を覚ましたことに気付いて翼を開かれたのです。


「聖竜王様、おはようごらいま……ふ」

 ふあぁ。うー、まだちょっと眠い……。いえ、そうも言ってられません。ちゃんと起きないと。


 見上げると、聖竜王様の大きな翼が、たたまれながらゆっくりと背中へ引き上げられていくところでした。毎朝、目が覚めて最初に見る光景がこれなんて、なんとも豪勢な暮らしですよね。


 さて、では今日もがんばりましょう。

 寝間着を脱いで、服に着替えます。洞窟に戻ってみたら、聖竜王様からいただいた服は、すべてそのまま残っていました。

 聖竜王様が行なわれたことの結果は、すべて教会が責任を持つ決まりになっているそうです。この服のお金もちゃんと教会が古着屋さんに支払い済みなので、このまま私が持っていてもかまわないとのことです。


 修道服はまだ着慣れなくていまいち落ち着かないので、院長権限で特別な儀式などの時以外は普通の服でよいという規則を作ってしまいました。

 ここは活動内容の関係で森の中を歩き回る機会も多いので、動きやすい服装で活動するのは理屈としても間違ってないと思います。……たぶん。

 いえ、そもそもこの服だって、聖竜王様から直接聖別を受けた、修道服以上に神聖な服なのです。何の問題もありません。……たぶん。


 さて、朝食までに洗濯を済ませてしまいましょう。

 洗うのは、さっき脱いだ寝間着と、昨日着た服と、それから昨夜聖竜王様のお体を拭いたタオルと……。量はそれほど多くありません。孤児院の洗濯当番に比べれば楽なものです。

 洞窟の中を川が流れているので、川まで行く必要もありません。ただ、この川は聖竜王様の飲み水でもあるので、水を汚さないように洗濯や洗い物は一番下流でしなければなりませんけど。

 洗い終わったら、洗濯物を入れたかごを持って洞窟の外へ。洗濯物を順番に通したロープを木の枝に引っかけて、洗濯は完了です。今日は天気がいいので、よく乾きそうですね。


 洞窟に戻ると、聖竜王様はすでに岩の前で待っておられました。

 お待たせしました。では朝食を。

 えっと、今日は甘いのが食べたい気分ですね。甘いのは確か、この岩が、こっちの岩か……。あ、そうですね。ではそれで。


 洞窟の隅に作らせていただいた院の備品置き場に、聖竜王様のお皿を取りに行きます。教会に頼んで、聖竜王様用のお皿として大きなタライを用意してもらいました。聖竜王様のお皿は、やはりこれくらいの大きさは必要ですからね。

 タライ……いえ、お皿を置くと、さっそく聖竜王様が食事を始められました。わりと好評のようで、これは成功ですね。

 では、私も。聖竜王様がお食事中のところを横からちょっと失礼して、私の分を皿に取らせていただきます。手ですくって食べるのに比べると、やはりこの方が食べやすいですね。


 ふう、ごちそうさまでした。

 食べ終わってひと息ついているうちに、皿に残っていた白いかたまりが勝手に消えてしまいました。ここの食事は、後片付けがとても楽です。

 それにしても、何なのでしょうね、この白いの。平然と食べておいてアレですが、そもそもこれが何なのか想像もつきません。明らかに何もないところから湧き出てくるし、しばらくすると跡形もなく消えてしまうし。どう考えても、尋常なものではありませんよね。

 ……何なのかはわかりませんけど、聖竜王様のすごい食べ物であることだけは間違いありません。私には、それだけわかっていれば十分です。

 空の食器類を川でサッと洗ってから備品置き場に戻せば、すべて完了です。


 聖竜王様が、洞窟から出て行かれます。たぶん、外の岩でのんびりされるのでしょう。

 さて私はどうしようかと見回すと、ふと立て掛けてある箒に目が止まりました。よし、今日はまず、床の掃除でもしましょうかね。

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