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【3-26】 おかえり

 少女がいなくなって、何日経っただろう。

 彼女の服は、今も洞窟の隅に積み上げたままになっている。処分する気にはなれなくて……。まあ、別に邪魔にはならないし。

 洞窟内を見回してみても、もう彼女はどこにもいない。少女が一人いなくなっただけなのに、洞窟がずいぶんと広く感じるなあ。


 彼女は、あれからどうなったのだろう?

 無事に病院にたどり着けただろうか? 体は、ちゃんと回復したのだろうか?

 ぼくが心配しても仕方ないけど。そもそも、彼女がここに来た目的は、ぼくに食べられること。それが果たせないとわかった以上、彼女がここに戻ってくる理由はもう何もないはず。二度と会うことはないかもしれないな。

 ずっと彼女を町へ返す方法を考えてたんだから、予定通りになっただけなんだけど……。町へ連れて行ったことを、後悔はしてないけど……。

 なんか、心が落ち着かないな。


 きれいにたたんで岩の上に積まれた服を眺めながらため息をついていたぼくは、突然飛び起きた。

 馬車が、来る!


 今度は何だ?

 人質がいなくなったので、さっそく攻撃か? 彼女は、ぼくが人質に取ってたわけじゃないぞ。頼んでもいないのに勝手に連れてきたのは人間側なんだからな。


 洞窟から覗いていると、広場に馬車が到着した。いつもの馬車なんだけど、今日は1台だけらしいな。

 1台だけでは、何人ものおじさんたちといつもの儀式の道具一式は、どう考えても積めないはず。

 ということは、いつもの儀式とは別の用事だということか?


 馬車が停まり、ドアが開く。降りてきたのは、ぼくもよく知っている顔だった。

 ……あ。あの少女、また戻ってきたのか。何のために?


 でも、とりあえず元気そうだ。病気は治ったみたいだな。よかった。

 それにしても、彼女の服……。

 あれ、アニメとかで時々見る、いわゆる修道服だよな。あの少女って、実はそういう立場の人物だったの!?


 馬車から飛び降りた少女は、そのまままっすぐ、小走りで洞窟の方へとやって来た。そして……。

 中から覗いていたぼくを見つけると、彼女は笑顔で何かを言った。言葉はわからないけど、それが『ただいま』という意味だということは、直感として理解できた。


 うん、おかえり。

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