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【3-23】 病気



 朝の散歩から戻って洞窟を覗いてみると……。少女は、まだ布団の上でぐったりしている。


 少女は、昨夜からなんとなく様子がおかしかったが……。

 今朝は、さらに酷くなったみたい。朝食もほとんど食べなかったし、すぐに布団に戻ってからずっと横になったまま。触れてみると、鱗ごしなのでいまいちはっきりしないけど、少し熱があるような気もする。


 こんな時、どうすればいい? どうするもなにも、薬も何もない洞窟では、どうしようもないよなあ。

 しばらく寝てれば治るだろうか? 何か、大きな病気だと困るな。やっぱり、町の病院に連れていくべきか?

 普段の彼女の行動から見て、どうも彼女は町に戻りたくないと考えているように見える。町に戻ると、何か困ることがあるのかもしれないけど……。

 まあ、いいか。緊急事態だ。何があるにしても、体を治すほうが大事だよな。よし、病院に連れて行こう。


 しっぽで少女の体を抱え上げて、背中に乗せる。

 人間を乗せて飛べるか? 人間の一人や二人、ドラゴンの体重に比べれば誤差みたいなものだろうから、飛ぶことそのものは大丈夫だと思うけど。でも、落としたらまずいよな。

 実は、今までにも彼女を乗せて飛んでみようと思ったことは何度かあったんだけど、落とすのが怖くて躊躇っていた。しかも、今の彼女には、しっかり背中につかまっていられるだけの体力があるかどうかもわからないし。

 とはいえ、考えている余裕はない。やってみるしかないか。

 少女よ。飛ぶからな。しっかりつかまってろ!


 洞窟を飛び立って、まっすぐ町へ。なんとか順調に飛行中。

 少女は、背中の刺につかまっていれば意外と大丈夫そう。ぼくの背中、自分で思ってたよりも安定してるみたい。


 町に近づくと、また鐘が盛大に鳴りだした。今回は予想してたので、あまり驚かずに済んだけど。

 何だろうな、これ。まあ、いいか。うるさいだけで危険はなさそうなので、無視して町の上空へ。

 このまま病院に直行したいところだけど、どれが病院の建物なのかわからない。ここは、町の人に頼んで救急車を呼んでもらうしかないか。いや、雰囲気的に救急車はないかもしれないけど。

 ぼくは、この町のことは何も知らないからな。少女は町の人たちに引き渡して、後は任せるほうが確実だろう。そのためにも、人がたくさんいそうなあの広場に行ってみよう。


 広場の上空に着いた。ここは、相変わらず大混乱だな。いや、混乱してるのはぼくが来た時だけか。

 避難完了までには、まだ少し時間がかかりそうだけど……。今回は急ぎの用事だから、あまり長くは待っていられないし。

 まだ広場の周辺部には逃げ切れてない人々が残ってるけど、中心部は既に無人だから大丈夫だろう。噴水のそばに、強行着陸した。


 少女を背中から降ろし、噴水を囲むように設置されているベンチのひとつに寝かせる。

 見回してみるが、誰も近付いて来ない。ぼくがいる間は無理か。

 でも、ぼくがいなくなれば、人々が戻ってきて少女を見つけるだろう。そうなれば、まさか病人を無視して放ってはおかないはず。救急車を呼ぶのか病院に連れていくのかはわからないけど、ちゃんと適切に対処してくれる……と思う。


 ここは、町の人々を信じるしかない。ぼくは少女を残して飛び立ち、町を後にした。

3章の締めに入りました。

3章は26話で終わりにします。

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