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【3-18】 布団

 しばらく儀式を眺めているうちに、ふと思い出した。

 そういえば、次に人間が来たときに少女を返そうと思ってたんだったな。でも、考えてみると必ずしもそれが彼女にとって良いこととは限らない気もするし。

 と思っているうちに、ちょうど少女も様子を見に来たらしい。どうするかは、彼女自身の判断に任せよう。


 見ていると、外を覗いた少女は、おじさんたちに救助を求めるどころか、慌てて岩影に隠れてしまった。あのおじさんたちは、彼女にとって味方ではないということか?

 まあ、それはそうか。あの人たちは、彼女をドラゴンに生贄として差し出そうとしたんだからな。彼女にとって敵か味方かで言えば、普通に考えれば敵だろう。

 そうなると、少女を町に返すにしても、あのおじさんたちに預ける以外の方法を考えたほうがいいのか。


 と言っているうちに、いよいよ儀式はクライマックス……だと思う。前回はこのあたりで少女が洞窟に入って来たんだけど、今回はどうなるのだろう?

 見ていると、間もなくおじさんたちは儀式の道具を片付け始めた。どうやら、これで儀式は終わりらしい。

 道具を片付け終わると、おじさんたちはさっさと馬車に乗り込んで帰っていってしまった。広場に布団の山を残して。


 馬車が十分に遠ざかったのを確かめてから、洞窟から出て布団に近づいてみる。

 近くから眺めてみても、鼻先で突っついてみても、やっぱり普通の布団にしか見えないな。

 これ、どういう意味なんだろ?


 すぐに、少女も洞窟から出て来た。どうするのかと見ていたら……。

 しばらくの間、彼女は布団をめくって確かめたり枚数を数えたりしているようだったが、やがて布団を数枚ずつ抱えて洞窟に運び込み始めた。


 彼女はこのあたりの人間なのだから、儀式でおじさんたちが言っていた言葉は、すべて理解できているはず。

 あるいは、もしこのあたりの人々にドラゴンに布団を捧げる風習のようなものが伝わっているのなら、彼女もそれを知っているはず。

 つまり、彼女はこの布団にどんな意味が込められているのかをすべて理解している……はず、だよな?

 そんな彼女が迷わず洞窟に運び込んだのだから、やっぱりこの布団は、ぼくへの捧げものということでいいんだろう。

 まあ、いいか。この布団にどんな意味があるのかはわからないけど、少なくとも少女の生贄よりはずっと平和的だしな。遠慮なくもらっておこう。


 その後、布団は少女がぼくの寝床に敷いてくれた。さっそく寝転んでみると……。あー、これは気持ちいい。

 もともと砂を敷き詰めて平らになっていたところに、さらに布団まで敷いたので、ぼくの寝床は遂に本物のベッドと変わらないくらいの寝心地にレベルアップ。少女の生贄と違って、今回の捧げものは、ぼくにとってもかなり満足できたかも。

 結局、この布団に何の意味があるのかは不明のままだけど……。まあ、何でもいいか。

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