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(3-15) 翼の下

 私、この洞窟に来てからずっと、夜は聖竜王様の翼の下で寝ています。夜になると、聖竜王様が翼を開いて誘ってくださるので、つい甘えてしまって……。

 い、いえ、違います。これは、聖竜王様の『ここで寝よ』とのご命令なのです。もちろん、私には逆らうことなんて許されないのです。


 実際、程よく温かくて、とても気持ち良く寝られるのです。

 難点は、大弓でも傷ひとつ付かないとの噂もある聖竜王様の鱗はさすがに少々固めで、フカフカのベッドとはいかないところでしょうか。それでも、凸凹の岩の上で寝るのに比べたら天と地ほどの差があります。だいたい、ベッドなのかテーブルなのかわからないとみんなで冗談を言い合うほど固い孤児院のベッドに慣れている私には、その程度はたいした問題ではありません。

 聖竜王様の翼の下で寝ることに、私は何の不満もありません。


 ……不満はないのですが、不安は大いにあります。本当に、これでいいのでしょうか?

 私は、自分では聖竜王様に仕える召使い的な立場のつもりなのですが……。毎晩抱いて寝るなんて、どう考えても召使いに対する扱いではないですよね。

 聖竜王様にとって、私はいったい何なのでしょう?


 毎晩抱いて寝るというと……、例えばペットとか?

 聖竜王様は、警戒もせずにのこのこと洞窟に入ってきて、そのままお側を離れようとしない私のことを、よく懐いているペット的な何かだと……?

 それならそれで、別にかまいません。私は、食料扱いすら覚悟でこの洞窟へ来た身です。今さらペット扱いされる程度で、何も文句なんてありません。

 むしろ、もしそうなら、聖竜王様に飼ってよかったと満足していただける立派なペットを目指して精一杯努力するのが私の役割です。

 でも、本当にそうなのでしようか?


 実は以前、鳥が雛をこんな感じに翼の下に入れているのを見たことがあるのです。雛を、つまり自分の子供を。

 何の力も武器も持たない危なっかしい姿で周囲を歩き回る私を見て母性本能を刺激された聖竜王様は、ここはひとつ自分の娘として育てようと……?


 正直に白状すると、幼いころは、いつか裕福な家に養子にもらわれて、なに不自由なく幸せに暮らす……なんて夢を見ていたこともあります。現実にはそんなことはあり得ないと気付いてからは考えるのを止めたのですが……。ここに来て、聖竜王様に養子に入ることになるなんて、いくら何でも斜め上の運命過ぎますよね。


 ま、本当のところがどうなのかはわかりませんけど。

 これから、私はどうしたらいいのでしょう? 森で何かやわらかいものを集めて来て、自分でベッドを作ることを考えるべきなのでしょうか?


 ふぁーあ。

 そろそろ、眠く……。あ、聖竜王様が、翼を開いて待っておられるので、今後のことは明日ゆっくり考えることにします。おやすみなさい。

 え、えっと。今夜もお願いします……。

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