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【3-14】 夜

 はい、お疲れさん。ふう、気持ち良かった。夜の体拭き終了。


 彼女は、何だかぼくの体を拭くことに妙な執念を燃やしているらしく、1日に1回は必ず体を拭いてくれる。それだけではない。もし汚れがついているのを見つけたら、何回でも拭かせろと要求してくる。

 ぼくの方も、拭いてもらうと気持ちいいので、断ったり抵抗したりする理由はない。彼女が濡らした布を見せながら近付いて来たら、自主的に床に伏せた最も拭きやすい姿勢をとって待機する。

 少女の方ももう慣れたらしく、ぼくの側へ近付くのにまったく躊躇しなくなった。


 背中の拭き残しは少女も気になっていたらしく、背伸びして少しでも上まで拭こうとしていた。そこである日、しっぽで彼女の体を押し上げて背中に上らせてみたところ、彼女は喜んで背中から翼の付け根あたりを含む全身を拭いてくれた。それ以来、毎回少女を背中に上らせて全身を拭いてもらうことになってる。


 布を洗って戻って来た少女は、しばらく岩に座ってのんびりしているようだったが、やがてあくびをし始めた。

 では、寝るか。

 いつもの寝床に寝転んで、少し翼を開く。少女よ、そろそろ寝よう。おいで。


 実は、彼女が初めてここに来た夜以来、毎晩翼の下に抱いて寝てる。

 最初の頃は、強制的にしっぽで抱え上げてぼくの体の上に寝かしていた。ところが、しばらくすると彼女もそれが普通なんだと思い始めた……のかどうかはわからないけど。とにかく、ぼくがいつもの場所に寝転ぶと、彼女の方から側へやって来て腕を少し広げ、抱え上げられ待機姿勢(?)をとるようになった。

 そして最近では、眠そうにし始めたころを見計らって寝転んで誘うと、脇腹によじ登る時に少ししっぽで支えて押し上げてやる以外は、ぼくは何もしなくても勝手に翼の下に潜り込んでくるまでになってしまった。


 最初は軽い気持ちでやってたんだけど、だんだん引っ込みがつかなくなったというか……。人間が直接岩の上で寝るのはさすがに辛いだろうから、他に寝られそうな場所がないのも事実だけど。

 正直なところ、こんなことをしてていいのだろうかという気持ちはある。ちょっとやり過ぎなのではという気がしなくもない。

 でも、ちょっと申し訳なさそうに、上目遣いにぼくの様子を伺いながらそっと近付いて来る彼女の顔がかわいくて、つい毎晩やってしまう。

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