表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/116

(3-13) 聖堂

 現在、聖竜王様の寝床を整えています。

 大きな聖竜王様が一晩寝られると砂がけっこう荒れてしまうので、すっかり日課になっている作業です。

 やっぱり、ベッドメイクはお世話の基本ですよね。


 さて、こんなものでしょうか。

 んー、と腰を伸ばしながら振り返った時、突然脳裏にあの時の光景が甦ってきました。この洞窟に来る直前に教会の大聖堂で受けた、私が人間でなくなった儀式の時の光景が。

 最初は理由がわかりませんでした。なぜ今ごろ? ここでの暮らしは刺激的なことが多過ぎて、正直なところ、もうほとんど忘れかけていたくらいですから。


「……あ!」

 でも、しばらく目の前の光景を眺めているうちに、私は思わず声を上げてしまいました。

 もう長い間ここで暮らしていて、どうして今まで気が付かなかったのでしょう? ずっと目の前にあったことなのに。


 聖竜王様はお出かけ中なので、ここから洞窟全体が見渡せます。

 私は今、洞窟の奥から入り口の方向を眺めているわけですが……。目の前に広がっている光景が、あの時の光景――祭壇の前での儀式を終えて振り返ったときの光景と、ぴたりと重なっているのです。


 入り口を入ると、大きな空間になっていて。その最も奥には、一段高くなった祭壇があって。

 もちろん自然の洞窟ですから、本物の大聖堂と違って壁や柱を飾る豪華な装飾も荘厳なステンドグラスが嵌め込まれた明り窓もありません。それでも、構造は聖堂とまったく同じですよね。床に椅子を並べて、司祭様がこのあたりに立たれれば、今すぐミサが始められそうです。

 この洞窟は、実は天然の聖堂だったのですね。


 しかもその奥、本物の聖堂なら神様が降り立つ祭壇があるあたりが、聖竜王様のお気に入りの寝床だなんて。偶然にしてはあまりにも出来過ぎと言うか……。

 いいえ、偶然ではないのかもしれません。聖竜王様のことですから、すべてを理解した上であえて祭壇を寝床としておられるのかもしれませんね。

 もしそうだとしたら……。聖竜王様は、やっぱり聖竜王様なのですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ