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【1-04】 森へ

 しばらく待ってみたが、人々が戻ってくる様子はない。

 どこかに隠れて、ぼくの様子を覗っているのかもしれないけど。


 結局、村でわかったことと言えば……。

 この世界では、どうやらドラゴンは特別な存在ではなく、普通の野生動物の一種――それも、非常に危険な猛獣――という扱いらしいということ。しかも、それは誤解だと訴えようにも、そもそも言葉が通じない。


 実を言うと、せっかく異世界に来たんだから、この世界でドラゴンとして活躍するのもアリかなという気持ちもあったんだけど。このままでは、活躍どころか本当に単なる野生動物の一頭として暮らしていくしかなくなってしまう。

 やっぱり、あの部屋に戻って人間として――少なくとも人間と話ができる種族としてやり直させてもらうしかない。けど、その方法を村の人たちに相談することもできない。完全に詰んでるな。


 うーん、本気でどうしよう?

 とりあえず、この村を離れるしかないか。

 いても意味がないし。村の人たちにとっても、いつまでもぼくがウロウロしていたら迷惑なだけだろうし。

 道は村を出ると、森の中へ入っていく。しっかり整備されているので、重要な街道かもしれない。

 この道を進めば別の村や町があるだろうとも考えたが、やっぱり考え直した。ぼくがドラゴンである限り、多分どこに行っても結果は変わらないだろうと思うから。

 ぼくは道をはずれ、思い切って森の中に踏み込んでみた。


 とはいっても。

 道を進むにしても森を進むにしても、特に目的地はないんだよな。

 この世界がどんな仕組みになっていて、どこに何があるのか、村で聞くことができなかったからな。この世界のことを何も知らないということは、自分がどこに向かって進むべきなのかがわからない。どっちに行ってもかまわないけど、どっちに行く理由もない。


 しばらく、あてもなく森の中を彷徨っているうちに、ぼくはふと気がついた。

 森の中って、思っていたよりも歩きやすいんだな。

 人間ならいちいち下りたり上がったりしないといけない地面のアップダウンも、ドラゴンの大きな体ならほとんど無視してまっすぐ進めるし。

 人間なら苦労してよじ登らなければならないくらいの高さの崖でも、ドラゴンの大きさならひょいと跳び上がるだけだし。

 斜面や滑りやすい場所も、4本の脚で体を支えるドラゴンなら安定して歩けるし。

 人間ならかき分けて進むか迂回するしかない茂みや灌木も、ドラゴンの巨体なら、特に何もせずに普通に歩いているだけで体にぶつかって次々と薙ぎ倒されていくし。

 巨体故に木と木の間隔が狭いところは通れないという問題はあるけど、それさえ気をつければ思った以上に自在に歩き回れる。


 何となく楽しくなってきて、つい意味もなく山の頂上に登ってみたりして。

 小さな山だけど、さすがに頂上まで来ると、それなりに眺めはいいな。頂上から景色を眺めているうちに、谷間に大きな滝を発見。よし、次はあの滝の側まで行ってみるか。

 いや、こんなところでハイキングを楽しんでいる場合ではない気もするけど。まあ、いいか。他にすることもないし。

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