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【3-06】 世話

 さて、彼女はどう出るか。

 しばらくの間、少女は洞窟の中を見回しながら何やら考え込んでいるみたいだったが、やがて床に置いてあった服を拾って着始めた。

 あ、やっと服を着る気になってくれたか。ということは、ぼくに食べられるのは諦めてくれた……のかな?


 ではどうするのかと見ていたら、少女は何やら服のあちこちを引っ張っている。何をしているのかと思っているうちに、かすかにブチブチと音かしているのに気が付いた。

 服は比較的シンプルなデザインで、装飾はあまり多くはない。それでも何ヵ所かには、体を覆う機能とは無関係な装飾用の布が付いている。どうやら彼女は、それらを引きちぎろうとしているらしい。

 町に帰るために、森の中を歩きやすくしているのか?


 すべての装飾を取り終わると、少女は洞窟内を流れる川のそばにしゃがみ込んで、むしり取った布を水に浸した。絞った布を持って、様子を伺いながら、床に寝そべっているぼくにゆっくりと近付いてくる。

 何をする気だろ……と眺めていると、少女は少し警戒しながらもぼくの顔のすぐ横までやって来た。そして、ぼくの口の周りに少し付いていたミルクを布で拭き始めた。口を拭き終わると、今度は体の方に移動して鱗を1枚づつ丁寧に拭き始める。


 これまで、その方面はあまり気にしていなかったけど、体がきれいになると、やっぱり気分がいいな。

 ……いや、これは単なる気分の問題ではないような。拭かれてると、なんか体がとても気持ち良いんだけど。

 何だろこれ? もしかして、ドラゴンの体って、鱗を刺激されるとマッサージ的な効果でもあったりする?


 ぼくが予想外の気持ち良さに体を委ねているうちに、かなり時間はかかったが、彼女は遂にしっぽの先まで拭き切った。

 はい、お疲れさん。あー、これは本気で気持ち良かった。くせになりそう。

 背中に少し拭き残しがあるけど、彼女の身長では手が届かないので、これは仕方ないな。


 彼女は再び川に行くと、ぼくを拭いた布を丁寧に洗った。洗い終わった布を絞って、岩の上に広げて干す。

 しばらく洞窟の中を見回して考え込んでいた彼女は、次は床に落ちている細かい岩の破片を拾い集めて洞窟の外へ捨て始めた。


 なるほど、食べられるのが無理なら、代わりに世話でもしようというわけか。これをドラゴンの召使いと呼ぶかドラゴンの飼育係と呼ぶかは、解釈が分かれるところかもしれないけど。

 まあ、そうだな。彼女だって、あんな大袈裟な儀式をしてまでこんなところに来たんだ。食べられなかったからって、そのまま何もせずに帰るわけにはいかないかもしれないし。

 それが彼女の希望なら、彼女の気が済むまでここにいてもらおうか。ぼくは、それでかまわないし。


 えっと、ところで少女よ。

 とりあえず一旦休憩して、そろそろ昼食にしよう。次は、どんな味が食べたい?

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