【2-15】 散歩
んー、いい天気だなあ。
草原にのんびり寝転んで、山々が連なる雄大な景色を眺めながら過ごすのは、なかなか気持ちいいな。
ただし、いつもの洞窟前の広場とは、少し景色が違う。ここは、洞窟から少し飛んだところにある、とある山の頂上付近に広がる草原。
毎日朝から夜まで洞窟でゴロゴロして過ごすたけでは、いくらドラゴンでもさすがに自堕落過ぎる気がするので、散歩を日課にしてみようと思いついた。
とりあえず、洞窟周辺の森の散策から始めてみた。
途中で出会った動物たちから挨拶を受けながら、森の中を適当に歩き回ってから戻ってくるコース。
手軽に行けるので、ちょっと動きたいときにふらっと出かけるには悪くない。ただ、どこまで行っても景色が変化しない森の中は、長時間歩くとさすがに飽きる。
そこで、もっとしっかり運動したい気分のときは、少し遠くまで飛んで行ってみることにした。
洞窟から山をいくつか越えたあたりまでの範囲で、森の上空を適当に飛び回ってみる。
地上を眺めながらあちこち飛んでいるうちに、山の頂上に広がる草原とか森の木々を割ってそびえる巨岩とか、なんかいい感じの場所をいくつか見つけた。
というわけで、洞窟を出てしばらく森の上空を飛び回り、その日の気分で選んだ草原や岩場に降りてしばらくのんびりしてから帰ってくるという、長めの散歩コースも確立した。昼前や夕方に出発して、昼食や夕食を森の中の岩で外食して帰るのも楽しい。
ふと気配を感じて顔を上げると、目の前に小さな動物が。あれは、狸……かな?
洞窟から離れた場所でも、ぼくがのんびりしていると、時々動物がやって来て挨拶していく。挨拶の出張所みたいだな。
このあたりの山を縄張りにしている動物は、山をいくつも超えてぼくの洞窟まで来るのは大変だろう。時々こうやって出張所を開設すれば便利なはず。
それに、常に見回っていれば、森に何か異常があればすぐに気づけるだろうし。
ぼくがそこまでしなければならない立場なのかどうかはわからないけど、動物から挨拶される森の管理人(?)としては、それくらいの役割は引き受けよう。




