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【1-03】 村で

 さて、村に近づいてきたんだけど。、

 小さな村にしては、妙に賑やかだな。偶然にも、今日は何かの祭りでもやってるんだろうか?

 いや、何か違うような。賑やかではあるんだけど、祭りのような活気があるという意味の賑やかさではなく、どちらかといえばマイナス方向の賑やかさというか……。村人たちが、大慌てて通りを走り回ったり怒鳴り合ったりしてるように見えるんだけど。何か、村でトラブルでも起きているんだろうか。それをドラゴンの力で解決するのが、この世界でのぼくの初仕事だったり?


「あ、あの、こんにちわ」

 誰も反応してくれない。

 騒いでるので、ぼくの声が聞こえていないのかな?

 それでは、もう少し大きな声で。

「こんにちわー」

 一瞬、その場にいた全員がぼくの方を見て固まった後、飛び退くようにして距離をとる。

「あの、大丈夫です。別に襲ったりしませんから」

 全員が建物の陰に飛び込んで隠れてしまい、ぼくの周囲には誰もいなくなった。

 これってもしかして、というかもしかしなくても、この騒ぎの原因はぼくなのか?


 それにしても、何もしないで話しかけてるだけなのに、なんでみんな、そんなに怖がるんだろう?

 改めて村人たちの騒ぎ声に耳を澄ませてみて、そこでぼくは初めて気がついた。人々が何を言っているのかわからない。聞き取れていないわけではない。はっきり聞こえてはいるんだけど、内容が理解できない。知らない外国の言葉を聞いてるみたいに。

 もしかして、ぼくはこの世界の人々の言葉を理解できない!?


 ということは、逆に人々にもぼくの言葉が理解できていない?

 まあ、普通に考えればそうなるよな。言葉が一方通行というのは、ちょっと考えにくい。

 つまり、この状況は、村人側の視点で言えば――

「突然村に侵入してきたドラゴンは、逃げ惑う我々を一瞥して咆哮を上げた」とか、そんな感じの場面なのか?


 あっと言う間に、通りには誰もいなくなってしまった。人々は、家に逃げ込んだらしい。もしかしたら、今ごろはさらに地下室にでも隠れているのかもしれない。村を囲む森に逃げ込もうと走っている人も、遠くに何人か見える。

 無人の通りを進んでみる。小さな村なので、あっという間に村を通り抜けて反対側に出た。もちろん、途中で誰にも会わなかった。


 どうしよう、この状況……。

 確かに、どう見てもこの村の公用語が日本語とは思えないけど。それでも、そのあたりは適当にごまかしてスルーするのが、こういう時のお約束じゃないのか? それとも、転生するにあたって、何かいろいろなすごい能力と引き換えに、言語能力のような基本的な能力が省略されてるとか?


 いや、でも、ドラゴンだからな。

 人間の言葉を操るのは、人間だけが扱える特殊スキルという解釈もできる。人間として転生する場合は黙ってても最初から現地の言葉が標準装備されるけど、人間以外に転生する場合は標準装備されないどころか、そもそも言葉を習得することができない――というような。

 考えてみれば、人間とはまったく違う姿をしたドラゴンが、喉や舌の構造だけが人間と同じなんてちょっとあり得ない。だとしたら、ドラゴンはどう頑張っても人間の言葉を正しく発音することなんてできない方が自然なわけだ。もしかしたら、聞いて理解するのは勉強すればできるようになるかもしれないけど……。


 振り返って、見た目は完全に無人となった村を眺める。


 どう考えても、言葉を教えてもらえそうな雰囲気じゃないな。

 どうしよう。やっぱり、あの部屋に戻って人間にしてもらうしかないか?

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