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【1-02】 村へ

 この体で、歩けるのか?

 立ち上がって、脚を動かしてみる。

 あ、人間が這い回るのと同じ要領で、普通に歩けるな。よく部屋でごろごろしてたから、這い回るのは得意だ。自慢にならないけど。

 でも、この歩き方では、あまり速度を出そうとすると脚がもつれそう。走る時はどうすればいいんだろう? 何か特別な脚の動かし方が必要なのか? こんなことになるなら、走ってる犬や猫をもっとしっかり観察しておくんだったな。


 とりあえず、移動できることはわかった。

 いつまでもここにいても仕方ないので、どこかへ行ってみようか。

 見回すと、丘の麓に何軒かの家が見える。小さな村があるらしい。

 建築関係は専門外だけど、少なくとも日本の家ではないな。具体的に国や地方までは特定できないけど、ヨーロッパ的な雰囲気の建物だというのはわかる。自動車は見当たらない。道を走っている車はもちろん、家の庭などに停めてある車も一台もない。車輪のついたものがいくつか見えるけど、あれは車ではなく馬車だろうな。

 どうやらこの世界は、まだ馬車とかが交通の中心だった時代のヨーロッパ的な場所といったところか。


 どうなるかはわからないけど、まずはあの村に行ってみよう。やはり、近くの村に行って情報を集めるのは、基本中の基本だからな。村人と話をしてみれば、何か事態が動くかもしれない。

 いきなり村にドラゴンが現れたら、村人たちを驚かせてしまうことになるかもしれないけど、それは仕方ないか。

 特に急ぐ必要もないし、そもそも走る方法がわからないので、ぼくは村の方に向かってのんびり歩き始めた。


 丘を半分ほど下ったところで、なにか聞こえるのに気がついた。耳を澄ませてみる。風の音……ではなさそうだな。たぶん、人間の話し声だろう。

 早速、最初の村人との遭遇か? 見回してみるが、周囲には誰もいない。おかしいな。丘の斜面はずっと草原で、人が隠れられるような場所なんてないと思うんだけどな。それとも、地面の下にトンネルでもあるのか?

 あ、見つけた! 声の聞こえる方向を探しているうちに、ずっと遠くのほうを二人の人が話しながら歩いていることに気がついた。二人の動きと声のトーンが合ってるから、たぶんあの人たちの声で間違いないと思う。

 ドラゴンって、耳が良いんだな。あんな遠くにいる人の声が聞こえるのか。さすがにまだ遠すぎるのか、話の内容までは聞き取れないけど。


 まずはあの二人に話しかけてみようと、二人の方へ歩いていく。

 やがて二人はぼくに気付き……。その瞬間、二人は文字通り飛び上がるほど驚いたらしい。そして、意味不明な叫び声を上げながら、一目散に村の方へ走って行ってしまった。


 あまりの反応に、ぼくは唖然として二人を見送ることしかできなかった。

 いきなりドラゴンが現れれば、人々が少し驚くかもしれないとは想像していたけど、さすがにここまで驚くとは思わなかった。いや、でも……。人間の立場から見れば、あのくらいの反応で普通……なのだろうか? ぼくには、人間としてドラゴンに出遭った経験がないからな。そのあたりの感覚が、いまいちわからない。


 どうやら、村人との話し合いは、思っていたよりも大変そうだ。村に着いても、しばらくは話どころではないかもしれない。どうやって説明したら、ぼくが危険なドラゴンではないと信じてもらえるんだろう?

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