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【1-21】 火力

 んー、今日は爽やかな天気で気持ちいいな。

 澄んだ青い空、流れる白い雲、鮮やかな緑の木々。そして、オレンジ色の炎!

 ……いや、こんなことをして遊ぶための能力じゃないことはわかってるんだけど、見た目も派手なので楽しくて、つい意味もなく炎を吹いてしまう。

 でも、まったく無意味というわけではないな。慣れるための練習としては、それなりには役に立ってる。遊んでるうちに、あまり意識しなくても、かなり自然に炎を出せるようになってきた。


 しかも、単に炎を出せるだけではなく、その炎を思い通りの形や大きさに調節できることもなんとなくわかってきた。

 炎の形や広がり具合は、吹くときの口の形で決まるらしい。例えば、「あ゛ー」なら円錐形に広範囲に広がる炎。「い゛ー」なら左右に扇形に広がる炎。「う゛ー」ならあまり広がらずに細く伸びる炎、という感じ。

 それから、炎の大きさは吐く息の量や勢いで調節できるらしい。そして、そうなると当然、最大だとどのくらいの炎が出せるのか試してみたくなるのが人情……いや、ドラゴン情というものなわけで。

 見回すと、ちょうどいい感じに1本の枯れ木が目に入った。距離は、ぼくの口から測って10メートルといったところか。全力で炎を吹けば、あの枯れ木まで届くかな?

 よし、ちょっと試してみよう。胸一杯に息を吸い込んでから、力いっぱい炎を吹き出し――

 次の瞬間、視界がオレンジ色一色に染まった。一瞬遅れて、ロケットの発射みたいな轟音が周囲に響き渡る。


 え?


 びっくりして思わず息を止めたので、一瞬で炎は消える。でも、そのときには既に、さっきの枯れ木は原型を留めない、煙を上げる炭の塊と化していた。その向こうに広がる森では、何本もの巨木が煙を上げて燻っている。


 えええ!?


 10メートルどころか、50メートル先の木が煙を上げてるんですけど。それも、枯れ木どころか生の立ち木が、一瞬炎を浴びただけで。


 ええええええ!!


 すごい。これが……、これが……、ドラゴンの全力……!

 いや、それはともかく、危なかった。もう少しで山火事になるところだった。ドラゴンが放火で逮捕されることはないと思うけど、でも、やっぱり、なんとなく、ねえ?


 とりあえず、ドラゴンの炎が思ってた以上に強力だということは理解した。強力過ぎて、もて余すなんていうレベルを通り越して、正直自分でもちょっと怖いというか制御し切る自信がないというか、そんな感じのアレで。


 何かと本気で戦うことなんて、今後もまずないだろうし。ちょっとした牽制程度なら、それほど強力な攻撃力は必要ないし。

 いや、たとえ本気で戦うとしても、いくらなんでもこれはちょっと強力過ぎるだろ。

 全開の炎は禁じ手ということにして、よほどのことがないかぎりは封印しておくほうが良さそうだ。

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