(8-06) 新人
ちょうど朝の仕事を終えてひと息ついていたところ、聖竜王様の羽音が。あれは、いつものルーザンの聖竜王様ですね。おはようございます。
羽音に気付いたのか、エラが洞窟から出てきました。
「あ、他の聖竜王様?」
「ルーザンの聖竜王様だよ。うちの聖竜王様と相性が良いみたいで、よく訪ねて来られるの」
「へえ、ルーザンから」
ちなみに、以前洞窟に来たベテランお世話係のおばあさんの見立てによると、うちの聖竜王様はおそらくオスだろうとのことです。ルーザンの聖竜王様はメスなので、もしかしたら将来的に期待できるかもしれません。
「シーナ、おはよー」
着地されたルーザンの聖竜王様から、ネルさんとフィマさんが降りて来ました。
「あれ? 見慣れない顔が……」
おお、気が付きましたか。いや、それはまあ、誰でも気が付きますよね。私のとなりに立っているんですから。
「今度来た、新しいお世話係」
「見習いシスターのエラです。よろしくお願いします、先輩方」
はい、元気な自己紹介、ありがとうございました。
ところで、ネルさんに相談したいことがあったのでした。
「エラも、連絡会に入れたいのだけど」
「あー、それは……。今は無理」
ネルさんが、ちょっと申し訳なさそうな顔をします。
「見習いの段階では、入会できないことになってるんだ。入会は、正式にここに配属されてからな」
あ、そんな決まりがあるのですか。そういうことなら仕方ないですね。
しばらく四人で話していると、ルーザンの聖竜王様のお声が。ああ、お帰りですか。
「じゃあ、シーナ。雨が降らなければ、また明日な」
「エラも、がんばって」
飛び立たれるルーザンの聖竜王様を、今日は二人で見送ります。
飛び去られるルーザンの聖竜王様を見送りながら、エラが呟きます。
「そうか。他の聖竜王様が来ることもあるんだ」
「そうだよ。いつも来られる聖竜王様が何頭か。いつもじゃないけど、たまに来られる聖竜王様も入れれば、もっとたくさん」
「聖竜王様にも、近所付き合いみたいなのがあるのかな?」
ええ、そうです。いろいろあるそうです。
「で、中にはああやってお世話係を連れて来られることもあるから、その相手も私たちの仕事」
「うん」
エラは頷きながら、洞窟に戻っていかれるうちの聖竜王様に目を向けます。
「ところで、うちの聖竜王様は、あんなふうにお出かけは?」
「たまに」
「その時は、私も連れて行ってもらえるのかな?」
そうですね。そのうち、そんなこともあるかもしれません。




