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(8-02) 二人目

「この一週間、何か変わったことは?」

「特に何も。毎日、聖竜王様がごろごろ……いえ、のんびりしておられるだけです。時々、散歩に出かけられたり、他の聖竜王様が訪ねて来られたりするくらいで」

「そうか。ここは平和だなあ」

 一週間分の日誌を受け取りながら、教会の人が笑います。


 今日も、いつも通りの簡単な報告だけですぐに終わり……と思ったのですが。

「ところで、実は昨日、二人目の候補者が決定したのだが……」

 あ、やっと決まったんですか!

 実はかなり前から、お世話係をもう一人増やそうという話が出ていたのです。候補者を選ぶのに手間取っているとかなんとかで、なかなか話が進まなかったのですが、やっと進んだようです。

「修道院側さえ良ければ、いつでも連れて来られるが。どうかな?」

 私はいつでもいいですけと……。ちょっと待っててください。聖竜王様にも聞いてみます。

 大岩の上で寝そべっておられる聖竜王様のところへ。お寛ぎ中に申し訳ありません。えっと……。

「洞窟」「人間」「1」「増える」「許可」「?」

 ええ、そうです。私みたいなのがもう一人……。あ、かまいませんか? ありがとうございます。


「はい、いつでも大丈夫です」

 教会の人が頷きます。

「では、すぐに準備して、数日中にも奉納の儀式を執り行うとしよう。それにしても……」

 教会の人が、大岩の上であくびをしておられる聖竜王様と私を交互に眺めます。

「シスター・シーナは、本当に聖竜王と話ができるんだな」

 はい、それは自信を持って断言できます。

「頼もしいな。もう一人もそうなるように、しっかり教えてやってくれ」

 ええ、そうですね。一緒に勉強しましょう。


 新しい人は私よりひとつ下で、私と同じく孤児院育ちだそうです。話が合いそうですね。

 私がいた孤児院とは町のほぼ反対側にある孤児院にいたそうなので、多分まだ会ったことはないと思いますけど。


「その人は、もう正式なシスターなんですか?」

「いや、まだだ。彼女を正式なシスターと認めるには、聖竜王に認められたと証明しなければならないからな」

 ああ、そうでした。今まで孤児院にいたのでしたね。見習い期間なしで正式なシスターと認められるには、一度聖竜王様の洞窟に入ってから生きて出てくるという試練を受けなければならない決まりでした。

 ……間近で見る聖竜王様のお姿に心臓発作でも起こさない限りは、生きて出られない人がいるとは思えませんけど。まあ、建前は大事ですよね。


 というわけで、正式な配属の前に、まずは試練を受けるためにここへ来るそうです。しばらく洞窟で暮らしてから一旦町に戻り、正式なシスターとして改めてこの修道院に配属ということになります。

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