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(7-06) 言葉

「おはようございます」

 朝なので、これでいいはずですよね。

 もっと早く、こうするべきでした。私は、聖竜王修道院の院長なのです。訪ねて来られる聖竜王様をお迎えするのは、大事な仕事のひとつです。


 今日はルーザンの聖竜王様だけではなくヴィルの聖竜王様も来ておられるので、人間側も5人集まって賑やかです。

「シーナの挨拶、確実に理解されてるね」

 聖竜王様が私の言葉について話しておられるのを聞いて、ネルさんが笑います。実は先日、聖竜王様から、私の言葉はすべての聖竜王様が確実に聞き取れると保証していただけました。


 ところで、今日はみなさん、いまいち元気がないですね。朝早いからですか?

 みなさん、顔を見合わせて苦笑し合います。

「それもあるけど、お腹すいた」

 え、もしかして朝食まだなんですか? 実は、私もまだですけど。わいわい言い合っておられる三頭の聖竜王様を眺めながら、セラさんが苦笑します。

「実は、ここでみんなで食べようって話だったんですけど……」

 あ、そういうことですか。

「聖竜王様、たぶん忘れてるよ」

 頬を膨らませたララさんの言葉に、全員吹き出しました。でも確かに、まだしばらく朝食はお預けのようです。


 そこで、ふと思いつきました。

「こんな時、私たちの方から朝食を食べたいと頼むのって、失礼でしょうか?」

 あれ? なんで、みなさん固まってるんですか?

「いや、失礼かどうか以前に、私たちの方から聖竜王様に意思を伝えるなんて、普通はできないから」

 ああ、そうでしたね。普通は。

「でも考えてみれば、聖竜王様の言葉を話せるシーナさんなら、やろうと思えばできるんですよね」

 というか……。思い出してみれば、私、既に普段から聖竜王様にいろいろ頼んでるような……。


 早く食事にしたいと頼むくらいなら、聖竜王様が機嫌を悪くされることはない……はずです。思いきって、頼んでみましょうか?

 あの、聖竜王様、すいません……。

「人間」「すべて」「空腹」

 はい、みんな、朝食はまだみたいで。えっと。

「マナ」「食べる」「求める」

 あ、すぐに朝食にしてもらえそうな雰囲気です。


 それでは、さっそく朝食の準備を……。あれ?

 どうも、聖竜王様たちにまた新しい話題を提供してしまっただけみたいです。

「これは、まだしばらくは無理みたいだな」

 そうみたいですね。お話が一段落するまで、おとなしく待つしかなさそうです。


「でも、この調子なら、シーナさんはもうすぐ『聖竜王様の耳』はいらなくなりそうですね」

 フィマさんの言葉に、全員の目が私に集まりました。

「いえ、そこまではまだ……」

 今は簡単な単語を覚えている段階なのて、まだ聖竜王様の耳がなければまともにお話を聞き取るのは無理です。最終目標としては、聖竜王様と自由にお話できたらすばらしいとは思ってますけど。

 いえ、みなさんにそんな尊敬の目で見られても、ちょっと恥ずかしいんですけど。


 結局、その後みんなで朝食を食べることになりました。ひさしぶりに、とても賑やかな朝食でした。

 朝食後、ルーザンの聖竜王様とヴィルの聖竜王様は揃ってお出かけです。そういえば、一緒にどこかへ行かれる途中だとか。

 では、私もお見送りを。え? 帰りに、夕食もここでですか!? わっ、わかりました。準備しておきます。

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