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異世界文化倶楽部  作者: 海布賀麻布朗
第1章
2/7

その1

 うっすらと霧が残っている中で最初に起き上がったのは戌井だった。身体の各所を動かしながら、大きな怪我は無く若干の擦り傷のみである事を確認する。

 そして周囲を見まわす。みんなバラバラに倒れているが、特に大きな怪我をしている者もいないようだ。そして珠恵を見て驚く。

 (これは・・・大した強心臓だな。)

 珠恵は昼食時に使うであったろうレジャーシートを敷き、その上にリュックを枕にして両腕を腹の上に乗せて寝ていた。

 謎の霧が出てくる前にレジャーシートなどを出して休憩していた者はいなかったはずだ。

 (ひとり先に気がついて、支度をして寝直したのか。)

 戌井は思わずくすりと笑う。

 すると、寝ていると思っていた珠恵がパチリと目を開ける。

 「おはよ〜。」

 目と目があって珠恵が呑気な挨拶をしてきた。

 「お、おはよう・・・。」

 眠っていると思っていた相手に声を掛けられて戸惑いながら返事をする。

 「戌井くん、いま何時?」

 珠恵は伸びをしながら辺りを見廻し、皆がまだ気が付いていないのを確認したのか小声で訊く。

 「3時・・・15時半だね。」

 戌井は腕時計を見て珠恵に合わせるように小声で答える。

 「そっか、2時間近くも寝てたのか〜。」

 「蓮見さんだっけ?そんなに早くに気がついたの?」

 珠恵の名前がうろ覚えだったので確認しながら尋ねる。

 「うん、1時くらいに目が覚めたんだけど、誰も起きないし退屈だったんでお弁当食べて寝ちゃった〜。」

 「えっ!?弁当も?」

 驚いて訊き返す。

 「うん、だってお昼の時間過ぎちゃってたし〜。」

 その言葉に戌井は思わず笑い出す。

 「ははは、すごいな。」

 「ん?」

 珠恵は何を言われてるのか解らず首をかしげる。

 「いや、なんでもない。それよりどうしようか。」

 戌井が再度見まわしながら言う。

 「みんなを起こすか。」

 「そうだね〜。」

 珠恵はそう言い近くに居た者の肩を掴んで軽く揺さぶる。

 戌井もそれに倣って珠恵とは反対側に居る者を起こしてまわる。


  * * * * * * * * * 


 「さて、どうしようか。」

 戌井と珠恵に起こされて全員が揃ったところで学が言う。

 「幸いな事に大きな怪我をした人もいないみたいだし。」

 学は戌井に最初に起こされたのだが、起こしてまわる時に各人に怪我や不調などが無いか確認するように言ったのである。どうやら、みんな擦り傷やちょっとした打ち身程度である。

 「さっきのは・・・地震だったのかな?」

 そんな声が上がる

 「いきなりすごい衝撃が来たけど、地震であんな揺れ方するのか?」

 「それよりもあの霧みたいのは?いきなり出てきてすぐに目の前も見えなくなるなんて、不自然じゃなかった?」

 不思議な・・・と言っていいような事が起きた後なので、緊張なのか不安なのか若干大きな声になっているようだ。

 そんな中、ボソっとした声が逆に際立って聞こえた。

 「電波が来てないんだ。」

 一同が声の主を見ると小白だった。注目されても気にしていない様子で続けて言う。

 「起こされてすぐに地震速報を確認しようとしたんだけど、その時から今まで全然電波が入らないんだ。全キャリアとも。」

 「おいおい、全キャリア持ってるのかよ。」

 上野が茶化す様に言うが、注意すべき点はそこでは無い。小白はそれをスルーしてさらに言葉を続ける。

 「それに、GPS衛星がひとつも見つからないんだ。」

 みんな自分の持っている携帯端末を確認する。

 「俺のもアンテナ立ってないぞ。」

 「来てないな。」

 光輝がスマフォを見ながら言う。

 「確かにGPS衛星も見つからないな。」

 天文の好きな光輝は星図表示アプリやGPSの受信状況を確認出来るアプリもインストールしていた。

 学も自分のスマフォを見ながら言う。

 「あの揺れの直前に学年主任に連絡を入れようとした時は、確かにアンテナが立ってたんだ。」

 雨宿りがてらにひと息付くつもりだったので、駅に到着するのが遅れるという一報を入れようとしていたのだ。

 「しかし、電話が繋がらないのはともかくとしてGPSはなぁ。ここは木の枝に覆われてはいないし、空だってそんなに厚い雲が出ている訳でもない。」

 光輝は不思議そうに空を見上げて言う。

 一同は黙り込んでしまった。まだ2〜3人ほど携帯端末を持った腕を伸ばして位置や向きを変えながら電波が拾えないか試している。

 今まで発言していなかった珠恵がひとつ手を叩いてから言う。

 「それよりも。」

 一同が注目する中

 「せっかく天気も良くなって来たんだし、ご飯にしようよ〜。」

 と言い出す。

 天気が良くなったと言ってもまだ薄っすらと雲の出ている状態で、晴れ間も見えない。ただ、雨が再度降ってくるような気配も無さそうだ。

 「う〜ん。」

 学が唸りながら光輝を見ると頷いている。

 「よし、駅まではまだあるだろうし、ここでちょっと腹ごしらえしようか。昼メシの時間もだいぶ過ぎているしね。」

 「さんせい〜。」

 特に反応が無いようだが珠恵ひとりが賛同する。

 その声に押し流された様に一同は準備を始める。と言っても、レジャーシートを敷いたりアウトドア用の簡易椅子を用意するだけではあるが。

 「蓮見さん、弁当はさっき食べちゃったんでしょ?」

 珠恵が座っているところに戌井が声を掛けながら近づく。

 「うん、でもまだおやつがあるし〜」

 と言ってリュックからスナックの袋を出して見せる。

 「まぁ、これ食べてよ。」

 そう言いながら戌井はアルミホイルに包まれたおにぎりらしき物を渡す。

 「梅干しだけど、大丈夫?」

 「大丈夫だよ〜、あたし好き嫌い無いんだ〜。」

 問われて珠恵が答える。

 「ありがとう、頂くね。」

 と言うやいなや包みを開けておにぎりをパクつく。

 すると、他の者も戸惑いながらも同じ様にサンドイッチだの唐揚げだのと渡しに行く。

 学がシウマイを2つほど渡しに行って戻ると、近くに座っていた光輝が声をひそめて話しかけてくる。

 「陽射しが出て来ているんだが、気付いたか?[科学]。」

 学は何を言われてるのか解らず

 「晴れてきたか。帰りはだいぶ楽になりそうだな。」

 と答える。すると別の場所で声が上がる。

 「おいっ!太陽がおかしいぞ!」

 その声に一同が太陽を見上げる。

 「なんか大きくないか?」

 別の誰かが言う。

 「赤すぎる?」

 光輝が何かを持って太陽に向け腕を伸ばす。

 「視直径で3倍くらいか・・・」

 光輝が続ける。

 「太陽がほぼ真上に見えるんだが、今何時だ?」

 そう言われて、大体の時間は解っていたが改めてスマフォで時間を確認する。

 「16時15分だな・・・えっ?」

 やっと学もおかしな点に気付いた。16時を過ぎていれば既に夕方と言ってもおかしくない時間だ。当然、陽は傾いている。それなのにこの木々に囲まれた広場の上から陽が射している。

 「影を見てくれ。」

 そう言って光輝がペットボトルをレジャーシートの真ん中の何も無い所に置く。陽が当たってるにも関わらず影は無い。いや、長さが無いのであって真下に影が出来ているのだ。

 「この辺りでは夏至の日であっても太陽が真上に来る事は無い。ましてや、まだ4月の半ばだ。」

 学のなんとなく覚えていた知識では、夏至の日には北回帰線の位置で太陽が真上に来るという事くらいだ。北回帰線は沖縄本島よりも南のはずだ。なにより、夏至にはまだ2ヶ月ほどもある。

 「・・・いったい、どういう事なんだ?」

 学が言葉に詰まりながら光輝に訪ねた時に、雲がもう少し晴れて空が見える。すると、太陽から少し離れた位置にいびつな形の黒い影が浮かんでいる。見た目の大きさは大きな太陽よりもさらに大きい。

 「あれは・・・この星の衛星、いわゆる月だろうか。」

 光輝が一同に聞こえるように、少し大きな声で言った。

 「月だって?」

 「それよりも『この星』ってどういう事?」

 光輝の言葉を聞いて何人かが声を上げる。

 「夕方のはずなのになのに真上にあり普通よりも赤くて大きな太陽。さらに大きくて丸くない月。恐らくここは俺たちの知っている地球では無いだろう。」

 光輝の説明に静まり返る。

 「そんな馬鹿な。SF小説の読みすぎじゃないのか?」

 上野が引きつった笑いを浮かべながら言う。

 「今見えている物を説明して貰えるのなら、SF小説を読みすぎの馬鹿の戯言だと思ってくれていい。」

 光輝は冷静に答える。

 再び誰も言葉を発しなくなったが、貰ったものをひたすら食べ続けていた珠恵が言う。

 「なにか来るみたいだよ〜、団体さん。」

 一同が緊張した面持ちで珠恵を見る。学が問いかけた。

 「なにか?」

 「うん、なんか動物っぽいかな〜。馬とか牛とかが走ってる感じ?」

 (馬ならば人が乗っているよな。まさかこんなところに野生馬がいるわけ無いだろうし。)

 学はそう思ったが、先ほどの光輝の言った事も忘れてはいない。

 (もし、日本のどこかで無いとしたらどうなるか解らないな。注意しておくに越したことはないだろう。)

 そう考えてみんなに指示する。

 「あそこの広場に入って来れる場所、あそことは反対側に移動しよう。」

 と、2メートルほどの幅の木々の生えていない場所を指差す。その先は道とも言えない様なところだったはずだ。学は指を差しながら訝しむ。

 (あんな道みたいになってたっけ?)

 そう思いながらもみんなが移動するのにあわせて自分も移動する。そして、集団の中では一番入口に近い側、広場の中央に近い位置に立って様子を伺う。光輝もその隣に立つ。

 やがて、テレビなどで聞いた事のある足音が一同にもはっきりと聞こえてくる。

 「これは、馬だろうな。」

 光輝がそうつぶやくと、学は光輝を見てうなずく。

 そして、馬に乗った一団が徐々にスピードを落としながら進んでくるのが見えてきた。

 向こうからもこちらが見えたのだろう、先頭を走っていた馬に乗った人物が手を上げて合図する。やがて、広場に入る直前の位置で停止する。中のひとりが指示を出している様な言葉を掛けると、1騎が来た道を走って戻っていく。

 (どこの国の言葉だ?)

 聞いたこともない言葉を耳にして学が考えていると、指示を出したひとりが馬から降りた。合わせてもうひとりも馬から降りる。見ると甲冑という程では無いが、軽装の鎧を身に着けている。

 先に馬から降りたひとりが腰に手をまわして何かしていたが、すぐに腰から外れた長い物をもうひとりに渡す。

 「あれは・・・剣か?」

 「長剣だね、いわゆるロングソード。」

 「片手剣じゃないのかな?」

 「いや、短剣と比べての長剣って事だから片手剣も長剣だよ。」

 「刀身が細そうだからレイピアに近い感じかな?」

 と、恐らくRPG好きな何人かが話しだした。

 (こんな時でも興味が優先するんだな。)

 学はそれを聞いていて若干気が楽になり、改めてその者を見る。

 兜も脱いでそれも渡すと、こちらに向き直り両手を広げて水平より若干上に上げる。

 (武装を解いたと示しているのか?)

 「武装解除した。」

 「いや、武装解除っていうのは有利な側が強制的に行う事だよ。」

 後ろではまだそんなやり取りをしている。

 兜を脱いでこちらを向いたのは若い男だった。若いと言ってもここにいる高校生よりはだいぶうえ、30歳前後だろうか。短い髪は薄いブラウンの様に見える。そして顔立ちは西洋人っぽくも見える。

 男は両手を広げたままゆっくりと数歩歩いたところで止まる。先頭にいる学と剣や兜を渡した相手との中間くらいのところだろうか。

 少し間を置いてから一同の方を見ながらゆっくりと言葉を発した。

 『§& +△□ ○▽+#○▽+& #□* § ※#』

 一同は顔を見合わせる。そしてローゼンバーグの方を見る。日英独の三ヶ国語が話せるといういのはみんな知っているのだろう。

 「ちんぷんかんぷん。お手上げだね。」

 と、日本語で返しながら西洋人ならではの両手のひらを上に向けて肩をすくめるジェスチャーをする。

 男はもう一度ゆっくりと同じ言葉を繰り返したらしいが、誰も解らないので反応のしようもない。先ほどのローゼンバーグのポーズも他の文化圏では失礼にあたるポーズだと拙いので

 (これならば大丈夫だろう。)

 と思いながら学は黙って首を左右に振った。

 それを見て取ると、男は何か考えている様な表情をしてから両手を前に突き出して『止まれ』というようなジェスチャーをした。そしてその両手を下に数回下げて『座れ』というようなジェスチャーをする。そしてそのままゆっくり後ろに数歩下がってから馬の方へと向き直って歩いて行った。

 「ここで待機してろって?」

 「多分、そういう意味じゃないかな。」

 後ろでまたそんな会話が聞こえる。学が光輝の方を見るとうなずいていた。

 学は後ろを振り返り、一同に向かって言う。

 「とりあえず敵意があるようにも見えないし、今すぐこちらをどうこうしようって事でも無さそうだから、少し待機していよう。ただ、敷物なんかは敷かないですぐ移動出来るように。」

 各々緊張した面持ちで指示通りに行動する。学は再び馬でやってきた一団の方を注視する。

 先ほどの男は兜と剣を受け取って装備し直しながら馬上のままでいた者に声を掛けたようだ。すると声を掛けられた二人が馬から降りる。そして、最初に馬から降りた男と並んで馬の横に立って待機している。

 「軍隊かな?」

 学は男たちから目をそらさずに話しかける。

 「たぶんね。こちらに話しかけてきた男が隊長って感じだな。他には3人、ひとりが来た道を戻って行ったから5人で小隊ってとこか。」

 光輝は男たちの方だけでは無く周囲の様子も見ながら答える。

 「ひとり戻っていったのは別の隊への連絡だろうね。」

 「そんなとこかな。」

 やがて15分も経った頃であろうか、先ほどのものよりも明らかに多いと思われる馬の走る音が聞こえてきた。

 雑談をしていた一同に再び緊張感が走る。しかし、再び広場にまでは入って来ずに道の途中で止まった様だ。

 先着していた隊の者たちが敬礼の様な仕草をする。先ほどの隊長らしき男がなにやら説明をしている様だったが、終わったらしく直立する。

 奥からひと際大きな人物が出てきた。遠目に見ても隊長らしき男よりも頭ひとつ大きい。

 隊長らしき男は広場の入り口でさっきと同じ様に武器をそばの者に預けた。大きな男は武器を高く掲げて一度こちらに見せるようにしてから別の者に渡す。

 二人とも兜も脱いで、やはり同じ様にそばに控えている者に渡すと、何やら大きな本の様な物を受け取った。そして、こちらから見て左手に大きな男、右手に先ほどの小隊の隊長、と並んでこちらに歩いてくる。

 その二人の真ん中、数歩下がった辺りに小さな姿が見える。ローブの様な物をまとった女性らしい。そして両脇の二人が跪くと、すいっと前に出て先程の男と同じ様に一同に呼びかける。

 『§& +△□ ○▽+#○▽+& #□* § ※#』

 そして、こちらを見まわして反応が無いのを確認すると、さらに呼びかけてくる。

 『#○□+ &§ @&$#%@ ∞+ $# ∞□#△』

 (さっきの言葉と似てるけど、どこか違う。)

 学はそんな風に思った。わざわざローゼンベルクに確認するまでもないだろう。

 ローブの女性は5回ほど呼びかけてきたが、全て解らなかった。5回とも似た感じのまったく聞いたことも無い様な言葉だった。

 全てに反応が無いのを見て取ると、女性は小声で何かを囁いた。

 すると、大きな男の方が跪いたままで抱えていた本の様な物を女性の方に向けて開く。

 女性は本に指を当てながら、書いてある文字を拾っていくようにたどたどしい口調で読み上げた。

 「I〜〜 p〜〜 q〜〜 d〜〜?」

 それを聞くなり何人かが反応する。

 「なんか響き的にヨーロッパ圏の言葉っぽくないか?」

 「やー、ひょっとしたらラテン語かも知れない・・・だけど、流暢に話されたとしてもラテン語じゃぁ解らないな。」

 光輝が言うとローゼンベルクがそれに対して答えた。

 女性は反応があったのを見てページをめくって更に呼びかけてくる。

 「Μ〜〜 ν〜〜 κ〜〜 τ〜〜 λ〜〜;」

 「ギリシャ語っぽいけど、これも解らない。」

 「В〜〜 п〜〜, ч〜〜 я〜〜?」

 「ロシア語かな?これも無理。」

 女性がページをめくって呼びかけるのに対し、ローゼンベルクがその都度コメントする。

 「あれに各国の言葉でも書いてあるのかな?」

 「そんな感じがするな。俺たちがローマ字で書いてある他の国の言葉を読むようなたどたどしさだけど。」

 学と光輝がそんな話をしていると

 『Kannst du verstehen, was ich sage?』

 と女性が呼びかけるのに対し、ローゼンベルクが立ち上がって答える。

 「Ja, ich verstehe!」

 どうやらドイツ語だったらしい。

 その反応を見て、女性はページをめくらずに指の位置を動かして更に呼びかけてくる。

 『Wir sind gekommen, um dich zu retten.』

 『Bitte begleiten Sie uns, wir werden im Detail erklären.』

 続けざまに呼びかけられて、ローゼンベルクはみんなの方を見る。

 「おい、なんて言ってたんだ?」

 上野が問いかけるのに対してうなずいてから、一旦ローブの女性に向かって手のひらを向けて止める様な仕草をしてから手を合わせて頭を下げる。

 (通じるのかな?)

 などと学は考えていたが、ローゼンベルクがみんなに向かって話し出した。

 「最初のは、自分の言ってる事が理解出来るか?って事だったよ。」

 「それで返事をしたって事か。」

 学がそう言うと、それに答えて

 「そう、あの本みたいなのを読みながらこちらの反応見てたでしょ?だから答えなきゃって思って。」

 と、ローゼンベルクが言う。

 「で、そのあとはなんて言ってたんだ?」

 今度は光輝が尋ねる。

 「やー、そこが大事。自分たちは僕たちを助けに来た、と。そして、詳しい説明をするので同行して欲しい、って言ってた。」

 その言葉に一同は静まり返る。

 さきほどの太陽を見てからの混乱とそれに続いての見知らぬ集団に聞き慣れない言葉。そんな中で発せられた言葉を信じていいものか?恐らく、みんなそんな事を考えているのだろう。

 「信用出来るのか?」

 と上野。

 「もし何か危害を加えるつもりだったら、最初にいた人数だけでも出来ただろうな。人数はこちらが多いとは言え、向こうは武装もしているし馬もある。」

 と光輝は言ったが

 「だからと言って信用出来るかは解らないがな。無傷で捕らえたいのかも知れないし。」

 と続ける。

 「[ルド]が解ったっていうのはドイツ語でしょ?その前のも知ってる言葉?」

 と、南がローゼンベルクに尋ねる。仲間内では[ルド]と呼ばれているらしい。

 「うん、はっきりとは言えないけど、ラテン語、ギリシャ語、ロシア語だったんじゃないかと思う。」

 ローゼンベルクはそう答える。

 「最初のいくつかは空で言ってたけど、途中からはあの本に書いてある通りに読んだって事でしょ?それって言葉は知らないけど誰かに教わったって事なんじゃないかな?」

 南がそう言うと、光輝が納得したように言う。

 「なるほど、俺たちみたいなのがいる事が解ってて、準備して捜索していたってところか。」

 それを聞いて学が

 「それなら、他にも俺たちみたいなのもいるかも知れないな。」

 と言うと、上野が冗談交じりにいう。

 「捕虜とか奴隷にされているかも知れないぞ。」

 冗談とは解っていてもそれなりに不安もあるので、みな押し黙ってしまう。

 「しかし、俺たちが元居た場所で無さそうな事は確かだし、仮に日本、日本以外のどこかであっても誰にも頼らずにって事は無理だろう。あんな不可解な事があった後だけにな。」

 光輝がそう言うとみんな黙ってうなずいた。

 学がまとめる。

 「よし、彼らについていく事にしよう。」


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