世界観設定(講習会)
「イシハラさん、寝ないでくださいね? これからアマクダリさんがこの世界…『オルス』について教えてくださるんですから」
「Zzzz頑張れよzzzz」
「もう寝てます!? 起きてください! イシハラさんも一緒に頑張るんです!」
「いや、冷静に考えると俺達は冒険者じゃあるまいし『オルス』の講習なんていらないだろう。国を出るわけじゃないし」
「わからないじゃないですか、警備のお仕事でよその国へ行く事もあるかもしれませんよ?」
「そんな仕事は断る、俺は余生をこの国の中だけで完結させるつもりだ。故に世界観の説明なぞ必要ない、おやすみzzzz」
「だめですよぉ! 私、お休みの日に……あ……あなたと一緒に……旅行とか……してみたいんですから! 起きてください~!」
ガチャッ
「お待たせしましたね、では……早速で申し訳ないのですがこの世界『オルス』についての講習を始めさせて頂きますね」
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~世界『オルス』について~
・総人口は40億ほど、前魔王が到来して以来大幅な減少傾向にある。
・主な大陸の数は五つ、地上の大陸は『ヤーガンスト大陸』『バレット大陸』『イーグル・レンジ大陸』と呼ばれる三つ。
・その他に『天空大陸』と呼ばれる空に浮かぶ大陸と地下層に切り離された『無大陸』なるものが存在する。
・主要国の数は104。ウルベリオン王国の敷地面積は28位。
・国家に属する種族の数は確認されているもので37。
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「おおまかな説明ですとこんな感じになりますね」
「私のいた世界より遥かに大きな世界です、イシハラさんのいたチキュウと比べるとどうですか?」
「まったく同じくらい、素晴らしい、感動した、ちょー気持ちいい」
「絶対嘘ですよね? 面倒なんで適当な感想のべてるだけですよね?」
「地球人で『オルス』に来たのはイシハラさんが初めてなので資料があまりないのですけどね……聞くところによると地球より『オルス』の方が少し小さいですね、人口の数も地球の方が多いようですね」
「そうなんですか……チキュウとは凄い文明の星なのですね。いつか行ってみたいです」
「では……続いて『職業』について説明させて頂きますね」
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~『オルス』における『職業』について~
・現在確認されている職業の数は500を越える、その中には異界人により持ち込まれて市民権を得たものもある。
・多くの職業は『天職』『適職』判断により採用が判断されるが、例外もある。
【例外1】血縁や世襲など特殊な家柄などでのみでしか就く事のできない職業を『特別職』と呼び、たとえ『天職』の才があっても就職する事は難しい。(王族、貴族など)
【例外2】試験などを設け、その基準値を満たすものであれば『天職適職』の才がなくても採用される。(後天的判断制度)
・『天職適職』の才は生まれついての『先天性』と『後天性』に分かれ、『後天性』はたゆまぬ努力により発現する。『先天性』よりも能力値は劣るがその職業を生業とするには充分な才能である。
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「そんな数の職業が……では私も警備兵を続けていれば警備兵の『天職』の才が発現する事もあるかもしれないんですか?」
「その通りですね、『後天性』はいわゆる努力の才……警備兵にはとても大事なものですので『後天性』により才が発現する可能性は充分ありますね」
「……頑張りますっ!……それと聞いてみたかったのですが……この世界の職業ってどんなものがあるんですか?」
「膨大な数になりますが……抜粋した主な職業を羅列させて頂きますね。【国王、皇帝、貴族(公爵 侯爵 男爵 子爵 伯爵)、村長、村人、奴隷、商人、行商人、鍛治職人、建築職人、料理人、医師、執事、メイド、巫女、娼婦、占星術師、風水師、精霊遣い、死霊遣い、召喚士、錬金術師、賢者、祓師、猟師、漁師、吟遊詩人、踊り子、冒険者、ギルド員、情報屋、忍者、諜報員、傭兵、兵士、騎士、ウィザード、ウィッチ、神官、教皇、枢機卿、司祭、司教】など……様々ございますね」
「……わかるものもあれば全くわからないものもあります……イシハラさんは全てご存知でしたか?」
世の中には猫になりたいというやつがいる、気ままで自由。好きな時に寝て好きな時に飯にありつける。忠誠心を見せなくてもその可愛さにより甘やかされ好きな事をして生きていけるからだ。しかし俺は絶対に御免だ、自由とは言うが飯の対価として好き放題に人間に体などを触られる、自由とは言うがする事はなくただ寝るか散歩するかの毎日、自由とは言うが過酷な競争を生き抜いて飼い猫になるのはごくわずか。つまり猫とは飼い慣らされても野良になっても、家に縛られるか生きる事に縛られるかそのどちらかなのだ。自分のしたい事をしているわけではなく、そのどちらかで生きていくしかないのだ。要するに娯楽もくそもあったもんじゃない、猫にとっての選択肢は飼われて自由を奪われた上で寿命を待つか、過酷な世界を生き抜くために生きるか。そこに自由意思など存在しない、それ以外は食うか寝るかしかない。生きるために生きる、死ぬまで生きる。つまりは
「イシハラさん……これ以上ないくらいどうでもいい事を考えていませんか……? ちゃんと聞いておきましょうよ……」
「ちなみに異界人が持ち込んだ職業で市民権を得たのってどんなんだ?」
「そうですね……最近その名をよく聞くのは【魅了師】という職業ですね。遥か遠い国では【アイドル】という職業を目指す人が多く見られるようですね」
聞くんじゃなかった。
誰だよファンタジーにそんな職業持ち込んだの。
魔王の脅威にさらされてる世界なのに娯楽に走ってる場合じゃないだろ。
「他には家畜生物や従えた魔物を使役する方達の為に獣達の健康面や衛生面の管理を専門としている【獣衛生士】や字の書けない方や国家間などに依頼されて文字の通訳をして書面を作成する【行政書士】精密な似顔絵を描いてそれを生業とする【絵師】と呼ばれる職業も最近耳にします」
日本かっ!!
俺は心の中で突っ込んだ。
「皆さん様々な職業で頑張ってらっしゃるのですね、私達も頑張りましょう! イシハラさん!」
「そだねー」
「まったく心が入ってませんよね? とりあえず早く話を終わらせようと必死ですよね?」
「とり急ぎ知る必要があるのはこのくらいですかね……警備兵の仕事や給金に関しては明日シューズさんと一緒に来た時にお話しようと思いますね。なにか知っておきたい事はありますかね?」
「そうですね……国や世界の歴史など知りたい事は色々ありますけど……イシハラさんか眠そうなので今日はここまでで大丈夫です……アマクダリさん。この国に歴史資料館などはありますか?」
「それでしたらウルベリオン城敷地内にある王宮図書館がよろしいかと、この国だけではなく世界中の歴史事が記された書物が数多くございますね。イシハラさん達ならば許可をいただかずとも入れるはずですね」
「ありがとうございます! イシハラさん! 私行きたいです!……ってあれ!? いない?! イシハラさん!?」
「素早く音もなく帰られましたね」
「またですか!?……ぅうっ……置いてかないでくださいってばぁ……」




