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五十四.面倒くささゲージ 


「おい! 無事か!?」

「あ……あぁ……浅い切り傷だけだ……石の破片がとんできたのか……」

「何が起きたんだ……?」

「勇者様と……あの警備兵が突然爆発して……」

「まだ戦えたのかっ……あの魔物っ……!」

「住民達はっ!?」

「ケガ人が少しっ……!」

「勇者様はっ!?」

「まだ爆煙がっ上がっててどうなったのかわからないっ……だけど勇者様がこの程度でヤられるわけないだろっ……! あの警備兵だって爆破をものともしなかったんだ……きっと……」


キィンッ! キィンッ!


「煙が晴れてきた……ほらっ! 戦いの音がするっ! 金属音がっ……! きっと勇者様が戦ってらっしゃるの……………………………え?」



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 俺は深いため息をつきながらクソライオンの爪撃を銃で受け止めた。

 力、強いなこのクソライオン。まともに力比べしたら負けるだろうな、俺は腕力もやる気もないし。

 俺は爪と競り合う銃を手前に引き、力比べを受け流す。


「おおっ!?」


 それによりクソライオンはバランスを崩しこちらに倒れこんでくる。

 俺はそのまま銃口をクソライオンの腹に押し当て、引き金を()いた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 事前に溜めておいたレーザービームを倒れこんできたクソライオンの腹に撃ち込んだのだ。

 衝撃波の勢いでクソライオンは宙に浮いて遠くまで吹っ飛んだ。地面に叩きつけられたクソライオンの巨体のせいでこっちまで揺れる。


「っわははははは! やるじゃねえかやるじゃねえか! さすがだぜ! こんな(たぎ)る戦闘は久しぶりだっ! 爆破無効化の技術! 近接攻撃は一切当たらねぇ……見切りの技術! 緩急をつけた距離自由自在のレーザー攻撃! 最高だぜ! 攻略し甲斐があるってもんだ! さぁ! こいや!」


 うわっ(ドン引き)なにはしゃいでんだこのクソライオン。

 何事も無かったかのようにクソライオンは俺との戦闘を楽しんでいる。腹にレーザーが直撃したのに。やっぱり内部に撃ち込まないとダメか。しかし、さすがに警戒したのか口の中に撃ち込むスキは無くなっている。


 ふむ、どうしたものか。体に当てても効かないし、これじゃ俺の面倒くささゲージがどんどん溜まっていってジリ貧だ。


「はぁぁぁぁぁぁっ」


 俺は再度ため息をつく。原因は言うまでもなく、横で苦しそうにして倒れているアホだ。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


 勇者、勇者様、ヒーロー、ブレイバー。


 肝心要の勇者はクソライオンの技術(スキル)の爆破一発で瀕死に陥っている。俺は回復魔法も使えないし回復アイテムも持ってないからどうにもできない。せっかくボスを任せようと思ったのに、来て即効でただの足手まとい。とりあえずこいつにとどめを刺されないようにいちいち俺が盾みたいに攻撃を受けなきゃいけない始末。


 こいつ、本当に勇者か? 勇者なら『攻撃無効』とか『スキル無効』とかそんなん持っておけよ。ちゃんとレベルあげてから助けに来い。

 まったく、まぁこんなアホはもうどうでもいい。あのクソライオンをどうにかする方法を考えないと。



「勇者っ!!!」

「ん?」


 クソライオンをどうしたものかと考えていると群衆の中から聞いた事のないようなないような声が聞こえた。見てみると群衆を押し退けて白フードの性格ブスが倒れている勇者に駆け寄ってきた。

 杖持ってるし白フードだし、たぶんこいつは回復役だろう。勇者を回復しにきたのか、良かった良かった。これで俺はお役ごめんだな、早く帰ろう。今度は一撃でやられるんじゃないぞ。


【異界の白の魔導師技術『大ショック療法(ケアルダ)』】


「痛たたたたっ!!?」


 何か電気ショックみたいな感じで勇者は痛がりながら回復した。

 いや、回復してるのかあれ? まぁ火傷とか治ってるし回復術なんだろうが。何て無茶苦茶な治癒術だ、現実的なのかファンタジー的なのかどっちかにしろ。


「(なにやってるのん勇者!! なにやられてるのん! これじゃあ計画が台無しなのんっ!)」

「(しっ……仕方ねーだろ! 思った以上に化物だったんだからよ! このデカブツの魔物! 魔王幹部ってこんな強えーのかよ!)」


 足手まとい勇者と性格ブスはひそひそと会話をしている。いいから早くクソライオン倒さんかい。


「ゆ……勇者様……? やられたように見えたけど……もしかして……」

「馬鹿っ! 聞こえちまうだろっ! そんなわけないって! ちょっと油断してたんだろ……!」

「そっ……そうよね……! リィラ様も駆けつけてくれたしもう大丈夫よねっ……?」

「け……けど……あっちの警備兵はピンピンしてるのに……?」

「それはお前…………」


 ひそひそ話をしているバカ二人を住民達が怪訝な顔をして見ている。ほら、早く魔物倒せってよ。


「(ほらっ! 平民も怪訝な目を向けてるのんっ! どうするのんっ!?)」

「(知らねーよっ! 雑魚魔物だったら楽勝なのに……最近修行もレベル上げもだるくてしてなかったから勘が鈍ってんだよ!)」

「(じゃあ……逃げるしかないのんっ!?)」

「(バカかよっ! この警備兵のオッサンに全部いいとこ持ってかれちまうだろっ! このオッサンどうやったか知らねーけど幹部と互角だっただろ! オッサンが倒しちまったら……もうこの国にいらんねーぞ!)」

「(ちぃっ!……キャリアのせいなのんっ! アイツがもっと豪遊できるようになるからって変な計画たてなければっ……!)」

「(言ってる場合かよ! とにかく誤魔化さねーとっ!……そうだ!)」


 足手まとい勇者は突然立ち上がり、群衆に向けていきなり叫びはじめた。


「──サンキューリィラっ! この警備兵に足を引っ張られて爆発をもろに喰らっちまったけどもう大丈夫だ! おい警備兵! そんなに戦いたいなら協力しろ! 手柄は分けてやるからよ! 仕方ねえやつだ!今のは見逃してやるから手を貸せっ!」


 勇者がわけのわからない事を言うと住民はざわつき始める。


「そ……そうだったのか……」

「あの警備兵……まぐれで魔物を倒せそうだったからって……勇者様の横入りを邪魔したのねっ……何てやつっ……!」

「け……けど……そんな風に見えたか……?」

「馬鹿っ! 勇者様がそう言ったんだからそうなんだよっ! おい警備兵! 責任をとって勇者様に協力しろ!」


 そして、何かヤジが飛んできた。


















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