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五十.フラグⅡ


「ひっ……うわぁぁぁぁぁっ!! 魔物だぁぁあああっ!!!」



 住民達が一斉に騒ぎ出す。北門は一体どうなったんだ? 兵を一番集中させてたと聞いてたが。全滅させられたのか?


「鳥、シューズと一緒にエミリを先に母親のもとに連れていけ。迂回ルートでな」

「ぴぃっ! 御主人様はどうするのだぴっ!?」

「どうせこのままじゃ魔物に街を占拠される。少し魔物を減らしてから後で行くさ」

「……ぴぃ……」


 鳥は判断に迷っている。


「ぴぃは御主人様の精霊だぴ……御主人様に危機が訪れている今……傍を離れるわけには……」

「ここにいたら争いに巻き込まれる、エミリが死んだら俺達は試験失格。そして俺はホームレス、無一文。どちらにせよ死ぬ。Do you understand?」

「………………ぴぃっ!……承知したっぴ! 御主人様っ! 絶対……死んじゃだめだっぴよ!」

「安心しろ、これが終わったら俺、警備兵になるんだ。ここは俺に任せて先に行け、必ず後で合流する。こんな魔物と一緒にいられるかっ! 俺は先に部屋に戻るぞっ!」

「イシハラさんっ! 何ですかっその不吉を(はら)んだセリフの数々はっ! ふざけてる場合ですかっ!」


 死亡フラグを羅列した俺はムセンから突っ込まれた。地球の文化を知らないのに凄いなこいつの的確な突っ込み。

 鳥は馬車の元に飛んでいった。


「ムセン、お前も行け」

「……ごめんなさい、イシハラさん。貴方の判断は正しいかもしれませんが……今回はお断りさせて頂きます」

「ん?」

「私は……ここで住民を見捨ててまで警備兵になるつもりはありません。それでは本末転倒ですから」

「そうか」


 そういえばこいつは人々を守りたいから警備兵になるんだったな。

だったら仕方あるまいて。


「わはは、さて……人間がいっぱいでうざってぇな。邪魔くせえから少し減らすか、お前らやっちまえ」


《ギャァァァァァァァッ》

《グォォォォォッ》

《ガァァァァァッ》


「「「う……うわぁぁぁぁぁっ!!」」」


 髪と髭がモジャモジャのデカブツが指示すると魔物達が咆哮し、住民達へ襲いかかる。逃げ場を限定された上に大人数で統制されていない住民達は空いている方向へ向かうしかなく、場は混乱を究める。


【一流警備兵技術『強制・交通整理』】


「あっち行け」


《ギャァァァァァァァッ!?》

《グォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?》


「お? 何だそりゃあ?」


 俺は杖を振り、動き出した魔物達を強制的に吹き飛ばした。そして住民達に指示する。


「お前ら落ち着け。人数を分けて行動しろ、全員が思うままに動いたら統制なんか取れるわけがない。怪我するだけだ。慌てずに急げ」

「そ、そんな事言ってる場合かっ!」

「魔物がもうすぐそこにいるのよっ!?」

「無茶苦茶言うなっ!」


【一流警備兵技術『魔物通行止め』】


ドドドドドドドドドドドドドドドォォォンッ!!


「わわっ?」

「な、何だっ!?」

「デカイ看板がっ……魔物達の前にっ!」


 俺は看板を住民と魔物達の間に設置した。


「ほら、これで慌てずに行けるだろう。さっさと行け」


 まったく手間のかかる。給料も出ないのに何故俺がこいつらを守らなきゃいけないんだ。いや、そういえば地球では人助けをすれば警察から金一封が贈られることもあるんだった。

 ここにいる騎士団とやらは警察みたいなもんだ、後で手間賃を請求してみてもいいんじゃないだろうか?


「イシハラさん……こんな時にまであなたはもう……しょうがないお人ですね」

 

 そんな事を考えていた時、またもや街に爆音が響いた。


「きゃぁぁぁっ!?」

「今度は何だっ!? いきなり看板が粉々にっ…!」


「ん?」

「えっ!? イシハラさんの『技術』がっ……!?」


 せっかく設置した看板がいきなり壊された。一体誰の仕業だ? さっき道を分断したやつみたいに攻撃の出所がわからんかったが。


「んん? おいおい何だ? せっかく面白そうな術を見れたのによぉ、もう終わりなのか?」


 デカブツのライオンじじいが壊された看板の向こう側から声をあげた。ふむ、やっぱりあいつの仕業じゃないのか。それは何となくわかってはいたが。

 あのライオンじじいがどんな魔物でどんな技術を持ってるかは知らないし興味ないが、この謎の攻撃の出所はあいつじゃない。


 じゃあ一体誰の仕業だ? 周囲確認術で調べているが気配が感じられん。


《ギャァァァァァァァッ》

《グワァァァァッ!!》


「「「ひぃっ!?」」」


 看板を失い、自由になった魔物がまたもや住民達に襲いかかる。ふむ、謎の攻撃があるかぎり何をやっても元の木阿弥だな。先に謎の攻撃をしているやつの正体と居場所を突き止めた方が良さそうだ。

 しかし、魔物の方をどうするか。肉まん騎士団は静観している、どうやら動く気は無いらしい。まったく、騎士団のくせに使えないやつらだ。



「……かっ……かかれーーーーっ!!! 住民を守れぇーっ!」

「「「う…うおおおおおおおおおおっ!!」」」


 避難誘導をしていた兵士達が魔物達に応戦する。こいつらは確か門兵だったか、まともな兵士がいて助かる。


「イシハラさんっ! 私達も魔物と戦いましょう!」

「無駄、ムセン・アイコム。魔物はどんどん押し寄せてきている。既に街の北側はほぼ占拠された、包囲されるのも時間の問題」

「ウテンさんっ! だからといって諦めるんですかっ!?」

「そうは言ってない、けどこのままじゃ確実に全滅する。避ける方法はただひとつ」


「大将の首、あのライオンじじいを倒すのが一番手っ取り早いか」

「そう、いー君」

「し……しかしっ……そんな事をしている間に街の人々はっ……」


「ぐぁぁぁぁっ!?」

「くそっ……! 強すぎるっ……」

「これが……幹部軍の率いる魔物かっ……」


 門兵達は次々と倒れていく。一体一体が野良の魔物とは違い、厄介そうだ。しかも東西からも魔物が続々と現れはじめた。


 さて、どうするか。


「いー君、私が魔物達の相手をして時間を稼ぐ。四業幹部の相手ができるとしたらこの場で貴方だけ。任せてもいい?」

「仕方ない、できるだけやってやるさ」

「お願い……」


【王国諜報員技術『雨音ランラン』】

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・諜報員コードネーム【雨天】の技術。雨音のように静かに移動しながらも素早く攻撃を行う。

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 ウテンは短刀を持ち、魔物の群れに飛びこんで行った。はぁ、面倒だがやるか。


「イシハラさん……」

「ムセン、お前は怪我したやつらを回復してやれ」

「………」


ギュッ


「ん?」


 ライオンじじいのところへ行こうとしたら、後ろからムセンが抱きついてきた。何やってんだこいつ。


「…………イシハラさん、絶対、絶対死なないで。……私……貴方に言いたい事があるの、だから……死んだら許さないから」



 ムセン。

 何いきなりタメ口になってるんだこいつ。しかも、それは特大な死亡フラグだ。









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