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四十九.騒乱の中央広場


【王国騎士団長技術『神速の光』】

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・光を纏い、自身の速さも光速化させる技術っぽい。

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 鎧まんはめっちゃ速く大剣を振るう。


【一流警備兵技術『危険予知』】


 俺は大剣の動きを予測してめっちゃ速く避けた。疲れる。


「どうしたでおじゃるか!? アーサー! 遊んでいるでおじゃるか!? お前らしくもないでおじゃる! 本気を出すでおじゃるよ!」


「………ちっ……! 遊んでるわけじゃねぇんだよ……少なくとも今は本気で攻撃してるっ……なのに……っ!」

「終わりか? 疲れるからもう止めろ」

「何者なんだこいつ……一切攻撃が当たらねぇっ……技術を使った攻撃は結界に阻まれて通らねぇ……結界を通す攻撃を当てても一切怯まねえどころかまるで効いちゃいねぇ……くそぉぉっ!!」


 鎧まんは止めるどころか更に速さを増して俺に剣を振るってくる。鎧が無くなった分、身軽になったんだろう。あ、という事はもう鎧まんじゃないな。筋肉が凄いから筋肉まん、いや、それは著作権的にまずいかもしれない。


 肉まん、だな。

 

「な……なぁ……あの警備兵がもしも勝てば俺達避難できるんじゃ……」

「馬鹿! 聞こえたらどーすんだ! しかも警備兵が勝てるわけないだろ! きっと騎士様はこれから本気出すんだ!」

「でも……そしたら私達は……どうなるの……?」

「よく考えろよ! 騎士様に逆らったらどっちにしろ街には住めなくなるだろ!」

「そ……そうか……そうだな……」

「じゃあ……俺達は……ここで魔物に喰われるしかないのか……」


「あ……あなた方は……それでいいのですか!? ただ相手の身分が上というだけでっ何もしないままこの現状を黙って受け入れるおつもりなんですかっ!?」


 なんかムセンと街の住民達が言い争っている。本当にあいつはあちこちに喧嘩売ってるな、今度からあいつをトラブルメイカーと呼んでやろう。


「そんな事言ったって……」

「騎士様が決めた事なら……従うしか……」


「でしたら死ねと言われたら素直に従うのですか!? 今言われているのはそう言う事なんですよっ!?」


「仕方ないじゃないっ……! 所詮私達は平民なんだからっ!」

「そうだよっ! 王族に逆らうなんてできるわけっ……!」

「それに軍師様達にもなにか考えがあるのかもしれないしっ……」


「っ! 先ほどの言葉を聞いてまだそんな悠長な考えをしているのですかっ!? この方達はあなた方を救ってはくれません! でしたら自分達で何とかするしかないじゃないですかっ!」


 人が攻撃されてる横で喧しいな。こいつらにそんな事を言ったって無駄なのに。上の言う事は絶対、身分や職業の差に服従。それが心に根付いている、この世界の平民とやらは。まぁ、それは地球でも似たようなもんだったかな。


 仕方のない部分もあるけど。誰だって上には逆らえない。人によって理由は様々あるが。

 単に一言で言ってしまえば『面倒だから』。これに尽きるだろう。

揉め事なんて真っ平だからな、ただただ上の決定にとやかく言いたくない。面倒くさいから、上が決めたんなら安心だから、従っていれば楽だから。


 うむ、まったくその通りだ。凄いよくわかる、俺もそーゆー性分だからな。

 あれ? だとしたら住民は悪くないんじゃないか?


「そんなわけないじゃないですか! そこはそれを覆えす理論を並べ立ててお説教するところじゃないんですか!? 何納得してるんですか! あと、戦いながらどれだけ大きな一人言喋ってるんですか!」


 ムセンから怒涛の突っ込みが入る。


「くそっ……! 俺様の攻撃を避けながらベラベラとっ! なめやがって! 死にやがれっ!」


 けど、上の決定に納得できない場合もある。あまりに理不尽な事を要求される場合もある。

 パワハラ、モラハラ、セクハラ。そーゆー時は戦うしかないだろう。身分の差だとか将来の事を案じて黙ってる場合じゃねぇ。


 身分を捨て、立場を捨て、恐怖を捨て、立ち向かうしかないだろう。そうしなければ、そいつはただの『人形』、人の形をしたものに過ぎない。失うのが怖くても、負けるのが怖くても、捨てるのが怖くても、やるしかないだろう。


『逆らったっていいじゃない。だってそれが、人間だもの』


【一流警備兵技術『対人強制誘導』】


「あっちへ、行け」


 俺は杖を、肉まんに向けて振った。


「!!!……ッおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」


 肉まんは強制誘導により吹き飛ばされ、家屋に叩きつけられた。

 凄い勢いだったな、鎧が無いから死んでなきゃいいんだけど。


「アッ……アーサーッ!!?」


「き……騎士様が……」

「騎士団も怯んでる……今なら……通れるっ」

「でも……そんな事したら……私達……」


「っ! まだそんな事をっ……! 今しかないですよ皆さんっ! 命令を守って命を失うのか……命を守るため反旗を翻えすのか! あなた方はどうするのですかっ!」


「………」

「………」

「………」

「………」

「………」


 住民達は顔に陰を差しうつむくだけだった。何を言っても無駄だな、まぁ仕方あるまい。

 すると、家屋の屋根から誰かがこちらに向かって跳んできて俺の前に立った。


「いー君、ただいま」

「おかえり」


 ウテンが戻ってきた。早いな、本当にこいつは身軽なやつだ。


「首尾は?」

「大丈夫、貰ってきた、万事休す」

「それは万事OKというんだ」

「…………迂闊」


 ウテンは俺に紙を渡した。俺は記してある文面に目を通す。ふむ、問題なさそうだ。

 さて、これを誰に読ませるのが効果的か。宝ジャンヌかだもん騎士がいればよかったんだが。ウテンはこういうのやるようなタイプじゃなさそうだし、そもそも声が小さい。


 じゃああいつしかいないな。

 俺はムセンの元へ行き、紙を渡す。


「え? え? イシハラさん、何ですか? この紙……」

「いいから黙って読め、住民達に聞こえるようにでかい声でだ」

「は……はい……えっと……『緊急勅令書?……避難民、そして兵士達に告ぐ。ウルベリオン城及び貴族街の全建造物への立ち入りを許可する。一時避難場所とせよ……【ウルベリオンⅢ世・ジョブズ・ユークス・ルイス・シーザー】』!!」


「「!!」」


「お……王様からの……直々の勅令書ですか!?」

「ああ」


 簡単な話だ。現場で上の立場のやつに理不尽な要求をされたんならもっと上の奴に再度指示をあおげばいい。

 今のこの現状の場合、あのキングオブ王様だな。


「うっ嘘でおじゃるっ! そんなものっ……偽造したに決まってるでおじゃるっ!」

「偽造じゃない、その証明に王印も貰った。ほら、ここ」


 ウテンは紙の何やら複雑な印みたいな紋章みたいなやつを指差す。


「そ……それはっ……」

「それでも納得できないなら勝手にすればいい。陛下も直にここへ来てくれる。その時に処断されるのは誰か考えて決めて」

「うっ……うぐぐっ……」

「ここで指示に大人しく従えば不問にする。諦めて、軍師マリオン・ローレスト。騎士団長アーサー・シャインセイバー」

「………くっ……」

「騎士団も道を開けて」


 ウテンが兵士達に指示する。道を塞いでいた兵士達も困惑しながら道を開けた。


「へ……陛下から直々のお達しが……!」

「よ……良かったっ……! これで助かるんだ……俺達っ!」

「魔物達が押し寄せる前に早く階段を登りましょうっ!!」


 住民達が一斉にぞろぞろと動き出す。まったく、恐ろしいほど現金なやつらだ。中には馬鹿みたいに道を走り出すやつもいる、ガキかこいつら。


「お……落ち着いてくださいっ! 皆さんっ! 一斉に動き出しては危険でっ……!」


 避難誘導をしようとしたその時、街中に振動と轟音が走った。


「ん?」

「「!!?」」

「きゃあああああっ!?」


 全員何が起きたのか全くわからず、困惑している。ムセンは叫んでしりもちをついた、住民や兵士達の中にもバランスを崩して倒れたやつがいる。それほどの衝撃だった。


「……何……?一体何が……いー君わかる?」

「あれだあれ」


 俺は城に続く道の先を指差す。まったく、次から次へと波乱続きだな。一体誰の仕業だ?攻撃の出所が全くわからなかったぞ。


「……何あれ……?………道に大穴が空いてる……分断された……?」


 ウテンがキャラに似合わず悲壮な顔つきをしている。


 そう、誰がやったか知らないがせっかく避難場所を確保できたというのに道に大穴を空けられ、道を閉ざされてしまった。幸いなのは住民や兵士が巻き込まれなかった事か。迂回ルートはあるだろうが、これだけの人数を狭い道で迂回させるとなるとだいぶ時間をくうな。


「……っ何事だ……?」

「な……何でおじゃるか……? 一体何が……」


 肉まんも鼻毛丸も何が起こったかわからないらしい。


 すると城の反対方向、北の道から地響きを立てて何かデカいシルエットが歩いてきた。後ろには異形の生物達。

 魔物がゾロゾロと、デカい奴に率いられるように大挙し、現れたのだ。


「何だぁ? 誰もいねぇと思ったら街の真ん中にいっぱいいるじゃねぇか。わはは、さあ始めようぜ! 俺様は魔王軍四業幹部【罪業の『テロリズム』】さぁ、勇者はどいつだぁ!?」


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