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四十八.無職vs王国最強騎士



 俺と鎧まんは見つめ合い、対峙する。


 周囲の空気がピリピリと張りつめているような気がする。

 まったく、何故バトル漫画みたいな事をしなきゃならんのだ。魔物の相手ならともかく。まぁ向こうはやる気みたいだし、俺のだらだら計画を邪魔するというんなら相手してやるか。


 ていうか、ところで、誰なんだこの鎧まん。


「お、おいアンタ! 無茶だ! 序列一位の最強騎士様の相手なんてっ……!」

「そうよ! 何考えてるの!?」


 住民が横からごちゃごちゃ言ってくる。やかましいな、そもそもがお前らの避難場所を確保するためにやってやるのになに文句言ってんだこいつら。

 判明したところによるとあいつは王国最強騎士らしい。つまりだもん騎士の上司みたいなもんか、あの片腕の美人、宝ジャンヌってやつが『元』最強騎士とか言ってたっけ。それの後釜か。


「お……王国最強騎士っ……イ……イシハラさん……っ! 大丈夫なんですかっ?」

「何が?」

「相当な実力者のようって事ですっ……! 何か……状況を打開する算段はあるのですかっ!?」

「そんなもんあるかい、ただ、やらなければいけないならやる。それだけだといつも言っているだろう」

「でもっ……!」


「無駄でおじゃるよ……もう臨戦態勢に入っているでおじゃる……王国最強騎士【アーサー・シャインセイバー】。好戦的な彼を止められるのは勇者か魔王……四業幹部くらいのものであろうでおじゃる……後悔するでおじゃるぞ警備兵。ワチキらに刃向かった事を」



「ん」


【一流警備兵技術『危険予知』】


 またもや突然、轟音を立てて地面が割れる。


 風のように消えた鎧まんは気づくと大剣を俺に振り降ろしながらすぐ目前にいた。

 あんな大剣を抱えてよくそんな速く動けるもんだ、疲れないのか?お馴染み『危険予知』発動で避けたけど。

 振り降ろされた大剣は地面を粉々に破壊している。


「ほう、避けるか。素人じゃなさそうじゃねぇか」


 何のだよ。人間の素人ってことか? 確かに34歳にもなれば人間の素人ではないが。

いや、人間の素人って何だよ。


「は……速くて動きが何も見えませんでした……」

「当然でおじゃる、現王国最強騎士は【天性騎士】を持つ者の中でも更にその極地に至った者にしか辿り着けない領域……一人で魔物を数千と相手にできる者にしか就く事ができない職業……まさに一騎当千の栄誉の極みの称号でおじゃるぞ。警備兵なぞに動きが視認できるわけないでおじゃる」


【王国騎士団長技術『刹那の光』】

------------------------------------------⭐主観によるMEMO

・剣の形を模した無数の光を発現させる技術っぽい、通常の剣による殺傷能力と同等の効果を持つっぽい。自由自在に操作可能なうえに分裂、縮小拡大、反射など様々な応用ができる。光なので物理的な防御は不可能っぽい。

------------------------------------------


「ん?」


 俺の周りにはいつの間にか剣の形をした無数の光が浮かんでいて、それがいつの間にか俺めがけて飛んできていた。これも鎧まんの『技術』とやらか。なるほど、さすが王国最強騎士と言われている。

速すぎていつ飛んできてたのか全く見えなかったぞ。


【一流警備兵技術『安全領域』】


 たぶん体に当たっていたらどうにかなっていただろう。重傷とかじゃ済まなかっただろうな、危ない危ない。みんな大好きカラーコーンによる領域を張っていたから無事だったけど。


 結界に阻まれた無数の剣の光は割れてパリパリと地面に落ちて消えていった。


「並み居る天性騎士を凌駕(りょうが)して元王国騎士……ジャンヌさえも認めさせ序列一位『シャインセイバー』の肩書きを手にした彼にこの国で敵う者なぞいるはずないでおじゃる……かつては軍を率いて四業の一角を退けた事もあるでおじゃる」


「……中々やるじゃねぇか、結界技術か。面白ぇ、少し本気を見せてやるぜっ!!」


 鎧まんは一度距離を置いて大剣を構える。


「ぴぃっ! 御主人様御主人様! 素手で相手するのは危険だっぴ!シューズ様から借りてきたぴよ! 使ってほしいぴ!」


 鳥が馬車から何かを持って飛んできた。シューズの試験用の武器の杖だった。俺は杖を受け取る。


「ご苦労さん、鳥。危ないから離れて見てろ」

「ぴぃっ! 申し訳ないっぴ! 足手纏いにならないようにそうするっぴよ! 頑張ってぴ御主人様っ!」


 さて、杖でどう対処するか。

34歳のおっさんが魔法少女みたいに魔法を使うのも気持ち悪いものだな。そもそも『属性技術』とやらの検定を持っていない俺はファンタジー的な魔法は使えないだろう。試験の時、杖使ったら何が起きたっけ? どーでもよすぎて覚えてないな。


 まぁいっか。とりあえず杖で殴るか。


「おらあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 鎧まんはまるで光のような速度で大剣を振るう。大剣が(くう)を斬る衝撃波によって、周りの家が軒並み破壊される。

 なんて大迷惑なやつだ、剣を振るだけで住居を破壊するとは。きっと当たったら無事じゃ済まないだろうな。


 危険予知があるから当たらないけど。


「えい」


 俺は大剣を避けながら杖を降って鎧まんに攻撃してみた。


ボコッ


「っ……!」


 鎧に杖が当たった。しかし何のダメージも見込めなさそうだ、当たり前か。重鎧に杖で直接攻撃なんて効くわけないしな。

 しかし、何か予想外の攻撃にビックリしたのか鎧まんは俺からまた距離を置いた。


「……てめぇ……馬鹿にしてんのかぁ……?」


 そしてなんか怒ってる、腹でも減ったのか。


「ま……まずいでおじゃるよ……アーサーが怒り始めたでおじゃる……あの男はもう完全に終わりでおじゃるよ………跡形も残らないでおじゃるぞ」

「………………イシハラさん」


 鎧まんは大剣を空へ(かか)げた。すると、雲間から光が射すような感じで空から光が降り注ぐ。まるで自然が創ったスポットライトは俺を照らした。


【王国騎士団長技術『滅殺の光』】

------------------------------------------

・自然に存在する光を操作する技術っぽい、温度操作も可能。また光に照らされた対象は拘束されたかのように身動きすら取れなくなるっぽい。

------------------------------------------


「あれは……照らした者を超高熱で焼き尽くすアーサーの至高の技術……光の道に照らされた者は動く事すら敵わず……まるで浄化されるように滅殺されるでおじゃる……殺す気はなかったでおじゃるが……仕方ないでおじゃるな……お前らが悪いでおじゃるよ……」

「…………………」


【石原鳴月維.天性技術『無之極意』】


「ん? それだけか? 何かショーでも始まるんじゃないのか?」


 人をスポットライトで照らしておいて何みんなしてジッと俺を見つめているんだ。早くショーを始めろ。


 ん? いや、俺が照らされているんだからショーをするのは俺の方か。とんだ勘違いをしていた、恥ずかしい。

 しかし何も聞いてないぞ? ドッキリか?まさか異世界でしかもバトルの最中にドッキリを仕掛けられるとは思わなかった、ビックリした。

 俺にショーを始めろという事か、無茶ぶりにも程がある。仕方ない、何も用意してないし歌でも披露してやるか。


「(国歌斉唱)」~♪~♪


「「いや何なんだ(おじゃるか)お前さっきから!? 一体何者なんだ(おじゃるか)!!? 攻撃が効いてない(でおじゃるか)!!?」」


ザワザワ……


「何なのあの人……!?」

「騎士団長様と……互角っ……!?」

「攻撃を全部避けて……っ……気にもせずに何か歌ってるぞ!?」


 何て失礼且つ嫌なやつらだ、カラオケじゃないんだから人が歌っている最中に喋るんじゃない。


 すると、歌ってる最中に鎧まんの鎧が割れて地面に落ちた。


「!!?」


 鎧まんがびっくりしている。

 あ、もしかしたら試験の時の武器を振ったらアマクダリの服が破れたのと同じ効果か。さっき杖が鎧に当たったから。

 世界一嬉しくないラッキースケベだな、男のおっさんの肌着なぞ見たくもない。


------------------------------------------

【一流警備兵技術『対敵無力化』】

・対象にとっての動きを封じるのに最適な効果を生じさせる。

------------------------------------------


「ぴぃっ! 御主人様の凄さが皆に知れ渡ってきたぴよ! ムセン様!」

「……それはそうなんですけど……凄い場面のはずが……もの凄くユルく感じるんですけど……もう少し格好良くいかないものなんですか……?本当にあの人はもう……」

























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