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番外編.王都戦争⑪『門兵長と騎士Ⅱ』※アクア・マリンセイバー視点

〈ウルベリオン王都.西門〉



 肉が裂かれ、鎧が破壊される音がした。


「うわぁぁっ!」

「ぎゃあっ!!」


「エドモン!! ブレリアッ!!」

「ダイス門兵長ッ!! 余所に気をとられるなっ! 隙を見せれば自分もやられるだけだっ!」

「………っ! くそっ!!」


 私は門兵達と共に魔物の進行を食い止める………しかしやはり多勢に無勢。ただでさえ進化した魔物の軍勢に加え、こちらは戦闘慣れしていない門兵……数は倍以上。


「さぁなっ! どんどん殺しなさいなっ! アハハッ! これからは魔物がセカイを支配するのさっ!」


 隊長格の魔物に後押しされるように魔物の猛攻が激しさを増す。それに比例するように……門兵達は次々と倒れていっている。


(……っく!! もう……どうする事もできないのっ……!?)


--------------

----------

--------


「アッハハハハハ、よっわ~!歯ごたえなっ!後はアンタ達だけだわよ!」


 あっという間に残りの兵は私と門兵長だけになった。周囲は魔物達に取り囲まれている。


(まさに絶体絶命……どうやら……………ここまでみたい)


「はぁ……はぁ……騎士さんよ………こっから逆転の目は……残ってねぇのか?」

「……はぁ………はぁ………残念ながら………無いな……私の体力も……限界のようだ……」

「……そーかぃ……はぁ……はぁ……少しは……時間稼ぎができたから……いいか………」

「…………そうだな」


(そう、初めから勝ち目なんてなかった。私達の役目は……少しでも時間を稼いで民を逃がすこと……)


「アッハハ! よっわ! これだからニンゲン殺しはヤメラレないんだわ~……ヨワイ者イジメって最高じゃない!? アッハハハハハ! ニンゲンも好きでショ?! ヨワイ者イジメ!」


(それができたんだから………もう、悔いなんかない)


「アハハッ! さぁさ、その二人を殺してユウシャを探しながらどんどんニンゲンを殺しなさいな! 魔物達っ! アッハハハハハ!」


 はずだったのに。


(……やっぱり悔しいなぁ。ナツイと出会って、やるべき事を思い出したばっかりなのになぁ。私、何してたんだろう。くだらない事にこだわってないでもっと強くなってれば……もっと沢山の人達を救えたかもしれないのになぁ)


 ジャンヌ様、ナツイ、ごめんなさい。

 そして…………ありがとう。あなた達のおかげで、私は。


(何度も人生をやり直せた……悔いは残っちゃうけど……きっと私は幸せだった……だって)


 騎士として、女として、生きる事ができたんだもん。



【元王国序列一位騎士技術】【一流警備兵技術】


【『聖なる乙女の光』】【『魔物通行止め』】


「さぁさぁ!! ミナゴロ         」


 

 魔物の声が途中で途切れる。目をつむり死を覚悟していた私はその異変により再び目を開けた。


 そこには二つの技術があった。そのどちらの技術も私はよく知っていた。

 一つは幼い頃……私を救ってくれたジャンヌ様に見せてもらった技術。天より降り注ぐ光を剣に集約し、その光を光速で剣擊にして放つ技術。この餌食となった魔物は自分が斬られた事にも気付かないくらいに一瞬で体も命も切断される。

 先ほどから騒いでいた蛇の魔物はそれにより真っ二つにされていた。

 そしてもう一つ。周囲にいた魔物を鉄でできた看板のようなもので押し潰しているこの技術。つい最近目の当たりにしたこの技術。こんな事ができる人を他に私は知らない。



「「やっぱりまだまだ、だな(ね)。だもん騎士、(アクア)」」


「いや被ってる、誰だお前」

「あら、あなたこそ」

「無職のイシハラだ、よろしく」

「あぁ、貴方がイシハラ君ね。王国騎士顧問のジャンヌよ、よろしく」

「あぁ、あんたがだもん騎士の長い回想話に出てきたやつか」

「その、だもん騎士っていうのが誰かわからないけど……私の事を知っててくれてるのね。ふふ、光栄だわ」

「Me too」


(ナツイ!? ジャンヌ様!? これは……夢!? 二人が……一緒に助けてくれた……!?)


 本当に夢と錯覚するほどの……有り得ない、私にとって嘘みたい光景に私の感情は色々と混乱する。

 けど……何よりも二人が一緒になって私の目の前にいる、こんなに嬉しい事は他になかった。


(………………でもっ!!)


「「何いきなり仲良くなってるのよ(んですか)!! ナツイ(イシハラさん)!!」」


 私の言葉もナツイと一緒にいる変な格好の女の子と被った。














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