番外編.王都戦争⑨『騎士達Ⅲ』※とある騎士の視点
<ウルベリオン王都.北門>
私は王都にたどり着きます。ウルベリオン王都は既に戦火に包まれてしまっていました。
(……遅かった……既にあんなにも怪我人が……王は無事でしょうか?)
空には魔王軍の部隊である飛竜が曇天を覆い尽くし、地上はガレン砦の戦いよりも更に多様な生物が埋め尽くしていました。
しかし、気のせいか魔物達は後退し始めます。その原因はすぐに判りました。
二人の騎士が猛攻撃を今まさに開始せんとしていたからです。
(………あの二人はっ……序列二位と三位のっ………!)
【属性検定【炎】一級【光】一級技術『燃えよ瞬き』】
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・属性検定複合技術、閃光速度の剣技を食らったものを灰と化す。
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序列二位のマグマ・ブラッドセイバーは激しく紅く燃える剣を携え飛竜の群れに飛び込みます。すると竜達は次々と炎に包まれ、閃光の走りと共に事切れたように落下していきます。
《ギャアァァァァッ!!》
《グォォォォォッ!!》
「竜がっ……上空の炎と光の閃光で次々落ちていく……」
「す……凄い……俺達兵士なんて…普通の魔物5体で…………もう限界なのに……王国騎士様は一人で竜をもう10体も倒したぞ…」
【暗殺剣技一級奥義『死即歩行』】
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・職業『諜報員』の上位技術。使用者が歩行し横をすり抜けるよりも先に死が訪れる、と言われるほどの音速攻撃術。
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地上にいる魔物達の間を序列三位の騎士シャドウ・ナイトセイバーは音も無く、まるで風に揺れる草葉のように自然とすり抜けていきます。
少しの間を置いた後、魔物達は次々と倒れていきました。
(あれは元諜報部隊長シャドウの技術……暗殺術……標的の横を通り抜けるまえに死に至らしめるという……)
「……第二波もおさまってきた! これならっいけるっ………」
マグマとシャドウの猛攻により、周囲の兵士達も活気づきます。そして……ガレン砦の戦いと同じように士気を取り戻した事による勢いで魔物達を押し始めます。
(……まるでガレン砦の戦いの再来のよう……勢いを取り戻したところにあの獅子のような魔物が……)
ガレン砦の戦いを隠れて見ていた私のみが悪い予感を感じとります。
そして……それは的中します。魔物達が次々と光を放ち始めたのです。
「……っ!! 魔物達が光を放っ……!!」
ドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォォォンッ!!
それは以前と同じように魔物が爆発的と化した瞬間でした。辺り一体を呑み込み、戦場は景色を一変させました。
またもや爆発により炎と煙に戦場は包まれたのです。
それは連鎖し、誘爆したかのように爆音すらも繋げて周囲を赤と黒の色彩に染め上げます。
「魔物達が次々と爆発を……っ! 遂に総大将が現れた……という訳ですか………」
(そう……これは……)
爆発を起こした元凶が、重厚な足音を鳴らしながら現れました。
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魔王軍幹部【罪業のテロリズム】が現れた!
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「わっはっはっ、なーに手こずってんだよおめーら。こんな人間どもによぉ、勇者は見つかったのか?」
【暗殺剣技.『剣帝死圏』】
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・職業『諜報員』上位技術。人の意識と視覚の死角から攻撃を行う暗殺剣技。
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「お?」
嗤いながら現れた魔物の総大将【罪業のテロリズム】にいち速くシャドウが死角からの剣擊を放ちました。……が、テロリズムはまるで気にも止めていないかのように躱します。
「……………ちっ………今のを避けるか…………」
「わっはっはっ、まさかあの爆発ん中でも生きてたとはなぁ。おめーやるじゃねぇか、いきなし背後から現れるとは思わなかったぜ。惜しい惜しい、あと数秒気づくのが遅れてたらその剣に貫かれてたかもなぁ」
「…………随分と余裕だな…………だが…………それがいつまでもつかな…今の爆発で……ほとんどの魔物は消し飛んだ…周囲にはもう……残っている魔物はいないぞ………」
「わっはっはっ、そっちこそおめー以外の兵士は爆発に巻き込まれて吹き飛んじまったじゃねぇか」
(そう、ガレン砦と同じように……周囲にいた兵士達も爆発に呑み込まれてしまった……私がもう少し早くみんなに伝えていれば……)
爆発の連鎖により巻き起こった黒煙により戦場は不可視になっていますが……あの爆発の中で無事でいられるわけがありません。しかし、二人の騎士が兵士達の生存を心配する様子はありません。
「………お?」
「……………爆煙が晴れてきたぞ…………よく見てみろ………死んだのは……魔物だけだ……………」
「ええ、罪業のテロリズム……あなたが『爆発系統の技術』を使う事は既に周知済みでしたからな。……ガレン砦で戦い、生き残った騎士兵士達が伝えてくれました。そのおかげで……より詳細なあなたの『技術』がわかりましたぞ」
黒煙が次第に晴れていきます。そこには積み重なる魔物達の残骸、そして……身を守るような姿勢で立つウルベリオン兵士達の姿がありました。
(あの……爆発を……耐えた……)
「あ……危なかった……」
「……あぁ……『防御技術』に全神経を集中させてなかったら吹き飛んでたな……」
「それだけじゃねぇ……『マグマ』さんが『炎技術』でシールドを張ってくれてなかったら……耐えられなかった」
どうやら事前に情報を得たマグマにより兵士達には炎から身を守る技術を付与されていたようです。
「なんだ、面倒くせえなぁ……どうせ今死ぬか後で死ぬかの違いなのによぉ。まぁいいさ、それよりもおめーら勇者の居場所を教えろや。この街にいんだろ?」
「残念ですが……現在行方不明で吾が輩達も捜索中なのですよ、そう言ったら信じてくれますかな?」
「わっはっはっ、何だ逃げやがったのか。信じてやるぜ? どうせこの街を更地にすりゃあわかる事だからな」
「……成程、やはり人間と魔物は解り合えないらしいですな」
「…………最初から……わかりきっていた事だ………」
「わっはっはっ、さぁ来いよ。雑魚ども」
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