番外編.王都戦争③『王と前騎士団長』
〈ウルベリオン城〉
「陛下、すぐに避難を。陛下の指示により城にはもう誰も残ってないわ。全ての兵が戦場へ向かいました。戦えない者達は全員避難した……城にはもう私と陛下だけよ。……全く、何て無茶な指示をするのよ。自分の立場というものを少し考えて? 自分や城をフリーにして全兵を戦場に向かわせる王なんて聞いた事ないわ。魔物が城に攻め込んできたらどうするつもり? みんなを説得するのにどれだけ時間がかかったか……」
「……これで良い、大層にワシや城を守る必要なぞないのだ、生かすべきは『人』。ワシや城ではない。『人』さえ生きておれば国はいつでも再建できるだろう」
「……本当に破天荒な王でございますこと……ふふ、だから私は騎士を引退してもこの国に尽くしてるわけだけどね。でも、諦めたからじゃないんでしょ?」
「……無論だ。このくらいの事をせんと勝利をおさめるのは難しいというだけだ。それほどまでに魔物は力をつけておる……特に役職に就いた魔物の力は計り知れん。立場や常識に囚われていては人類はいずれ淘汰されるであろう」
「……既に国の各地から兵士達が王都に向かっているわ。更に隣国の『シュヴァルトハイム』、同盟国、エルフの大里、竜人国家、ドワーフ達の職人国家などから支援を取り付けたけど……それでも足りない?まぁ……間に合うかどうかはわからないけど…」
「……お主がこの国にいてくれてよかった。……しかし、それはお主が一番良くわかっておる事だろう?」
「意地悪な王様ね……確かに私は昔……魔王軍幹部の一人にこてんぱんにやられちゃったけどね……片腕を失っただけで済んだのは奇跡だったわ。確かにあれは『騎士』じゃ勝てない、たとえ『天職』の才をもってようと。『勇者』じゃなければね」
「………」
「でも頼みの綱の『勇者』はまだ見つからないんでしょ? つい数日前までは街にいたはずなのに……」
「………やはり、お主でさえもそう感じておるか。……人の心に根付くものは厄介なものだ……」
「……うん? 何の話?」
「……今、この世界には明らかな『職業格差』『職業差別』が根付いておる。このままでは世界はやがて魔物達に支配されてしまうだろう。人々の心に根付くそれらを取り払い、人が一丸となって立ち向かう新たな時代を創る時が近づいておるのだ」




