番外編.王都戦争①『騎士達』※アクア・マリンセイバー視点
地平線を埋め尽くす程の魔物の数。
村を襲おうとした行軍の比じゃない、どこまでも途切れない多種多様な魔物達。それが今、王都を滅ぼさんと……勇者を討ち取ろうと列を為し、もう目に見える程近くまで来ている。
「来ましたか……かつて、我輩達が参加した『職業戦争』と同等の数くらいの魔物ですかな?」
「……そのようだ……嘆かわしい」
私は自軍数百の兵を従え、ガレン砦と王都を結ぶ行路のある門の壁上に立つ。隣には同じく数百の兵を従える……同胞の騎士が二名。
序列二位の【マグマ・ブラッドセイバー】と序列三位【シャドウ・ナイトセイバー】が並び立つ。
序列上位の二名が王都周辺にいた事はありがたい。この二人は【天職の騎士】。これで少しは勝てる確率もあがったから。
だけど、冒険者ギルドの面々や属性検定技術者を合わせてもこの北門に配備された兵力は1000と少し。魔物達の進行が予想より遥かに速いために各国からの支援増援が間に合いそうにない。
ガレン砦でツリー達が数を減らしてくれたとはいえ、報告によると……まだ魔物達はおおよそ兵の五倍ほどの数がいる。
そして、住民の避難も未だに半分も済んではいない。警備協会の人達が必死に誘導してくれてはいるけど……何せ人数が多くパニックになっている人達もいるため中々スムーズにはいっていない。
まさに背水の陣。けど、それでもやるしかない。私はそう決めたから。
「アクア殿、貴女は無理をなさらない方がいい。ツリー殿とボルト殿を同時に相手して払いのける程の魔物です。正直なところ、我輩達の手にも負えないかもしれませぬ。貴女には他にできる事があるはず」
「…………ふっ、わかっている。唯一……騎士団の中で騎士適性を持たない序列最下位の私なぞ………この規模の戦いには役に立たない事くらいはな」
「………いえ、そんなつもりで言ったわけでは……」
「だが、それでも私はここに立つ。私は国を、民を守る騎士だからな」
「……アクア殿……」
「せめて勇者様が来るまでは私も戦いに参加する、私が戦う事で少しでも民が救われるのならば、本望だ」
肝心の勇者は、ここ数日……姿を眩ましているらしい。王国諜報部隊すらも行方を追えないなんてさすが勇者、と言いたいところだけど……こんな時に一体何をやってるんだか。
建前上、勇者には逆らったりできないけど……私はあの勇者を正直良くは思っていない。美人を見つけては侍らせ、勇者の肩書きを振りかざす……乱暴で最低な男。仲間の回復技術者も高位属性技術者もやりたい放題。
何であんな奴らが勇者一行として崇められてるんだか……
「……アクアマリンセイバー……貴様……少し見ない間に変わったな……」
「えぇ、以前の冷徹な気迫が薄れたように見えますな。良い事ですが。心境の変化でもありましたかな?」
「…………ふっ、別に何でもない。ただ自分のすべき事を思い出しただけだ。お喋りは終わりだ、開戦の合図を」
「…………あぁ」
「そうですな、では……参りましょうか!」
(そう、私は、民を守る、騎士だもんっ!)
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