■番外編.砦防衛戦 ※【とある騎士の視点】
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ここは軍事におけるウルベリオン国の最後の砦……まるで国を分断しているのかという程に地平にまで伸びる壁には数多くの大砲や技術結界が侵入しようとする魔物を阻みます。もしもここを堕とされるような事があれば……それは王都の、つまりこの国の終わりを意味するでしょう……。
そんな国の生命線である『ガレン砦』にまさに今、魔物の集団……通常ならば持ち得ない意志を持ち……ただ一つの目的のために徒党を組み統率された『魔王軍』の一団が襲いかかってきています。
ただ一つの目的……それは……『人類の殲滅』
しかし、国を守る騎士達がそれを黙って見過ごす筈がありません。
王により選抜された十二人の精鋭騎士……そして、その騎士達の率いる騎士団がそれを阻止せんと今、ガレン砦に集結します。
〈最終防衛地点『ガレン砦』〉
「大筒隊! 撃ーーーーーーっ!!!」
ガレン砦は戦場と化し、防衛に携わる兵士達が魔物達と相対します。剣と盾で直接戦う者、属性技術を使い遠距離戦を仕掛ける者、結界技術を張る者、技術で援護する者、大筒や投石、矢を使う部隊……それぞれが力を合わせ魔物達を退けます。
「……っ!! 駄目です隊長っ!! 数が一向に減りませんっ!! 更に北西より小鬼部隊が到来っ!!」
「騎士団が来るまで何としても耐えろっ!! ここを突破されれば王都は戦火に包まれる!!」
「しかしっ……!! 兵力差がありすぎますっ!! このままでは部隊は全滅します!!」
「っ!! くそっ!! やはり我々だけでは……どうする事も……できないのか!」
みんなが持てる技術を遺憾なく発揮しますが……絶対的な数の暴力により兵士達は徐々に後退します。魔物の数は兵士の倍以上……更に最近では『生態特性技術』の他に【人の使う技術】を習得した魔物が多く、兵士達はその技術の餌食となって倒れていきます。
そこへ、マントを翻しながら二人の騎士がやって来ました。
「その通りですわよ。所詮『防衛隊』に選ばれた兵など下の下。最初から期待などしていねぇですわ。雑魚はひっこんでいろよですわ」
「あははっ! ツリーお姉さん、またお上品な言葉が交じってるよ?相変わらずだなぁ。それよりこの戦いが終わったら胸揉ませてよ?」
「いい加減にしないとぶっ殺すですわよ? エロガキが。気持ち悪いからこれが終わったら二度とワタクシに近寄るんじゃねぇぞ、ですわ」
「アクア姉さんもツリー姉さんもつれないなぁ、男とばかり仕事でつまらないんだよー僕」
装飾された翡翠の鎧に身を包んだ女性の騎士と黄金色の髪をした幼い少年の騎士。二人は言い争いをした後、魔物に向き合います。女性の騎士はすぐに剣を取り出し、魔物に向けます。
すると、魔物達の立つ地面が隆起し……割れた大地の奥から太い木の幹のような大きさの根が飛び出して魔物達を串刺しにしていきます。
魔物達は為す術もなく体を根に貫かれ、その生命活動を終えます。
「!!地中から木の根が飛び出して……魔物どもを串刺しにっ……! あの『技術』は………っ!!」
「麗しく登場してやったぞですわ。王国十二騎士団序列六位【ツリー・ネイチャーセイバー】だぞ、ですわ」
「王国十二騎士団序列八位【ボルト・スパークセイバー】来たよー。うわっ、男ばっかり……いらなっ」
「騎士団だ!十二騎士団が来てくれたぞぉぉぉぉぉっ!」
《《うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》》
兵士達は二人の騎士の姿と技術をその目に確認し、士気を取り戻したかのように歓声をあげました。
「うるせえぞ。ですわ、この程度の魔物達に苦戦してる奴らがアタクシを見てんじゃねぇぞですわ。ゴミどもが」
翡翠の女性騎士はそんな兵士達を一瞥し、再び碧色に輝く剣を構えました。
「いきますわよ、樹剣『グリーンセイバー』。ワタクシのオリジナル技術【創生】。くそ食らえ、ですわ魔物ども」
すると先ほどよりもより一層大きく、そして膨大な数の根が大地を侵食するかの如く地中より這い出し、魔物達を呑み込んでいきます。
「す……凄い………百体以上の魔物を一瞬でっ……! これが……序列上位騎士の力っ……!」
「……よりによってこの二人か……しかしそんな事言っている場合ではないっ……! 全軍好機だっ! 二人に協力して魔物の数を減らせ!!」
《《うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》》
士気を取り戻した兵士達は怒号と共に魔物達に向かいます。戦場はより戦火の激しさを増し、あちこちでこの世のものとは思えない程の光景を創り出しています。
炎、氷、光の壁、飛岩、地鳴り。そして翡翠の騎士により産み出される大樹の根、根、根。
兵士達は勢力を増した魔物にも怯む事なく、主に翡翠の騎士の活躍により前線を押し上げます。
しかし、それだけでは魔物が退く事はありませんでした。それどころか……更なる援軍と思われる巨体の影が地平より到来します。
「隊長っ!! 新たに現れた小鬼部隊の方角から土煙と轟音がっ! 土煙の中に巨体の影を確認っ! 何かが迫っていますっ! 小鬼部隊を率いる隊長格かと思われます!!」
「何という巨体だ………化け物かっ…!」
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小鬼部隊大隊長・オークの【トロルキング】が現れた!
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「フヘヘぇっ、俺様は【テロリズム】様のミギウデ……中佐の【トロルキ」
巨体が言葉を発した瞬間、突然、稲光のようなものが走りその言葉はすぐに途絶えます。
それは轟音が飛来した事に由来していました。その音の発生源は……【落雷】。雲のない晴天から突如として落雷が発生し、小鬼達に襲いかかったのです。それは一際大きな巨体の鬼にも例外ではなく、むしろその巨体故か落雷の格好の的となりました。
「あはは、むさいやつの自己紹介なんていらないよー。早く死んでくださいね? 僕、気分悪いよ」
「なっ……!? 何だっ……!! いきなり雷が降って……オークを直撃した!? あの少年騎士かっ……!?」
「わずか16歳で十二騎士団に抜擢された天才少年……あれが序列八位……【ボルト・スパークセイバー】の技術……」
そう、落雷の発生源は黄金色をした少年騎士。彼はその黄金に輝く剣から鬼を焼くほどの雷をいとも簡単に発生させたのです。巨体の鬼は現れた瞬間にその役目を果たす事なく命もろとも途切れ、大地を揺らしながら息絶えました。
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オークの【トロルキング】は倒れた!
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「案外大した事ないね、【テロリズム】の軍勢ってのも。勇者様に頼らなくても僕達だけでいけちゃうんじゃないかな?」
「当然ですわ、勇者様の手を煩わせるなんて騎士の名折れじゃねえか、ですわ。ワタクシが幹部もぶっ殺してやるですわ」
二名の騎士の猛進により形勢は既に逆転しています。魔物は徐々に数を減らし、兵士達に猶予が生まれます。
「強い……! 流石……国を守る騎士だ! この勢いで……っ!」
「「!!」」
しかし、そう思ったのも束の間の出来事でした。
突如、眩いばかりの光が魔物達の体から発生したのです。
戦場にいる個体も種族も生態もバラバラのいくつかの魔物の体内から溢れ出す光。それに怯んだのは兵士達ではなく、魔物達すらも、その光を発し始めた魔物でさえも何が起こっているのかわからない様子です。
そして、その光が何なのかわからないまま……戦場を巻き込んで魔物達は 『爆発』 したのです。
それは各所で起こり、時には連鎖してあちこちに暴風と暴炎、衝撃波を発しました。爆発の余波により戦場はより一層地獄のような光景を創り上げます。『爆発物』と化した魔物達は勿論の事……その周囲にいて巻き込まれた兵士や他の魔物達も……もう動く事は叶いません。戦場には一気に静寂が訪れました……。
「………………ふぅっ、危なかった~。まさか突然魔物達が爆発するなんてね……あらら、魔物達と一緒に防衛部隊がほとんど壊滅しちゃったね~……魔物達の悪あがきかな?」
「違ぇよ、ですわ。今のは……恐らく幹部【テロリズム】の『技術』……味なマネしやがってですわ……!」
爆発にいち早く気付き、難を逃れた二名の騎士は体勢を立て直します。すると、爆発により立ち昇る黒煙の向こう側から……不気味に響く重い足音が聞こえてきます。
「そぉら、おいでなすったですわ」
「本当だ、あれが…魔王軍四業幹部【罪業のテロリズム】……いくよ、雷剣『イエローセイバー』!」
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魔王軍幹部【罪業のテロリズム】が現れた!!
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「わっはっはっ、ちょっと強そうなのがいるじゃねぇか。ちょうど良いや、お前ら勇者の前の肩慣らしになれ」
二人の騎士は現れた獣のような……それでいて人のような魔物と戦います。
………ごめんなさい、私は怖くて動けませんでした。選ばれた騎士団長でありながら……情けない……本当にごめんなさい……ツリーさんにボルト君……せめて、二人が無事でいられるように祈ります。




