三十五.焼き鳥
洞窟から引き返した俺達は入口で変な鳥を目にした。何だこいつ?いつからいたんだ?
「さっきからいたっぴぃ! 御主人様の精霊だって言ったっぴぃ!」
精霊? ファンタジーにつきもののあれか? 御主人様って誰の事だ?
「話を聞いてほしいっぴぃ! 最初から説明するぴぃ! わたしは御主人様の異界アイテム【警笛】から産まれた精霊の『ぴぃ』だぴ! よろしくぴ!」
「つまり……どーいう事だ?」
「イシハラ君、異界から持ち込まれた物は『技術』の他に持ち主をサポートしてくれる便利な力になったりするんだよー」
「何……だと?」
「イシハラ君がチキュウから持ってきたフエが精霊になったんだよー」
「どーいう事だってばよ?」
「イシハラ君がこのフエドリの御主人様なんだよー」
「だが断る」
「そっかー、フエドリちゃん。断るって」
シューズは地球の名台詞を言っていただけの俺の言葉を真に受けた。
「待ってっぴ! 断らないでっぴぃ御主人様! 一生懸命やるっぴ!」
つまり異界から持ち込んだ道具は異世界だと形を変えて便利な能力になるって事だろう。
「で? お前は何の役に立つんだ? 焼き鳥か?」
「違うっぴ! 食べないでぴぃ! ぴぃはやっと精霊職に就けたんだぴぃ! 頑張って御主人様に尽くすぴぃよ!」
「精霊って職業なのか?」
「そーなのぴ! 生物の中には精霊になる素質を持ってる者がいるっぴ! 精霊の適性か天性を持ってる者は精霊に昇格できる可能性があるぴよ! 精霊試験に合格すればなれるっぴ!」
なんかファンタジー世界に現実感を持ち込まれてやな感じ。異世界を夢見る青少年に『結局就職しないとダメだぞ』と言っているようなものだ。
まぁそんな事どーでもいい、さっさと灯りを作ってムセン達のところへ行くか。
「御主人様御主人様! 御主人様の『技術』に灯りの技術があるぴよ! それを使えばいいっぴ!」
灯りの技術? たいまつとかを作れるとかそんな技術か? そんなもん『技術』が無くても作れるだろう。
「違うっぴ! スマホって機械を取り込んで得られた『技術』っぴ!『夜眼モード』ってやつぴ!」
俺はステータスオープンし確認する。確かにそんなんがあるな、試してみるか。
【異界アイテム.スマートフォン技術『夜眼モード』】
------------------------------------------◇MEMO
・異界アイテム『スマートフォン』から取り入れた技術。夜眼が利くようになり、使用者の眼も明るく光り視界の先を照らす。
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変な起動音がした後に俺の視界は一気に明るくなる。おお、なんか夜目が効くようになったぞ。暗闇だった周囲もまるで深夜から夜19時くらいの明るさになった。
「イシハラ君、なんか眼が光ってるよー? 明るくなったねー」
と思ったら俺の目が光っていただけか。なんかロボットみたいだな、まぁ明るければいいか。
「じゃあ行くぞシューズ、焼き鳥」
「うん、行こー」
「待ってぴ! 焼き鳥じゃないっぴぃ!」
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<再び洞窟内部>
「明るいからよく見えるねー、イシハラ君」
「そうだな」
「まぶしいよーイシハラ君」
俺達は明るくなった洞窟を進む。歩く道はゴツゴツしていて結構危険だ、そしてあちこちに蜘蛛の巣みたいなのが張っていて非常に鬱陶しい。
「わ、蜘蛛の巣が身体に張りついちゃったよー……やだなぁ……イシハラ君取ってくれないかなぁ? 服の中入っちゃったよー」
「合点」
頼まれたので俺はシューズの服の中に手を入れ、まさぐった。
「……ん……そこじゃなくてー……んっ………とれたよー、ありがとー♪」
「良いで候」
「………御主人様とシューズ様は恋人同士なのぴ?」
「違うぞ」
「うーん、結婚するけどまだそんな関係じゃないよー」
「恋人じゃないのにそんな事までするのぴ……昨今の男女関係は進んでるのぴ……」
俺を勝手に性の乱れた若者みたいに言うんじゃない。俺は頼まれたからやっただけだ。
そんなやり取りをしていると、洞窟の奥の方から何かが這うような音が聞こえてくる。洞窟にも魔物が住みついているのか、狭いのに鬱陶しいな。
さて、ここじゃあ狭いから吹き飛ばしの『技術』は使えない。剣で斬ってもいいが数が多そうだからメンドい。どうしたものか。
「御主人様御主人様! 魔物反応だぴ! ぴぃが相手してもいいぴか?」
「結構面倒そうな魔物達だが焼き鳥が何とかできるのか?」
「任せるぴ! けど焼き鳥はやめてっぴ!」
ぴぃとかいう鳥は俺達と音のする暗闇に飛びながら割り込んだ。あんな小さな体で何をする気だ?
「シューズ、念のため『火』を使ってフォローしてやれ。虫系の魔物なら火に弱いはずだ」
「うん、わかったー」
そういえば今まで気にしてなかったけど周囲に近づいてくる魔物が何の魔物か何となくわかるな。これも無意識に使ってる『技術』か?
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・『魔蜘蛛』があらわれた!
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暗闇から現れたのは無数の蜘蛛だった。まぁあちこちに蜘蛛の巣が張ってるんだから当たり前か。
蜘蛛達は餌を見つけたと言わんばかりに躊躇なくこちらへ向かってくる。
「大丈夫だぴ! シューズ様! ぴぃに任せるぴ!!」
そう言って鳥が蜘蛛達の前に立ちはだかるように飛ぶ。
そして、大きく息を吸い込むようにして間をおいた瞬間。やってきた蜘蛛達が急にひっくり返る。
何だ? ぴぃがやったのか?
蜘蛛達はひっくり返りながら脚をもぞもぞさせ、やがて動きを止めた。
「どうっぴ!? ぴぃは色んな周波数の『音』を出せるっぴ! 今のは虫系の魔物が嫌がる音だっぴ! 他の人達には聴こえないし害はないっぴよ!」
成程、いわゆるモスキート音というを発したわけか。年齢だったり生物の違いだったりで聴こえたり聴こえなかったりする超音波だ。
当然、俺達には何も聞こえなかったので蜘蛛達が突然倒れたように見えたわけだ。意外とやるじゃないかこの鳥。
「お役に立てたっぴ!? 嬉しいっぴ! でも気絶させるだけで精一杯だから死んだわけじゃないっぴよ!?」
「気絶させれば充分だ、じゃあさっさと奥に行くとするか」
そして俺達は洞窟のさらに奥へと進んだ。




