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二十三.楽したい


〈警備兵試験.最終日〉


~地球時間.AM9:00~


「それでは、ただ今より警備兵採用最終試験を始めたいと思いますね」


 はぁ、たっぷり寝た。おおよそ10時間は寝たな、満足とても満足。

 試験場には俺達四人と副試験官アマクダリがいる、ついにハゲはクビになったか。もう出てこなくていい。


「本来ならばマルボウが最終試験につく予定だったのですがね……事情が変わりましてワタクシが最終試験も勤めさせて頂きますね。あ、ちなみに昨夜も言いましたがイシハラさんはこの試験に通過しようがしまいがワタクシの主人となり……竜人族の長になってもらいますのでそのつもりで」


 そうだ、昨晩帰ってきてからこいつに服を渡しに行ったら色々と面倒な事が起きた。まぁどうでもいい事だから気にしないでおこう。


「いやいや!……ええっ!? 一体何があったらそんな事になるんですか!? 帰ってきてから私達が知らない間に何があったんですか!?」

「他愛なき事」

「どう考えてもあるでしょう!? 何で日常の合間に起きたちょっとした出来事風に片付けようとしてるんですか!!」

「えー、イシハラ君はアタシの旦那様になるんだからだめだよー」

「シューズさんはちょっと黙っていてください! まずはこっちを片付けますから!」

「それでは皆様、最終試験の前に……こちらをお渡ししておきます」


 皆の前にアマクダリがそれぞれ武器を置いた。ふむ、どうやら皆の適性武器のようだ。そういえば適性武器は配布されるとか言っていたな。


「いえ、あのっ! それよりもっ!」

「うるさいぞムセン、子供じゃないんだから武器くらいではしゃぐんじゃない」

「違いますっ! もうっ! 試験が終わったらちゃんと説明してくださいよ!?」


 何をだよ。

 シューズには何かカッコいい杖、スズキさんには鋼造りのようなイカす盾、俺にはごく普通っぽい剣が配られた。


「ムセンさんは既に使い慣れた武器があるようなので試験はそちらで行って頂いて構いません。装填補充するものがあればこちらで用意させて頂きますがね」

「あ、いえ大丈夫です」


 という事は最終試験は武器を使用する内容ってことだな。


「では皆様、『簡単な試験』か『難しい試験』かお選びください。相談して皆で決めて頂いて構いませんのでね。選択した方を全員で受けて頂きますので」

「「「…………………え?」」」


 アマクダリの言葉を聞いた皆の目が点になった。しかし、アマクダリはその言葉の意味を解説する気はないようで皆の選択を待っている。


「………どういう事でしょうか?……『簡単』か『難しい』って……私達が決めていいんでしょうか……もしかしたらこの選択も審査の対象になるという事なのでしょうか……」

「わかりませぇん……しかし『簡単』な方を選ぶのはあまり心象が良くない気がしますね……」


 ムセンとスズキさんはひそひそと相談をしている。


「イシハラさん、シューズさん、お二人はどう思いますか?」

「んー? アタシはどっちでもいいよ? イシハラ君についていくだけだから」

「……そうですね……全員で選択してもいいんでしたら……私はイシハラさんの選択にお任せしたいです。恐らくあなたの選択ならば間違いはないでしょうから……」

「……えぇ、私も同意です。イシハラ君の選択に私もついていきますよ」

「……というわけでイシハラさんが決めてください、私達はそれに従います」


 ふむ、確かに普通なら『簡単』を選ぶに決まっている。しかしそれが罠という事もありえる、無料より高いものはないというしな。漫画とかでもよくある事だ、楽なコースを選んだやつは大抵が酷い目に合ってきついコースを選んだやつが正解で強くなれるみたいな。

 そう考えると『難しい』を選ぶのも一つの選択肢。何より俺の選択次第で皆が試験を通過できるかどうかの瀬戸際。安易に選ぶわけにはいかないな……むむむ、どうしたものかーー


 ーーなんて事を俺が考えると思ったのか? こいつら。

 俺は躊躇なくアマクダリに言った。


「簡単な方」

「………『簡単』な方ですね、わかりました。しばしお待ち下さいね」


 俺の答えを聞いたアマクダリはそのまま出て行った。なんだ? トイレにでも行ったのか?


「イシハラさん、ちなみに何故簡単な方を選択されたのですか?」


 ムセンが俺に問う、何故もくそもあるかい。


「楽な方がいいに決まっているからだ」

「………この選択の裏にある真意を読み取って………とかじゃないですよね?」

「そんなん知るかい、ただ楽したいからだ」

「…………そこはカッコよく『難しい試験の方が成長できるから難しい方を選ぶに決まってる』とか言って下さい……あなたに任せた私達が何も言う権利はありませんけど……」


 そんな苦労誰がするか。俺の事を実は心は熱い漫画の主人公みたいなキャラだと思っているのか?

 残念、俺はただ楽して生きたいだけの平凡な一般人でした。


 アマクダリが戻ってきたのか扉が開く。


「お待たせしましたね、では……こちらが依頼人のエミリさんです」

「は、初めましてなのよ、あたしはエミリなのよ。光栄に思うがいいのよ、特別にあなた達を雇ってあげるなのよ」


 戻ってきたアマクダリに連れられてなんかクソガキが入ってきた。

 金髪ツインテール、顔は可愛らしいが目つきは悪く生意気そうだ。見た感じ6、7歳くらいか? なんだこいつ。


「わぁ、可愛いです! どうしたのかな? 迷子さんなのかな?」


 なんかムセンがクソガキを見てはしゃぎだした。こいつも何なんだ。


「ば、馬鹿にするななのよ! あたしがあなた達を雇うと言ったなのよ! つまりあたしが上なのよ!」

「うんうん、そうなのかぁ。じゃあ私はエミリさんの下なんだねぇ、でもお姉さん達は今試験中なんだ。終わったら遊んであげるからねー?」

「だ、誰か説明してあげてなのよ! この人話聞いていないなのよ!」


 なんだこの茶番。


「ムセンさん、話を聞いてくださいね」

「……はっ! す、すみません……私……子供と触れ合う機会があまりありませんでしたので……はしゃいでしまって……続けてください……」

「はい、それでは最終試験の内容を発表させて頂きます。最終試験は実際に警備にあたって頂きます、警備するものは依頼人の彼女【エミリ】さん。彼女は魔物の巣窟になっている山林にある『とある植物』を所望しておりますね。エミリさんがその植物を手に入れ、街へ戻るまでの間……あなた達四人でエミリさんを警備して頂きます。つまりは『身辺警護(ボディーガード)』ですね」








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