二十.真・デート
「というわけで、どうやら俺はここで試験不合格のようだ。頑張れよムセン」
「いやいや!? 何でそうなるんですか!? どう考えても試験通過ですよね!? 試験官さん!?」
「ぅう………勿論ですね……イシハラさん……全ての武器に適性を持つという事で言うまでもなく合格ですね……」
何だそうなのか、納得いかないな。どれを使っても全然しっくりこなかった、なにかが違うんだ。
「と……いうわけですのでね……二次試験は全員合格という事になりますね……本日の試験はこれで終了ですね…」
秘書女は半裸でしゃがみながらボソボソ言っている。仕方ないな、俺はもう上はTシャツしか着ていないのだが半裸にしたのは俺だし替えがないって言ってたから貸してやろう。Tシャツに下着という危うい格好になってしまうが半裸でいるよりはマシだろ。
今日は試験も早めに終わりまだ昼過ぎだから服でも買いに行くとするか。
「………ありがとうございますイシハラさん……明日が最終試験になりますのでね……皆様よくお休みになり英気を養ってくださいね……それでは……」
秘書女はTシャツに下着姿で出て行ってしまった。なんか元気ないな、お気に入りの服でもあったのだろうか? だとしたら、わざとじゃないとはいえ悪い事をしたな。
するとシューズが何か近づいてきた。
「イシハラ君、おめでとー。全部の武器使えるなんてすごいねー、うわ、引き締まったいい体してるねー。触っていい?」
「是非もなし」
「わーい、ふんふーん♪ かたーい」
「ちょっ!何してるんですか!! 二人共っ! 特にイシハラさん!貴方には色々と言いたい事があるんです!」
「何だ?」
ムセンが何か騒ぎ立てて突っ掛かってきたが全て訳のわからないどうでもいい内容だったのでスルーした。
そうだ、ちょっとこいつに付き合ってもらおう。
「ムセン、服を買いに行くから付き合ってくれ」
「ですから貴方は………………はい!? 服!? ………あぁ、そ、そういえば……そ、その……イシハラさん…着る服なくなっちゃいましたもんね……」
真っ赤になりながら、ムセンはチラチラと横目で俺を見てくる、馬鹿にしてるのか?
「ムセンちゃんイシハラ君の裸に興奮してるんだよねー」
「は、はい!? ち……違いますよ! そっ、それよりもその状態で買い物に行くんですかイシハラさん? それにお金が……」
そうだった。まだ働いてないんだから手持ちはほとんど無かった。ふむ、どうするか。
「服欲しいの? イシハラ君、買ってあげるよー」
「助かる」
シューズが立て替えてくれるらしい。何か解決した。
「いやいや! あっさりしすぎですよ!」
「勿論、ただで貰うつもりはない。働いたらちゃんと返すしそれまで一つだけ言う事を聞いてやろう」
「ほんと? じゃあ……」
「今すぐ結婚する以外でだ」
「ちぇー、じゃあデートしようよ」
「良きかな」
「やったー、じゃあ行こうよ、ふんふーん♪」
デートに付き合う事で立て替えてくれるらしい。何か解決した。
「いやいやいや! ちょっと待ってくださいよ! デ……デートって……今私に買い物付き合ってくれって言ったでしょう!? 私が先ですよ!」
「そうだった、じゃあムセンも一緒に来ればいいだろ」
「うーん、三人かぁ。まぁいいや、じゃあデートしよう。ふんふーん♪」
「それで貴女はいいんですか!? もう思考が追いつきませんよ!」
「すだれおじさんも来る? みんなでご飯食べよーよ」
「ひぇ? ご、ご一緒して宜しいのですか?! い、いやしかし私なんかがいてはお邪魔では……」
「うーん、本当は二人が良いんだけど三人になったから四人でも変わらないよねー」
「そ、そうですか……で、では……」
「もう滅茶苦茶です!」
こうして皆で服の買い物をする事になった。
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〈ウルベリオン城下町古着屋『顎ひげ』〉
俺達は最初に城下町の服屋に来た。しかしファンタジー世界の服屋ってどうなんだ?
この世界は死んだ人間をそのままの姿で召喚する転生がまかり通っているがゆえ転生した人間が前の世界の文化を持ち込み色々な世界観の店っぽいのがある事に不思議はないがそもそもここの世界は魔王との戦争中の中世的な文化であるがゆえスーツなどの服が販売しているのはおかしいのではないかそもそもファンタジー世界の服と現代の服の違いの定義とは何なのだろう服は服だからただ名前が違うだけでスーツではない何かがあるのもおかしくはないのではないかそもそもがファンタジーの中世に流行りの服が無いと断言するのは地球人の勝手な思い込みではないのだろうかそれはあくまで地球上の中世に当てはめているからであって異世界の中世なのだから現代の流行りの服があっても何もおかしくないのであってそうであって
「イシハラさん……何でいつもお店に来るたびによくわからない顔するんですか……そんな事よりほら! 良さそうな服がいっぱいありますよ! イシハラさんはスマートですからどれでも似合いそうですよ!どれにするんですか?」
「俺のじゃない、あの秘書女の服だ」
「……え?」
「あの女試験官の着ていたやつだ、俺が破いて落ち込んでいたから弁償するだけだ。できれば同じやつがいい」
「…………そういう事ですか、たぶん落ち込んでらっしゃったのは何か違う原因だと思いますけど……服に頓着が無さそうなイシハラさんが服が欲しいっていうから変だとは思いましたけど………ふふ、そうですか」
「何が可笑しい?」
「いえ、やっぱり優しいところもあるんですねっ、というか……責任感ってものがあったのですねっ」
何かこいつ段々失礼極まりないやつになってないか?
「まぁ、それはそれとしてイシハラさんの服はどうするんですか? ずっと裸でいる気ですか?」
「うむ」
「うむじゃないですよ! 安物でもいいから何か着てください!」
仕方ないな。こうして俺達は買い物を済ませ、皆で飯を食いに行く事にした。
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〈レストラン『椅子ばっかり』〉
服の買い物を終えた俺達はスズキさんの紹介でレストランっぽいところに入った。中に入ってみるとシックな感じの内装でさすが異世界って感じの薄暗いムードのある感じの場所だった。
「ここには以前よく妻と娘と来ていたんですよ、安いのに美味しいとよく喜んでくれました」
「わぁ、素敵な感じのお店ですね。今はもう来られないんですか?」
「はは……恥ずかしながら人員整理でクビを切られ無職になってしまいましたのでそんな余裕も無くなってしまいまして……」
「……そうなんですか……」
まさか異世界でも不況の波の現実を聞かされるとは思わなんだ。しかし確かに美味いなここの料理、また来よう。
「なははは~、流石勇者さんっスわ~」
「当然だろ、おい店主! 上から高い食い物順に持ってこい! 料金は城に請求しとけ!」
「え~、またここなのん? もっと広いとこがいいのん」
「うるせぇな、ここの酒が一番俺の口に合うんだよ」
食事を済ませまどろんでいるとなんかやかましいのが店に入ってきた。落ち着いた店の雰囲気が台無しだ、あいつら何者だ? 山賊か何かか?
「!! っ、あの人達……っ!!」
ムセンが苦虫を噛み潰したような顔をしている。知っている顔らしい、しかし、いつ知り合ったんだ? ムセンとは召喚されてから四六時中一緒にいたから俺も知ってるはずなのに。
「……あん? ねぇ店主、ゴミみたいなやつらが座ってんだけど…ここはいつからゴミにも料理を出すようになったのん?」
「ん? おっ! お前らじゃねぇか、なんか久しぶりな感じすんな!あれからどうしてたんだ?」
「リュウジン、誰が話しかけていいっつった?」
「あ……すんませんっス……」
「よぉ、警備兵。まだ生きてたんだな、てっきり野垂れ死んだかと思ってたよ」
ん? こいつら何で俺らが警備兵だって事知ってるんだ?
いや、そういえば俺らはまだ警備兵じゃなかった、何だ人違いか。
俺は気にせず無視して食後のまどろみタイムを満喫した。
その直後、店中に響き渡るくらいの雑音が響いた。
「きゃあっ!?」
「ひぃっ!?」
山賊が俺らのテーブルに剣を突き立てその反動で皿が落下した音だった、料理ごと床にばら蒔かれた。ムセンとスズキさんが悲鳴をあげる。
「おい、お前だよおっさん。無視するとはいい度胸じゃねえか」
「いや、誰だよお前」
新キャラがいきなり偉そうに突っ掛かってきた。




