百四十一.真・デートⅡ
〈レジスタンスアジト〉
【職業展開】修得訓練を始めて早3日。
案の定、ムセン達はフィールド展開に手こずっていた。未だに領域のりょの字も見えないままに既に3日が経過している。大会の予選が始まるまで残り7日、シャベリューの脚でも王都近辺までは3日かはかかると言う事でちゃんと修行する時間はもう70時間ぐらいしかないだろう。
「………だめです……全く要領を掴めません……このままでは時間が……」
「焦っても仕方ないよ、リーダーが言っていた通り……天性の才を持った奴でも5年はかかるんだ。イシハラのような規格外じゃない限り……5日やそこらで修得できるもんじゃないんだよ」
ムセンと猫娘にアラサーが、ヤンキーと爺さんにゴボウ役者がついて指導する。俺はというと、作戦の立案やら他のレジスタンスメンバーとの面通しやらをド=ゴーンに頼まれたり色々忙しかったため、ほとんどあいつらとの修行時間など取れていなかった。
「ナっちん大人気じゃんか、リーダーもナっちん気にいってたし他のメンバーも不思議だけど面白い人って言ってたし。ナっちんいつもめっちゃ無愛想な顔してんのマジうける」
「そういうお前はここで何してるんだ? いつも変な服着てぶらぶらしてるがここはドンキじゃないんだぞ」
「変っていうなし! あーしが作った服だよ! どぅ? イケてっしょ!?」
訓練場にいたギャルはまるで帝王が羽織っているようなモコモコ毛皮のマントみたいなのを着ている、地球で言えばドン・キホーテにいるギャルが着てるやつだ。
「ちなみに~下はかなり露出の高い服だから~………見たい? ナっちんになら見せてあげなくもないけど~見たい?」
「NO-Thank You」
「遠慮すんなし! ねぇねぇナっちん今からデートしようよ、ナっちんが来るかと思ってここで待ってたんだよね」
話に全く脈絡性のない流石のギャル。面倒だったのでシカトしようとしたが、そうするとしつこいのがギャルというもの。俺もこいつには聞きたいことがあったので仕方なく付き合う事にする。
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〈コショウ古城〉
デートと言っても作戦まで時間もないし下手にそこらの町に行くのも面倒なのでアジト上部の古城でデートにする事にした。
「うける、あーし何回も見てっしここ。むしろホームだし。でもナっちんとだったら新鮮味あって面白そうだから楽しみ」
「俺は話があるだけだ、お前も職業展開が使えるんだろ? 棒役者とアラサーができるのはギリギリ理解できるが戦闘向きじゃないお前がどうやって修得したのか不明だ。だから知りたい」
「あーしが嘘ついてるっていいたいわけ? マジだし!」
「んな事言ってない。ほぼ一般人に近いお前のその感覚を教えれば警備兵だがほぼ一般人に近いヤンキー達の展開修得に繋がるかもしれんという事だ」
「あー、なーる。ん~……あーしがこれ覚えたのいつだっけ? 確か一年前くらいにレンジスタンスに入ってジロロロんにこの技の事聞いて……」
「お前も僅か一年足らずで修得したわけか?」
「そーそー! あーしマジ天才っしょ? まぁあーしのはあんまバトルには役に立たないし……子供のころからずっと『思い描いてた職場』だったからすんなりイメージできたんだけどさー」
「思い描いてた職場?」
ふむ、そういえば俺が職業展開した時も地球の道路を自然とイメージしていた。警備員の仕事場として一番慣れていたのが地球の舗装道路だったからだ。
「あーしが小さいころから働きたかった職場があーしのフィールドになったってこと。一回してあげよっか?」
「ふむ、見せてくれ」
「おけまるー」
ーー【職業展開 職場開放】ーー
『アパレルショップ【NW the SC】』
ギャルが軽い感じで両手でVサインをつくる。片方は口を挟むように、もう片方は前に突き出してVサインを逆にする。そしてウィンクしながらアヒル口。まるで地球のギャルの決めポーズを年代関係なく全て取り入れたかのような意味のわからんものだった。
だが、見事に景色は一変して服屋になった。普通に地球の渋谷にありそうなやつ。
ファンタジーの世界観ぶち壊しなのでこれ以上描写はしない、あちこちから香水の匂いが漂ってきて気分が悪くなってくる。
「成程、見事に戦意もやる気も喪失する。入店した者を滅入らせる、それがこのフィールドの効果だな?」
「んな効果ねーし! あーしのフィールドは戦闘向きじゃないっつったじゃん! あーしのフィールドの特別なとこはさ、【あーしの作ったこの服を買えば持ち帰れる】ってとこ! 一人一着のみであーしがこれを展開してる間だけだけどね。出口からなら展開したままでも外に出られるから」
ギャルはなんかとんでもない事を言った。
戦闘系以外のフィールド展開にはなにかしら別の効果が与えられるのか、そういえば魔女のフィールドでも創造したものを食べれたり遊べたりしたな。なるほど、生活系職業の展開は味方への支援効果があったりもするわけだ。
「OK、把握した。気分が悪いから帰る、物色してる最中に話しかけるな」
「話しかけてねーし! それ以前に服見てもねーじゃんか!」
ギャルはフィールドを解いて景色は古城に戻る。
なるほど、大体把握した。中々に奥が深いものだな職業展開は。だが、あいつらが職業展開を修得できる確率がこれで結構上がった。
「助かったぞギャル、礼を言う」
「ヘヘヘ、あーしこそサンキューね。サヨっち達を助けてくれたお礼まだしてなかったからさ。ナッちん、大会で傭兵のクソ共ぶっ倒してやってよ! あいつらマジむかつくから!」
「時間稼ぎのためにはある程度勝ち残らなきゃいかんからな、言われなくてもそのつもりだ」
話の済んだ俺達はアジトに戻ることにした、古城なんかにいてもしょうがないからな。
踵を返したその時、後ろからギャルに名を呼ばれる。振り向くとギャルがすぐ後ろにいてーー背伸びしながら顔を近づけてきた。
「ーーんっ!?」
唇を重ねた瞬間にそう驚いたのはギャルだった。自分からそうしてきた癖に驚いて後ろへ跳ね退け、顔を真っ赤にした。
「や……や……なっ……なにしてんのナッちん!?」
「こっちのセリフだ」
「ほ……ほっぺにちゅーするだけの筈だったのにっ! デート終わりにはみんなこうしてるってなんかの本で読んだし! なんで思っきし振り向くんだしっ!」
「お前が呼んだからだろう」
「あ……あーし初めてだったのに……ナっちんあーしと結婚して! 責任とれし!」
「断る」
その後、ギャルにも付きまとわれるようになり修行の時間はますます減った。やる気あんのかこいつら。
~大会予選開催まで残り7日~




