表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい  作者: 司真 緋水銀
序章第一節【警備員 石原鳴月維、異世界に上番しました】
19/207

十七.女王様


〈ムセン&スズ・キイチvs副試験官アマクダリ〉


【試験開始から5分】


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

「………ぐふっ」

「はい、どうやらお二方の武器は適性ではなかったようですね。では次の武器をお試しくださいね」


 適性武器とやらの試験が始まって数分でムセンとスズキさんは痣だらけになってバテていた。容赦ないなあの秘書女。二人共秘書女の鞭をかわしきれずに鞭を浴びっぱなしだ。


「うわー、適性武器ってやつが判るまであれ続けんのー? やだなー」


 隣で見ていたシューズが無表情で言った。


「もちろんですね、適性する武器を持てば武器に埋め込まれた『聖職石』が呼応し何らかの形で技術を具現化して発揮します。それが判別できるまでこの試験は続きますね。ムセンさんは回復の技術を使っていただいて構いませんよ?どうやら先は長そうですからね」


 秘書女も無表情で言った。どうやら見た目通りドSらしいな、あの女。

 ムセンは試験中に覚えた回復技とやらで再度、秘書に立ち向かう。


--------------

----------

-------


【試験開始から一時間経過】


「ぅあっ!」

「…………」

「うあー、痛そう。もう一時間は経ってるよ? 二人共大丈夫なのかなー?」


 鞭が当たり、ムセンは倒れた。

 二人とも一通り武器を全て試してはいたが、あんなでかい斧がムセンの適性武器とやらのわけあるまいに。スズキさんは既に杖を持ったまま倒れ動かない。窓際っぽいスズキさんが杖を持って魔法を使うイメージも全然湧かない。


「……ふぅ、これで全ての武器を使い終えましたかね。しかし……これは予想外でしたね、まさかお二方とも適性する武器が無いとは。……残念ですが……お二方共警備兵は諦めた方がよろしいようです。お疲れ様でした」


 秘書女は抑揚なく言った。どうやら試験はここまでらしい。


「ま……まだで……す、まだ……やります……お願い……します……」


 ムセンはふらふらしながら立ち上がる。


「気合いでどうにかなるものではないですね、元々武器を持ち戦うという気質が無かったのでしょう。ムセンさんの場合は適性武器があればその回復技術を大幅に上げ、回復要因として一戦力になれたでしょうが…今の技術のみでは体力の回復が精一杯ですね。それでは戦場にあって何のお役にも立ちません。戦場以外ならばそれを活かす場もあるでしょう、素直にお引きくださいね」

「……っ、嫌です! 私は……っ、わたしは……諦めないと、頑張ると誓ったんです……っ」


 ムセンは諦める様子はなく、その華奢(きゃしゃ)な体には全く似合わない斧を持ち上げた。


「……っ、ぐ……わ、私も……です、ここまで来て……諦めきれませんよ……家族の……ためにっ!」


 スズキさんも立ち上がった。二人共ここで終わる気はないようだ。


「……はぁ……困りましたね、何度も仰いますがね……これはあなた方の為に言っているのです。武器を持たない技術は単なる一芸に過ぎません。適性武器はそれらの力を格段に飛躍させ発動する媒介……それがなければ魔物になど到底敵いませんね。それでは警備にならないのです。ですから……」


 はぁ、しょうがないな。確か適性武器は生きてきた環境や性格にも依るとか言ってたっけ。


 俺は武器が積んであるところへ行って武器を漁る。何で俺がこんな事しなきゃいけないんだか。

 まぁでも諦めないと頑張ってるやつを知らんふりするほど、俺も腐っているつもりはない。


「? イシハラ君?」

「……? イシハラさん? どうされたのですかね? お呼びするまでお待ちください」


 武器を探しながら俺は秘書女に聞いてみる。


「なぁ、この世界に銃と盾はないのか?」

「…………え?……ございますが……そういえばイシハラさんはここより遥か進んだ文明の世界から召喚されたのですね。小火器はイシハラさんと同じ……文明の進んだ世界から来た異界人によりつい最近持ち込まれました。製作、量産を現在進めているところですね」

「つまりまだ一般にはあまり出回っていないのか?」

「はい、魔物に対抗する手段としては有用な武器になりえるのですが……異界文明を広めるのに反対の勢力の力もあって難航しておりますね。更に製作に必要な素材も中々入手できないものなので……」


 まぁその辺の事情はどうでもいい。


「ムセンは銃、スズキさんは盾だ。なんとなく。そのイメージが強い、それが適性武器とやらだろう」


 ムセンはパイロットスーツを着て宇宙航海をしてるんだから光線銃を使うイメージしか湧かない。SFには光線銃はつきものだし。

 スズキさんはなんとなくだ。


「………銃に盾……ですか……それは考えが及びませんでしたね」

「ムセン、お前光線銃持ってるだろう?」

「……え? イシハラさん……何故それを……はい、確かに航海の緊急事態のために渡されたものをスーツに格納してありますが……私、使用した事ありませんよ……?」

「いいから使ってみろ、ダメで元々だろう」

「……! はい、わかりました!」

「では、ワタクシは盾を持ってきますね」


--------------


 ムセンはスーツからまさにSFっぽい銃を取りだし構える。一体どうなってるんだあのスーツ、便利すぎるだろう。猫型ロボットか。

 スズキさんは用意された大きな木の盾を腕に通し、自分の身を守るように構える。


「では……試験を続けますねっ!」


 秘書女は再び鞭をムセンに振る。

 ムセンは傷の回復はできていないようで銃を構えたものの未だにフラついていて鞭をかわす事も難しそうだ。


「……っ!」

「ムセン君っ!!」


 辺りにまるで剣同士が(つば)競り合いをした後に互いを弾いたような金属音が響いた。

 鞭が人を叩くのとはまるで違う音に一瞬秘書女もムセンも困惑する。


「!」

「おぉ」


 その音の原因はスズキさんがムセンの前に飛び出した瞬間にただの木の盾が光輝き鞭を弾き返したものだった。よく見るとムセンとスズキさんを守るように透明っぽい球体のバリアみたいなのが盾から発生している。

 やっぱりな、スズキさんのその家族を守らんとする生きざまには盾が相応しい。武器が盾とはなんか矛盾している気もするが、気にしても仕方ない。


【スズ・キイチ・ロウ適性武器技術『大黒柱の盾』】

------------------------------------------

◇MEMO

・自身に適合した武器を使用する事により産み出された技術。自身の周囲に球体結界を張り攻撃から身を守る、結界内定員は二名。

------------------------------------------


「……ありがとうございます、スズさん! 私もっ!」


 ムセンは銃を構え、引き金を引いた。


「やぁぁっ!!」


 銃創から弾が発射される音が聞こえた。その後、室内には少しの静寂が訪れる。

 秘書女は発射時に反射的に目をつむったが、自身に何も起こっていない事に気づいたのか目を開いた。


「………何とも……ありませんね……外れたのですかね……?」

「あ、あれ?」


 全員が呆気に取られた表情で銃口に目を向けた。全員発砲の瞬間に目を瞑っているからだよ、ちゃんと魔法は発現している。俺は皆に指摘した。


「上だ上」

「「「!」」」


 銃口から放たれたレーザービームみたいなのが上空に静止し、光の塊となって燦々(さんさん)と輝いている。そしてそれは一気に俺達に降注いだ。


【ムセン・アイコム適性武器技術『サンシャイン・キュアライト』】

------------------------------------------

◇MEMO

・銃から回復作用のある光線を放つ技術(上限五人)。上空に放つ事で効果範囲内にいる者の同時回復もできる。

------------------------------------------


 光の粒みたいなのがまるで童話の星のような効果音を出してキラキラと舞い降りる。


「うわー、きれい。すごいねー、何か元気になってきたよ。あ、ムセンちゃんとすだれオジサンの傷が治っていってるよ?」


 シューズが目を輝かせながら無表情で言った。すだれオジサンて、もうちょっとマシな渾名をつけろ。『河童の川流れ』とかな。

 どうやらレーザービームで回復魔法を発射して全員を回復したらしい。中々やるじゃないかムセンも。


「……素晴らしいですね、遠隔で、しかもこの回復量……これならば第一線でも活躍できるでしょうね。スズ・キイチさんも技術も磨けば自身だけではなく…対象を守る盾として警備兵としてうってつけの技術となるでしょう。ムセンさん、スズ・キイチさん、御二人は第二次試験通過となります、おめでとうございますね」


「や……やった……」

「……はいっ! ありがとうございますっ! イシハラさんっ! やりましたっ! 貴方のおかげですっ!」


 一件落着か、いや、そういえば俺の番がまだだった。忘れてた。ふむ、自分では何が適性なのか全く想像もできないな。武器なんか扱った事ほぼ無いし。まぁ何とかなるか。


 アマクダリが何かよくわからない表情で俺の事を見つめていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ