百八.女騎士VS女夢魔
「な……な……な………何だ!? あの破廉恥な格好は!?」
だもん騎士は上空から現れたこの町の住民を操る親玉の変態魔物女を見てわなわな震えながら叫んだ。耳が紅くなっている。
「何恥ずかしがってるんだ? 同性だろうに」
「そっ……そんな問題ではない! ふしだらな格好をして衆目の中に出るなんて……恥というものを知らないのか!? ナツイ! 見ちゃダメ! あんなの目に悪いもん!」
「落ち着け」
まぁ確かにあれは言われてもしょうがない。
ほとんど体に黒い線が入っただけにしか見えない、YO SAY達が夏を刺激する生足魅惑のなんとやら。
「あらら……ひどい言われようやん……お姉さん傷ついちゃったなぁ……ウチはキレイな女の子大好きやのに……ま、ええやん。貴女達も後で吸いとってあげるやん?」
変態女はそう言ってこっちをじっと見て牙を見せながら舌なめずりをする。なんか俺の方を凝視しているような気がする。
なるほど、ヤンキーがケンカを売る時のあれだ。ガンつけだな? 上等だ。俺もメンチをきった。
「そんなわけないアル……どちらかというと獲物を選定して吟味している眼ネ……けど、あの魔物は何なのアルか!? あんなに流暢に人語を喋る魔物なんか初めて見たネ!」
「魔王直属部隊……魔物は上位の役職に就いたものほど人語を流暢に操るのだ。それに応じ、姿形も人間に近づいていく……つまり……」
結構大ボス級のやつが出てきたというわけか。
なんて面倒くさい、今回は魔王軍とやらと関わり合いにならないと思ったのに。今回はというか永遠に関わりたくはないけど。
まぁ旅をしている以上そういうわけにはいかないだろう。
「ウチもまさかこんなとこで噂のいしはら君に会えるとは思うてへんかったやん、この町には単なる『実験』のために来とったんよ。けどウチは会えて嬉しいやん?」
「実験?」
「まぁ細かい事は気にせんといてな。いしはら君、お姉さんとええ事しぃひん……? せっかく会うたんやし……ウチも君に興味あるんよ。そしたらいしはら君だけは生かしといてあげるやん?」
変態女はそう言っていやらしく笑う。ええ事って何だ?
もしかしたら満漢全席的な食肉の宴かもしれない。
「絶対違うあるネ! 食べ物の事しか頭にないアルか!?」
「じゃあ何だ? お前はわかるのか?」
「え……………………しっ、知らないネ!! 女子に何を聞いてるアルか!」
「まぁどうでもいい。だったらそのええ事とやらをしてやるから住民を元に戻せ。そうしないとイベントが終わらん」
「んふふ……ごめんねぇ? それはできない相談かなぁ、これはウチの『使命』のために必要な事やん」
「だったら交渉の余地はないな」
俺はライトセイバーを構え、変態女と対峙する。
すると、その間にだもん騎士が蒼剣をかまえながら割り込んだ。
「すまない、ナツイ。私にやらせてほしい……数々の失態……あの破廉恥魔物を退治する事で埋め合わせさせてくれ」
だもん騎士はそう言って魔物を睨む。ふむ、代わりにやってくれるのならば是非もないが。
「あれ~? いしはら君やらないん? んー……まぁええかぁ。たまにはデザートのあとにメインディッシュでも。見たところ……生真面目でうぶな生娘ちゃんやん、お姉さんが大人のお遊戯……その美味しそうな身体に教えてあげるやんねぇ」
「……ひ……品性さえも下劣な魔物め……同性だからと言って……いや、同性だからこそ許せん!! それ以上ナツイを誘惑しようものなら性根と共に命さえも叩っ斬る!」
何故そこに俺の名前が出てくる、今俺は関係ないだろ。
【属性技術剣奥義『水翔波斬』】
「はあっ!!」
だもん騎士は水を付与した剣を上空の変態に向かって振る。波状になった水の斬撃が変態に凄いスピードで襲いかかった。
しかし、変態は何事も無かったかのように難なくそれを避ける。
「んふふ、それだけ?」
「まだまだっ!!」
目に止まらぬ速さでだもん騎士は更に水波を次々繰り出す。
上空には天地が逆さになったかのように、世界が重力を無視したかのように高波が空に向かって波打った。
しかし変態は澄ました顔でそれらを優雅に避ける。まるで波打ち際でさざ波を軽く躱すかのように。
「いしはら君、女の子に変態なんて呼び方するもんやあらへんよ? お姉さん……そんなの………感じちゃうやん……」
変態は変態らしい事を切なげな表情をして言った。
「それよりもぉ……ただ水を飛ばすだけの技術なん? お姉さん少しがっかりしちゃったなぁ……はやく濡らせてほしいやん……」
変態は変態によるところの変態みたいな感じで指を咥え、太ももに手をはさみモジモジしている。
だもん騎士がそれを見て苦虫を噛み潰したような顔をする。
「くっ………………」
しかし、何かを待っていたかのように一転、笑った。
「……ふっ、ならば存分に濡れるがいい」
「!」
だもん騎士が放ち、上空に舞っていた水飛沫がまるで雨のように変態に降り注ぐ。
変態は避けたはずの波水飛沫に襲われたのだ。
「水は降り注ぐものだ、見舞われろ」
【属性技術剣奥義『水翔雨斬』】
------------------------------------------
・降注ぐ水を斬撃と化す技術、条件が揃えば雨を斬撃と化すことも可能
------------------------------------------
ザクザクザクザクザクザクザクザクザク!!
変態はスコールのように降り注ぐ飛沫の波に呑まれる。斬撃に変化した水がおおよそ雨とは思えないような音を響かせた。
「やったアル! 凄いネアクア!」
骨っ娘がそれを見て歓喜の声をあげる。それはフラグだという事を知らずに。
そして柄にもなく真面目に戦闘の実況をしていた俺は疲労に見舞われた。
「……綺麗な顔に綺麗な剣技……綺麗な技術……指南書みたいに型の決まったお手本みたいな女の子やねぇ……ほんま、食べ頃やん」
【女夢魔技術『結界』】
------------------------------------------
・職業【サキュバス】特有の技術。結界を張り中の空間を外と隔離する、不可視にする事も可能。定員は二名
------------------------------------------
変態はなんらかの結界的な技術でだもん騎士の攻撃を無傷で凌いでいた。
「!!」
「なっ……む……無傷ネ……あれが……魔王軍の魔物……アルか……」
それを見てだもん騎士と骨っ娘はなんか驚いていた。
「……イシハラ様……全部声に出して実況するのはいいアルけど……なんか段々適当になってきてるネ……」




