百五.秘密の時間Ⅱ
「じゃあな、シューズの情報収集よろしくたのんだ」
「ぴぃっ! 御主人様の命を真っ当するっぴよ! 頑張るっぴ!」
「「…………」」
荷造りを終え、シューズ追い隊の面々は出発の準備ができたようだ。
散々抗議していたムセンとですわ騎士もシューズのためと納得したのか満面の笑みと悲壮な決意をもって馬車に乗り込む。
「……眉をひそめて口をとがらせた顔のどこをどう見たら満面の笑みに見えるんですの……わたくしは納得していませんことよ」
「仕方ないだろう、序列的にだもん騎士よりお前の方が強いんだろ?だったらムセンと焼き鳥を護衛するのはお前しかいない。二人を頼んだ」
「…………そっ……そう言うのでしたら……仕方ないですわねっ! 確かにわたくしに任せれば上手くいきますわよ! わかりましたわ! 貴方はちゃんとすぐに問題を片付けて追いつくんですのよっ!?」
「場合による」
「………………」
ムセンは相変わらず黙ったままだ。
「シューズにもし会った時に引き留められるのはお前しかいないんだ、何か問題か?」
「………いえ、異論はもうないんです。ただ……イシハラさん、何故簡単にこちらへ残ると決めたのですか? イシハラさんでしたら……『魔物退治なんてマジメンディー』って言いそうな気がしたのですが…」
「秘密」
実は俺自身少し思うところありで魔物退治してみようかなんて柄にもなく思ってしまったのだ。
別に町を救いたいとか、そういった気持ちは微塵もない。ただ、なんとなく、だ。
「………わかりました、シューズさんのことはこちらにお任せください。必ず情報を掴んでみせます! イシハラさんもどうかお気をつけて………あと………一つよろしいですか? こちらに……」
ムセンが荷車の後ろの死角になっている部分に俺を引き寄せる。
「なんだ?」
「えっと……その……元気と力を分けてほしいかなって……ほ、ほら……明日にはどうなるかわからない世界じゃないですか…………ですから……その……」
ムセンは顔を赤らめてブツブツ言っている。何いってんだこいつ?
「ほ……ほらっ……今まで人工呼吸とかっ……そういったことをしたじゃないですか……それで元気になれたじゃないですかっ……だから……あのっ……また……」
「なんだ、そういう事か。もっとはっきり言え」
俺はムセンを引き寄せた。
「えっ!? んむ」
………
……………
…………………
----------------------------
「さぁ、行きますわよ……………ってムセン・アイコム……一体何ですのその今にも溶けそうな顔は……真っ赤ですし……熱でもあるんではないですの?」
「え………えへへへへへ………別ににゃんでもにゃいです………えへへへへへへへ………」
「………何なんですの……」
「ぴぃっ! じゃあ出発するっぴよ!」
ムセン達は町を出発した。
こうして俺達はムセン達と一旦別れ、町の問題を解決する事にした。
それにしてもまったく、女というやつはあれだけで元気になれるのだから不思議でならない。
俺はそろそろ地球の料理が恋しくなってきたところだというのに。炒飯をたらふく食べたい、唐揚げもセットだ。
そこで俺は重大な過ちを犯した事に気づいた。
天才料理人を見送ってしまったことだ。
「……ナツイ、どうしたの? なにか……落ち込んだような顔をしているけど……まさか……あの子と離れるのが寂しいとか……?」
「 」
かつてないほどの選択ミス。
このままではこれからの食事はファンタジー世界特有の味気の無いスープとか塩気しかないパンとか焼いただけの肉だけとか囚人みたいな食事一辺倒なってしまう。
俺は気力が無くなり、だらんと項垂れた。
「そっ、そんなに寂しいのっ!? 私に告白したくせにどういう事なの!! 今度こそちゃんと説明してもらうまで逃がさないもんっ!」
「 」
「………魔物退治するんじゃないアル……? ぼく凄く不安ネ……」




