八十五.愛米Ⅱ
【真勇者技術『シャイニングブレイズセイバー』】
【属性魔導師炎検定一級技術『インフェルノ』】
【槍術士一級技術『ドラコンブレイク』】
【弓術士一級技術『空割矢』】
【召喚士一級技術『戦乙女召喚』】
【武闘家一級技術『空間崩壊』】
【聖騎士技術『アレキサンドライト』】
憧れの職業とやらになったクソガキどもは皆各々の技術を使う。
広い草原のマフィンフィールドとやらがまるで戦場と化し、炎やら雷やら矢やら光やら何やらで物凄い事になった。
「こらーっ! やめなさいっ! 人に『技術』を向けるんじゃありませんっ!」
「いやいや!? ルメットさんっ!! 注意の仕方が軽くありませんかっ!? イタズラを叱るみたいに言っている場合じゃないですよ!イシハラさんは思い切り攻撃されてるんですよっ!?」
「え? あぁー、大丈夫大丈夫っ! 悪ガキ共だけど本気で人を殺そうとするほどの悪人じゃないって! ガキのほんのイタズラでしょ!」
「そんなレベルの攻撃の仕方じゃないですよ! すぐに止めさせてくださいっ!!」
「ナツイ様っ!!」
エメラルドが俺の名を叫ぶ。
「何だ?」
「「きゃあっ!?」」
呼ばれたから後ろから返事をしたらビックリされた。
「イシハラさんっ! ご無事なんですかっ!? いつの間に後ろに……」
「何が? あいつらのお遊びの事か? お遊びに付き合う義理はないからな、面倒だから退避したんだ」
ガキ共は舞う土煙の中をまだ攻撃している。憧れの職業とやらに就ってテンションが上がっているのだろう。
俺がもうそこにいない事に気づいていない。
「あははっ! イシハラって結構すごいんだね! 悪ガキのイタズラを意にも介してないなんて!」
「所詮ごっこ遊びみたいなものだからな。いくら戦闘技術を使えるようになったからってそれだけで戦闘のプロになれるわけじゃない」
どうやらこの空間では記録された記憶を基にしてその通りに技術などが発動されているようだ。
ガキ共はそれをただ単に使っているだけ。
型通りに動きすぎてて応用力がない、記憶に体が引っ張られてる感じに動いているだけだ。
つまりいくら技術が凄かろうと使い手に依る、という事だな。
「あ………ぁ……ぁのぉ…………」
「ん?」
何か大人しそうな中学生くらいの女子生徒が俺に話しかけてきた。
誰だこいつ?
「あれ? どうしたのミント? イシハラに話があるの? イシハラ、この子はウチの生徒で【ミント・カルーディア】。『煎じ行商』っていう職業で一財を成した凄い貴族の娘さんなのよ! 凄いでしょ!?」
「む……昔の話です……今は……もぅ……」
「それで? 俺に何か話があるのか?」
「ぇっとぉ……前になにかの本で読んだ事がぁるんです………一瞬で遠くの場所に移動できる『技術』を使える職業のこと……」
ミントとやらは俺の欲する情報を口にした。思わぬところから出てきたな。
「何の職業だ? 教えてくれ」
俺は真剣な眼差しでミントとやらを見つめた。
「ぅぅ……み……見つめないでほしいです……ぇ……ぇっと確か…」
「はっはっはっ! 思い知ったかよ!!」
「……………お、おい! あのオッサンいないぞ!? チュールズ!」
「なに!? どこ逃げやがった!?………あ、あそこだ!! くそっ!またルメット先生の近くにっ……!!」
悪ガキどもは俺にようやく気づいて全員向き直る。そして、一斉に俺に向かい攻撃を仕掛けてきた。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
【一流警備兵技術『安全領域改【矢印板(Uターン表示)】』】
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・就職した事により進化したイシハラナツイのユニークスキル。カラーコーンの前に5方向の方向指示板(上下左右Uターン)が設置され、受けた攻撃をその方向へ誘導する。
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クソガキどもの遠距離攻撃(炎とか色々)はUターン表示の方向指示板によりUターンしてクソガキどもの方に戻っていった。
「はぁっ!? 何だっ!? 技が跳ね返って……」
避ける技術は持っているだろうが、そこは戦闘経験のないクソガキども。戻ってきた攻撃にすぐには反応できずに硬直したまま全ての攻撃に襲われた。
ドォォーンッ!!
「「「「「ぎゃああああああっ!!?」」」」」
轟音と衝撃がもの凄い事になっている。クソガキどもの悲鳴も掻き消されるぐらい。
あいつら死んだんじゃないか? まぁ、そこはファンタジー世界といえど一応ショップなんだから死人が出ないよう安全策はとってあるだろうから大丈夫か。
俺はミントとやらを抱き寄せる。危うくミントとやらも巻き込まれるところだったぞまったく。
「ふむっ……!? ぅぅぅぅ……」
「それで? さっきの話の続きだが何の職業だ?」
「ぇ……ぇっと……本で見たのは……【魔女】とぃぅ職業でした……その魔女は時間や空間を自在に操った……と……そぅ書いてぁりました……」
ふむ、魔女。
確かに魔女ならそんな事ができそうなイメージがある。この世界では魔女って職業扱いなのか。
よし、決定。
魔女を家で雇う事にしよう、そうと決まればもうこんな場所に用はない。
「よし、魔女探しに行こう」
「ちょっと色々待ってもらっていいですかっ!? 突っ込みたいところだらけなんですけど!! まずイシハラさんのその技術っ! 攻撃を跳ね返しましたよっ!?」
ムセンから突っ込みがはいる。
そんな事言われても知らんしどうでもいい。正式に警備兵に就いたから勝手に技術も進化したとかどうせそんなんだろう。
「がはっ……はぁっ……はぁっ……くそっ……!」
跳ね返った自分たちの技術で瀕死状態になった金色キノコと何人かの取り巻き達がよろよろと立ち上がる。既に戦闘不能になったものもいるようだ。
「はぁっ……はぁっ……これならどうだっ!!」
【真勇者技術『ブレイブソウルブレイバー』】
【武闘家一級技術『天地無用』】
【聖騎士技術『エレキメタルライト』】
残ったクソガキどもがまた技術を使う。
大地は裂け、無数の落雷が縦横無尽に併り、巨大な光の剣が俺に一斉に襲いかかった。避けるのが面倒になった俺は動かない事にした。
俺は技術に呑み込まれた、鼓膜が揺れるような音がうるさい。
「ナツイ様っ!!」
「はっはっはっ! どうだ! 今度こそ直撃した……」
【石原鳴月維天性技術『流風の極意』(認識発動)】
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・新たに修得したイシハラナツイの性格による天性技術。身体に受けたダメージを身体の外へ逃がす。これによりイシハラナツイの意識下にて身体に起こるダメージは全てが無効になる。
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「今なにかしたか?」
言えた、言ってみたいセリフランキング20位くらいのやつ。
ふむ、何気に使ってみたがこれは中々便利な技術。痛いの痛いのとんでけーってやれば傷が一瞬で治る。別に痛くはなかったけど。
「な……な……はあっ?! 何だこのオッサン!?」
「ふむむっ……ふむっ」
ミントとやらは顔を真っ赤にしながら苦しそうにしているが、暴れたりはせず腕の中で大人しくしている。このカラーコーン結界内にいないとこいつがケガをしてしまうからな。もう少し大人しくしててもらおう。
俺はキノコ'sに忠告する。
「お前ら同級生の女子を巻き込むんじゃない、危うくケガするところだ」
「ぅ……うるせえっ!!! 説教すんじゃねえ!! いいんだよっ!そいつはもう落ちこぼれ貴族だから平民と変わらねーんだっ! 実験台でも上級貴族の役に立てるんだったら本望だろっ!」
「…………」
まったく、こいつらも勇者と同じような事を言っている。
ウルベリオン王がせっかく職業平等政策を打ち出したのに何も変わってないな。
まぁいいか、それよりも面倒だからさっさとキノコ達を片付けよ。
何言ってもケンカ売ってきそうなイキリキノコだし一発お灸でも据えてやるか。
俺はライトセイバーを取りだし振った。
【一流警備兵技術『絶・対敵無力化』】
バサッ
「………えっ? うわっ!? 何だっ!? 服が真っ二つに……!!」
お馴染みの技術でキノコ達の着ていた服を真っ二つにして半裸にした後。
【警備兵+十二騎士技術『誘導の光』】
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・警備兵と騎士の融合技術。ライトセイバーの放つ光を見た者を数分の間、従わせる。
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新しい技術を使ってみた。
ライトセイバーは赤色から白色に変わり、神々しいまでの光を室内に輝かせた。
それを見た金色キノコと取り巻き達が半裸で正座し、大人しくなった。
「お前ら、そのまま外に行って頭冷やしてこい」
「「「「「はい、かしこまりました……」」」」」
キノコ達はパンツ一丁で行儀良く外に走っていった。
<きゃーーっ!! 変態っ!!!>
<あなた達気でも狂ったの!? 学院の貴族クラスよね!?>
<待ちなさいっ!! そのまま外へ行くの!? 問題になるわよっ!?>
扉の向こうから受付嬢の悲鳴が聞こえる、きっと嫌なものでも見たのだろう。
「ぁ……ぁの………」
「馬鹿な同級生がいると苦労するな。あいつらが馬鹿な事をしたら『ちょっと男子ー! 先生に言い付けるよー!』とか言って大人しくさせてやればいい、見たところルメットには従うようだし少しは大人しくなるだろう」
「ぇ……ぇっと……」
「それに下らない事を気にするな、お前はお前だ。落ちこぼれだろうが貴族だろうが関係ない。お前がいてくれて良かった」
ミントとやらがいてくれたおかげでテレポートの情報が得られたからな。手間がかからなくて済んだ。
そうじゃなきゃ思いつく限りの職業に変身して片っぱしから技術を試さなきゃならないところだった。
するとミントとやらは頬を染めて恥ずかしそうに言った。
「ぁぅぅ……そ……そんな事言われたの……初めてです……でも……嬉しいです……ナ……ナツイさん……と呼ばせてもらってもよろしぃでしょうか……?」
「?」
何かミントとやらの様子が変だな。
あ、そっか。
誘導の光をこいつも見てしまって俺に従順になってしまっているのか。失敗失敗、女子生徒にそんな事をしたら事案事項になりかねない。
使う場所とタイミングはよく考えないとな。
「イシハラさん……鈍感で無頓着にも程があります……」
「そうでございますね……続々とナツイ様をお慕いする女性が増えていくのは由々しき事態、と感じざるをえません……」
ムセンとエメラルドはジト目でわけわかんない事を言っていた。




