7話目 勇者
手のひらサイズの50体のサーチデーモン軍団はモンスターを見つけると石化の眼光で次々に石化させていく
今のところモンスターの石化率は100%で歩きながら遭遇してきた20体程のモンスターは石化に抵抗出来ていない
アイはアイテムボックスからでかいハンマーを出し、
石化したモンスターを次々に砕いて経験値に変えて行くが、一度もレベルアップをしない。その内にその光景が只の虐殺に見えてくる。無意味なのだ命を奪う行為が。
「石化したモンスターを砕く意味ってなんですか?」
「肩慣らしです、奴らと戦う時に体が冷えているのは致命的ですから」
ただ虐殺を楽しんでいるのかと思ったら意外にアスリート的な動機だった
「アイテムは回収しないんですか?」
「はい」
「来る途中で会ったモンスターを結構解体してましたよね、解体スキルを上げていたんですか?」
「あれは貴方を騙してここまで付いて来て貰う為の演技です」
ヴー
ヴー
別動隊のサーチデーモン150体が全滅させられました
「石化は無効か、サーチデーモンは無意味だから召喚解除!代わりにさっきティムした尊大なる悪魔を召喚!」
魔方陣が展開して
尊大なる悪魔が現れた
「わが主よ、如何いたしました」
「尖兵として先行しこの先にいる人間2体を削れ、お前のHPが40%を切ったら召喚を自動解除する、剣を持っている方にはなるべく近づくな、封印解除!完全回復!全能力強化!」
アイは尊大なる悪魔の封印を解除し、全快して魔法で全ての能力を超強化した
尊大なる悪魔はアイに従属し召喚獣に登録されたことにより悪魔としての階級が1段階引き上げられ、その上に強化魔法まで掛けられたのだ。
「相手は神ですか?」
「勇者だ、貴様らが苦手とする人種だよ」
「ならば全力で参りましょう、倒しても構いませんよね」
「自惚れるな雑魚が、敵は4人いる、お前にはその内の人間2人のみを集中的に削れと命令しているのだ、残りの2人は無視していい、奴らにお前の経験値をくれてやるなよ、たかが尖兵のお前には何も期待していない、捨て駒としての役割をこなせ」
「分かりました役割をこなしましょう」
「勇者パーティーの現在座標と進行予測マップをインプット、対象は、尊大なる悪魔」
アイは目標地点のイメージをインプットするスキルを使った
尊大なる悪魔は命令された猟犬のように全速力でインプットされた攻撃目標へと走って行った
「なんか会話がこわいっすね、魔王みたいで」
「召喚獣に対してはだいたいあんなものです」
俺達は普通の速度で、現在歩いて移動中の勇者パーティーがいると思われる予測地点へと進んで行く
そのまま何事もなく5分ほど歩いていた
ヴー
ヴー
尊大な悪魔のHPが残り40%を下回りました召喚を自動解除します
「予想より早いな」
「アイさん反応が近いですよ、俺の気配探知に何か引っ掛かりました」「分かっています、私も確認できています、見えて来ましたね」
4人いるな
男2人に女2人のパーティーだ
大剣を持った男と弓を装備したエルフの女が先頭を歩いている、男は20才程度で長身だ、金色の髪をしている
その隣にいる弓エルフは髪の色を茶色見がかったやや赤い髪色に染めているようだ健康美的なエルフで、表情が明るく楽しそうに男と会話をしている
後ろを歩くのは槍を装備した男と木の棒を持った金色の髪の美しいエルフだ、この二人は会話をせずに黙々と歩いている
エルフ連れ勇者のリア充パーティーというやつだろうか?
金髪長身の大剣男と共に先頭を並んで歩く弓使いの赤髪エルフが俺達に気が付いた
彼らは俺達が人間の男女2人であることを確認すると緊張が解けたのか無警戒にこちらへ歩いて来る
「こんにちは」
俺は先頭を歩く金髪長身の大剣男に挨拶をした
「こんにちは」相手も挨拶を返す、その仕草は完全に俺が元いた世界のものだった
何となく会釈をし合うその懐かしい仕草に俺はとても良い印象を受けた
「勇者さんですか?」
アイが長身の金髪大剣男に話し掛けた
「はいそうです、ザイン王国が公式に認定した勇者です」
「魔王軍から正式に暗殺依頼が出ているのはご存知ですか?」
「いいえ、ただザイン王国で魔王を討伐するために転移召喚されたと説明を受けましたし、そのために勇者として活動してますから、当然暗殺を企てる輩も出てくるでしょうね」
「なぜ魔王を討伐するのですか?」
「なぜってそれがオーソドックスなプレイスタイルだからです、学制服着てますよね、貴方も異世界から来たのですか?ザイン王国と魔王軍、どちら側でプレイしているのでしょうか?」
金髪大剣使いの勇者は全く動揺せずに確信を付いた質問をした
「私は魔王軍プレイです、転移召喚されて直ぐにザイン王国と敵対したので敵の魔王軍に入りましたね」
アイは悪びれもせずに自分が魔王軍側であることをさらりと暴露した
「あの不味い飯ですか・・・あれで敵対したんですか?でも魔王軍に入ったら周り中魔物だらけで人間がいないのでは?」
「私は転移召喚されて直ぐに魔王軍を都合の良い手駒として利用して、ザイン王を倒した後に魔王を倒して自分が好きなように世界を支配したら良いんじゃないかって考えたんです、ザイン王、ムカつきますからね」
「魔王プレイでは無く、魔王裏切りプレイですね、で、用件は私の魔王軍への勧誘ですか?」
「勧誘?その気は無かったのですが、一応聞いておきます仲間になる気はあります?」
「いいえ、私は王道的なプレイスタイルで勇者プレイしたいですから」
「予想通りの性格ですね、では戦闘を開始しましょう」
「受けて立ちます」
彼らの話を聞いていると何が正義何だか分からなくなってきた、彼らはこの世界がゲームみたいなもので単にプレイスタイルが違っているというぐらいの感覚で考えているらしい
そして戦闘が開始された
先に動いたのは勇者の側にいるエルフ達だった
エルフのゲス女共は俺の外見が良いことに気が付くと発情したオークみたいに俺の方へ向かって来た、もし戦いに負けたら何をされるか分からない
勇者達は異世界人のアイをチートスキル持ちの強敵と判断して最初から全力で二人がかりで切り掛かって行く
槍使いの男が槍の長さを生かして一方的に連続突きを放ちアイを攻撃している、
長身金髪の大剣男がアイの背後に回り込み挟み撃ちをする、
男の装備してる剣には見覚えがある・・・あれは聖剣エクスカリバーだ
俺が飲食店を経営し2号店まで出店していた間に何が有ったのだろう、聖剣エクスカリバーはかなり強化されているように見える、最初は別の剣かと思ったぐらいに形状が変化しているが全体的なフォルムはエクスカリバーのそれだ
「よそ見をしてると乱暴しちゃうよー」
美しい金髪の棒エルフがニタニタと邪悪な欲望が込められた最悪な笑みを浮かべて、俺を棒で殴打しようと振りかぶっていた、
何かヤバい、この木の棒は何かヤバいチートの武器だ、
俺は本能的にそう感じて身体を回転させてかわす、
コン
0.000001のダメージを受けました
コン
0.000001のダメージを受けました
コン
0.000001のダメージを受けました
コン・・・
攻撃を全くかわすことが出来ない、身体から力が抜け、魔法を完全に封じられている!
なぜ攻撃をかわせ無いんだ!
俺は絶望しパニック状態に陥る
「ハアッハアッ、どうしたのーっ、抵抗しないのーっ、」
美しい金髪の棒エルフは息を荒らげて興奮している
「このゲス女エルフがっ!」
棒エルフの特殊スキルと連続殴打で俺は身動きがとれなくなった
それを確認したのか健康美赤髪弓エルフが嫌らしい笑みを浮かべながら近づいて来る
最悪だ!
「傷つけ無いで生け捕りにしてやる」
弓エルフは弓をしまうと最悪なことを口走り俺を捕まえようと歩いて来る
魔法は完全に封じ込められていて、何かのスキル効果で剣を抜くだけの筋力すら無い
美しい金髪のエルフがゲスな笑いを浮かべながら力の入らなくなった俺を力ずくで押し倒して来た
「くっ、何て力だ、化け物め!」
「その化け物に今から何をされちゃうのかそうぞうしてごらん」
美しい金髪棒エルフが醜い欲望の籠った言葉を投げ掛けてきた
「早く済ませて代われよ」
赤髪健康美、弓エルフが気分が悪くなるような最悪な提案をしている
奥の手を使うか、これはやりたく無かったあまりにも非人道的で卑劣な手段、このスキルを手に入れてから絶対に使わないと心に決めていた、その封印を解きこのゲス女共に罪の重さを思い知らせる
まずスキルの発動条件を満たす
鑑定
名前エミー
金髪美少女ドラゴンスレイヤー
全能力100倍
魔力 356億
筋力102億
速さ 68億
外見 1031万
ほのぼの鈍器殴打
攻撃されていると認識出来ない攻撃力で殴打をする、殴打した相手の魔力を完全に封印し、体力に基づく攻撃能力も完全に奪う
鑑定
名前わすれた
名前を忘れられた弓使いのエルフ
髪を赤く染めた美少女ドラゴンスレイヤー全能力100倍
魔力 102億
筋力61億
速さ 268億
外見 825万
必中の弓矢
弓矢攻撃が100%命中する
風魔法
弓攻撃強化
弓速度強化
勇者サイドが使用した何らかのチートスキルの効果か?
このゲス女エルフ共、軽く100億越えの戦闘能力がさらに100倍になるとんでもない戦闘能力してやがるが問題ねえ、1人は変わった名前だが、単純に、わすれたという平仮名の名前の奴だ、スキルの発動条件は満たしている
エミーとわすれたに良縁スキル発動!
「急に気分が良くなってきたわ」
「何だ気分が、体調も良くなってきたぞ」
そしてハグ
「・・・」
「・・・」
エミーの好感度が1兆上がりました
わすれたの好感度が1兆上がりました
エルフ2名を従属状態にしました
従属状態
好感度が上限値を越えて本人が自ら従属している
外見3000万のステータスに良縁スキルとハグを加えると、異性なら簡単に従属状態に出来る、 スキルで人の心を操作するのはプレイスタイに合わないから普段はやらないが勝つか負けるかギリギリになったら使用は躊躇わない
「おいエルフ達が変なスキルで盗られたぞ」
槍使いの男が気が付いた
「貴様、エルフ好きか!エルフが好きなのか!許さんぞ!」
長身の金髪エクスカリバーはエルフが好きらしい
「隙だらけですね」
ザシュ
ザシュ
バタバタ
男二人はエルフに気が散っている隙をつかれてアイに斬殺された
殺りやがった
こいつ、ついに人間殺りやがった・・・
この人殺しがっ!
俺の中でアイへの怒りが爆発した
「何やってんだーっ!相手人間だぞー!」俺はアイを怒鳴りつけた!
「スキル使ってエルフとイチャイチャですか?」
「それどころじゃないだろ!」
「今ならギリギリで蘇生魔法が間に合いますねぇ」
「早く蘇生しろ!」
「ハグ」
「何!」
「蘇生はハグと引き換えです、早くこっちに来ないと死んじゃいますねぇー助かる命が貴方の性でー」
「くっ卑劣な奴め・・・」
俺はアイをハグした、人の命には変えられない
「長めでお願いしますよ」ぎゅぎゅーっ
アイは全く容赦の無いハグをしてきた、アイの欲望が強制的に体の中に入って来るようなハグだった
俺は少し嬉しくなった自分を恥じた
2のエルフも寄って来たのでハグした
胸の感触が気持ち良いと感じた自分を恥じた
そして女3人ゲットー!と心の中で感じてしまった自分を恥じた
そうこうしている内に時間が経過してしまい蘇生にちょっと遅れてしまったので2人の勇者は助からなかった・・・
死を悼み静かに祈りを捧げた
俺は聖剣エクスカリバーを回収した、聖剣エクスカリバーは勇者のチートスキルによって超強化されていた、有りがたく貰っておこう、アイは勇者達からその他の身ぐるみを全てと金全部をアイテムボックスに入れ、勇者二人の死体もアイテムボックスに入れ回収していた
「私達パーティー壊滅して行く場所無いんですが・・・」
従属したエルフ2人は俺に付いて来た
「俺はもう宿に帰るよ、依頼はこの場合失敗した扱いになるのかな」
「偽の依頼を出して情報収集してたのは私だけど結果的に、発見した行方不明者2人が同行していて、勇者二人の死体もアイテムボックスに回収したからギルドには依頼が成功したと伝えておきます、勇者2人の死体を持って行けば魔王も納得するでしょう、元々私が魔王から依頼された暗殺ターゲットは大剣と槍の勇者2名でしたから」
アイは魔王軍の暗殺者だったのか・・・
ダンジョンから無事に帰還すると、既に夜だった
俺達は閉店時間が迫る定食屋で飯を食い、高級宿に止まり4人で洗浄魔法を使用し、ベッドに入り、朝起きると、昨日の記憶がないが
女3人の好感度が一晩で100兆上がったのを何となく覚えていた
彼女らは満足感に満ちた寝顔をしている
自分のステータスを見ると賢者と書かれていた、新しい魔法でも使えるのだろうか?全く謎である
俺は幸せそうに眠る彼女らを起こさないようにそっと高級宿を出た
急激な環境変化にストレスを感じて怖くなったので冒険者ギルドに行って落ち着くことにした
冒険者ギルドの受付
「何か良いことありました?」
普段は仕事以外の話しは一切しない生真面目なギルドの女職員が突然仕事以外の話をしてきた
「いえ別に・・・」
「とても幸せそうな顔をしてますよ」
・・・こいつ気付く女だ
こういうことに対してだけは勘の鋭いセクハラスケベ女だな・・・などと考えてしまった