6話 平手政秀
元服の翌日。
信長は朝目覚めて色々確認をした。
(実は本能寺で死んだ訳では無く、若い今の自分が死ぬまでの夢を見ていただけ……うむ、無理があるな)
信長には間違い無く死んだ記憶も1億年後の記憶があった。
(2回も経験してしまったあの本能寺での痛みや苦しみが夢なハズが無いか。1億年後から帰還する方がムチャクチャじゃが、全ての記憶が生々し過ぎる。……やはりあれは事実だったのだと判断するしか無いのか)
信長は、現在の身体や状況確認に奔走した。
本能寺の変5年前に転生した時と違い、36+5年ぶりの若々しい肉体である。
人間50年の時代で49歳で死んだ身としては、尽きぬ体力に切れ味鋭い動きをする身体。
元服終了後、歩こうと思って転倒したのは49歳の感覚に12歳の肉体が過剰反応した結果であった。
「足が痺れたか? ぬははははっ!」
そう笑う信秀を他所に信長は驚愕、いや感動していた。
若い肉体の輝きとは、これ程の物だったのかと。
(転生など知らない1回目の人生を無為に過ごしたとは思わぬが、それでも若さという2度と(2度目だが)手に入らぬ時間を無駄にすごす訳にはいかぬな)
そう固く誓うのであった。
それからは走る、刀や槍を振るう、弓を引き絞る、泳ぐ、その他、それこそ箸の使い方に至るまで、全ての所作において感覚の矯正を行った。
年齢を重ねても身体の鍛錬は怠らなかったが、それでも年と共に衰えはあった。
そのわずかなズレの矯正には1ヶ月掛かった。
しかし、掛かった時間は決して無駄にはならず、49歳の老練な頭脳と相まって、凄まじい身体能力を手に入れた。
その肉体は、何度も戦場から生還して来た歴戦の兵をも容易く鮮やかに組み伏せる達人そのモノであった。
まさに武辺者と言った動きに悪童仲間は仰天した。
何故なら元服から1か月間、信長は色々ぎこち無く、勢いあまって転んだりで頼り無い大将だった。
「大将は元服しておかしくなった」
そんな噂がそこかしこで聞こえていた。
なのに今日は、急に全く無駄の無い動きで大人を打ち倒してしまい、余りの変貌振りに、腰を抜かす者まで現れた。
信長は信長で『ようやく感覚と肉体の同期を済ます事が出来た』と一息ついた。
その、余りにも堂に入った佇まいは悪童仲間からすれば後光が見えるかの様であった。
また、情報集めにも精をだした。
記憶の修正の為である。
何せ36+5年振りなので勘違いや忘れていた事、当時は気づかなかった事が山程出て来たが、『うつけた』行動は当時とかわらず行った。
それには理由があるからだ。
まず1つ目。
昨日までの自分が『うつけ者』だったのに今日いきなり改めては不自然過ぎる事。
2つ目。
後に重要な戦力として必要となる悪童仲間との縁を切らさぬ事。
3つ目。
敵対者を炙り出して予定通り裏切らせる為である。
特に柴田勝家は1度裏切らせてから屈服させないと心から従いそうに無い、との判断である。
それに、裏切る経験をしない勝家が前世と同じ活躍をしてくれるか解らなかった。
(あ奴は裏切ったからこそ、ワシを理解した気がする)
歴史を変えるとは言え、経験したはずの事をさせないのは、それはもう柴田勝家と言う名の別人になる様な気がしたのである。
その影響で、より良くなるか悪くなるか想像出来ないが、いずれは未経験の事をさせるにしても、それは今では無い。
(とりあえずは予定通り、弟と共に裏切ってもらおう)
だが今は早急に対処せねばならない人物がいる。
平手政秀である。
《ファラ! 聞こえるか?》
《はいはいー、何ですか?》
《爺、平手政秀について聞きたい》
《え? 信長様の方が詳しいのでは?》
《勿論そうじゃが、現時点での爺では無い。後世の評価についてだ》
《それは歴史を教える事に……いや、同時代の人間についてなら良いのかな? まぁ良いでしょう。ではお伝えします。基本的に責任感が強く実直であるとされています。腹を切って信長様の為に死んだとあります。信長教では使徒の扱いですね。1億年経過しても基本的に忠義の家臣として伝わっています。切腹した理由は諸説ありますが、信秀公の葬儀を含めた信長様の奇行の責任をとって、政争に敗れて、息子の反乱に詫びて、変わった所では過労による鬱病ってのもありますね》
《うつびょうとは何じゃ?》
聞いた事の無い病気に信長は疑問に思った。
《簡単に説明すると精神肉体問わずあらゆる負担が限界を越えて、心を病んでしまい、予期せぬ奇行や最悪自殺衝動に負けて自ら命を落とす事です》
《……であるか》
《で、本当の原因はどうなんですか?》
《秘密じゃ!》
《ケチ!》
《うぬッ! まぁ、当たらずとも遠からずと言っておく……では引き続き補助を頼む》
《はーい》
「チッ。今更『うつけ』の行動は変えられぬ。爺と話し合うしか無いな」
信長は決意と覚悟を決めて平手政秀の屋敷に向かった。
しかし――
「おお爺よ! あの時は本当に済まなかったな……!」
「若……? (あの時とは、どの時だ?)」
屋敷で平手政秀を前にしての第一声がそれであった。
信長自身も自分で口にしながら驚いてしまった。
醜態と言っても良い問い掛けである。
毎日顔を突き合わしては説教をしている政秀にとっては、新手の冗談かと身構えた。
何せ信長に謝る理由が有り過ぎる事は守役の己がよーく知っている。
信長が転生した事を知るはずも無いので、諫死した事に対する謝罪だとは思いもよらない。
当然だ。
まだ生きているのだから。
しかし信長にしてみれば目的があったにせよ、自分の行動が原因で諫死させてしまった人なので、思わず涙ぐんで(政秀からすれば意味が分からなかったが)謝罪の意思をはっきり示した。
(ワシはこんなにも後悔していたのだな)
決して後悔などしないと心に決めた人生だったが、まさかの人生2度目となると、心に押し込んだ後悔の念が溢れてきてしまった。
だから、政秀には自分の目的をしっかりと語り、諫死と言った悲劇が無い様に認識を合わせ、『うつけ』行動は自分の敵を誘い出し区別する為だと。
政秀は諫死してまで信長の将来を憂いた。
裏切りや出奔が当たり前のこの世の中で、その忠誠心は疑い様が無い事が証明されている。
即ち貴重過ぎる人材で、2度目の今なら全幅の信頼を置ける人物であると断言できる。
転生しなければ享受出来ないメリットである。
信長にとっては、これから裏切る者や、起こる出来事は全て把握出来ているが、『うつけ』を演じる事で油断を引き出しやすい事を良く知っている。
あえて『うつけ』の様に振舞うのは信秀の後継者として乱世を生き抜く為である。
政秀には『まさかそんな事の為にやるハズが無い』と思わせる事が重要であると、念押しして説明した。
勝家は予定通り裏切らせるが政秀には時間が無い。
運命を変えるには今しか無いのだ。
政秀は政秀で、ようやく合点がいった。
常軌を逸した『うつけ』振りや、父の信秀が諌めない理由もこれでハッキリした。
(成程。『敵を騙すにはまず味方から』か。それは分かる。分かるが――)
ここまで徹底されると味方を騙している様には全く見えないのであった。
信長の振る舞いは、間違いなく本格派の『うつけ者』だ。
何せ政秀は諫死も視野に入れていた。
一番近くで見ていた守役の自分でさえ諦め掛けていた。
もはや誰も彼もが信長を侮っており、正直、本心を聞いた今でも信じられない部分が政秀にはあった。
(またワシを騙してからかっているかも……?)
そう政秀は訝しむ。
当然、信長もそこは承知しているし、言葉だけで信じてもらえるなどとは思っていない。
今の自分の信頼が地に落ちているのを痛い程に解している信長は、配下の悪童達の元へ政秀を案内するのであった。
案内された政秀は驚愕した。
あの悪童仲間は信長にまとわり付く害虫共と苦々しく思っていた。
武家、商人の後継者になれなかった者、貧農故に食うに困った者、奴隷に身を落とした者、得体の知れない者。
政秀の常識からすれば、彼らは正に穀潰しであった。
(それがどうだ、武具を揃え整然と並ぶ歴戦の猛者とみまごう者達! 何と! よく見れば鉄砲まで揃えているでは無いか!)
「爺よ、こ奴等はワシが鍛えに鍛えた親衛隊だ。しかし単なる馬廻とは違う。こ奴等は家に居場所が無い穀潰し。死ぬまで厄介者だ。そんな奴等を集めて年中戦に出られる部隊を作った。農繁期や家の都合など関係無い言わば生粋の専門兵士だ」
「年中戦える兵士!? ……あっ! 若、もしや傷だらけで帰って来た時と言うのはもしや……!!」
「そうじゃ。賊を相手に実戦を積んでいた」
「何と!」
今は乱世。
戦から落ち延びたり、飢餓故に野盗に身を落とす者が後を絶たない。
そんな野盗から領民を守るのは領主の務め。
領民の安全を確保するからこそ年貢を得られるのだ。
この治安は領主の義務である。
この義務を放棄し、領民から領主失格の烙印を押された領主の末路は悲惨である。
農民は簡単に逃げ出してしまう。
当然である。
守ってくれない以上、自分の身は自分で守るしか無いから、手段の一つとして逃げてしまう。
そうすると土地はあっても耕す者が居ない。
生産が無いので年貢も無い。
年貢が無ければ戦は当然、配下を食わせる事も出来ない。
そうなると配下はより自分を高く買ってくれる主君を探すか、或いは下剋上にて主君に取って代わるだろう。
忠誠心は必要だが、それが全てでは無い。
何の理由も無く死ぬまで同じ主君に仕えるのは馬鹿のする事なのだ。
だから領主は信頼を得る為に、配下や領民を何があっても守らなければならない。
例えば城下が敵軍に焼き討ちされたら、それは敵軍の責任では無く、焼き討ちを許した領主の責任なのである。
現代人の感覚からすれば理解しにくい感覚かも知れないが、これが戦国時代の常識である。
繰り返しになるが、領民の安全を確保するからこそ年貢を得られるのだ。
義務や責任はギブアンドテイクなのだ。
それは途轍も無く責任重大であり、重労働なのである。
贅を尽くして遊ぶのは構わない。
ただ、領民の命を、自分の命と同等と考える事が出来るかが、重要なのだ。
だから野盗や賊の放置は論外であり、絶対に始末しなければならない。
尾張国は戦国時代でも屈指の豊かな国である。
人も物資も自然と集まる。
当然、悪意を持った人間も。
所が織田家領内では、いつの頃からか野盗の被害が減り出した。
たまに討伐要請があって織田軍が駆け付けても、既に撃退された後だったりした。
生き残りを捕らえて尋問すると、野盗同士の競り合いに負けたのだとか。
お陰で信秀の治安維持に割く時間が大幅に縮小でき、その労力を尾張最大の実力者に登り詰める為に使う事が出来た。
その陰には信長がおり、それを政秀はたった今知ったのだった。
「爺よ、この者等はいずれ必ず織田家にとっての家宝となる」
事実である。
史実の桶狭間の戦いで今川義元を打ち破るのは、彼らの力が合ってこそだ。
「じゃがまだまだ足りぬ。しかし、今のワシの力ではこれ以上隠し通すのも維持するのも難しい。拡大などもっての他じゃ」
信長はこの時点では信秀の息子と言う立場以上の力はない。
庶子とは言え既に結果を残している長男の信広もいるので、そんなに大した権力は無い。
家督の相続は歴史的事実で見れば確定しているが、その時代を生きる人にとっては完全に不透明な状態だ。
なのにも拘らず己の才覚だけで、この部隊結成を成し遂げただけでも驚天動地の実績である。
元服直後で、お付きの配下がいるのは珍しく無い。
しかし元服前から直属の部隊が、しかも実戦経験十分な部隊がいるのは前代未聞である。
しかも、自前で揃えた上に信長は指揮経験をも積んでいる。
普通は当主の横に控えて、居ても居なくても問題無い初陣を経て学んで行く事である。
信じ難い事に信長は今すぐにでも、信秀の補佐を充分こなす風格があった。
(『うつけ者』など、とんでもない! 『うつけ』は我々だ!)
政秀は舌を巻いた。
限界まで。
その上で、専門兵士の存在は心底驚愕した。
通常、武家の者だけでは到底兵力が足り無いので、領地内の農民から雑兵を集めるのはこの世の常識だ。
当然、兵士の大半は半農兵士であり、収穫や手入れの忙しい時期には出陣出来ない。
この時代に農薬など望むべくも無いが故に、完全無農薬農法である。
したがって、農繁期に出陣なぞしたら作物に手入れが行き届かず、害虫まみれの食料として価値は皆無になる。
それでも無理に出陣を強行する場合も無くは無いが、利点は少ない所か、百害合って一利あれば良い方である。
戦って勝って相手から食料や奪えれば、無理な出陣の代償に見合うかも知れないが、当然負けた時の危険度は果てしない。
だからそんな時期の出陣はしない方がマシであり、それ程までに戦とは時期を選ばなければならなかった。
だが年中戦える兵士が要れば、そんな心配は不要なのだが、残念ながらその発想に至る事が無かった。
何せ収穫、手入れ作業の無い農民を徴兵すれば、領民を遊ばせる事無く効率的に人材を使えたからだ。
どこの国もそれは同じ。
だから守るも攻めるも農閑期だけ戦力が整えられれば基本的には問題無い。
問題が無い以上、それが最良であり、それ以上の発想の飛躍は無かった。
しかし今、政秀の目の前に年中戦える兵士がいる。
急激に思いもつかなかった利点が思い描かれた。
(例えば収穫期に攻め込めばどうなる? 相手は軍の編成すら出来て無い可能性があろう。鎧袖一触も充分狙える。例え負けたとしても相手の食料事情に甚大な被害を与える事が可能だろう。それに戦いの技能向上は半農兵士の非では無い。戦えば戦う程、精強な軍が作り上げられる。それは目の前の小僧共を見れば明らかだ。だが何故……自分はこの発想に思い至らなかったのじゃ? これを齢13の元服したての少年が実戦可能な水準で実現させているのに!)
可能性を知ってしまった政秀は、自分の頭脳の浅はかさに打ちのめされた。
「わ、若はいつから専門兵士の計を思い付いたのですか!?」
「物心ついた頃には思っておったよ」
「!!」
政秀は何度目か忘れる程また驚いた。
信長にとって、これは記憶を持って転生したから実現出来た事では無い。
この部隊は転生前から準備できている。
つまり最初の人生の時から不思議に思っていた事だ。
当初信長は尾張の人間は怠け者だと思っていた。
穀潰しが居るのに、働かせる場を与え無い。
所が成長すると近隣諸国皆怠け者ばかりだと知った。
だから、自分で穀潰しを集めて自分の部隊を作ったが、どうやらそれは日本史上初の兵農分離が行われた専門兵士である事を後々知る事になった。
「爺よ、果てしない利点があるのは理解出来たか?」
「は、ははっ!」
「なれば、まだまだ秘匿する必要があるのも理解出来るな?」
「はっ!」
「爺の隠蔽工作に期待する!」
最後の言葉はまるで信長が49歳になったかと錯覚する程、見事な態度であった。
「爺には今まで以上にワシに説教をして周囲を欺いて欲しい、しかしその影で援助と支援を頼みたい。弾正忠家の要たる爺にしか頼めぬ事だ」
「……ッ! と……言いますと?」
「我らは情報を集める。野盗相手に実戦経験も積む。当然、人も集める。老若男女問わずにな。一芸に秀でるなら童でも野盗でも構わぬ。家柄など今の世には無意味。戦える者には戦って貰い、戦えぬ者には兵站や情報収集、商売や技術開発に携わってもらう。ただ、これ以上は目立ち過ぎるのだ。『うつけ』である事も隠せぬ。だからそれら全て父上直属の爺の部隊と言う事にして欲しい。勿論指揮はワシがやるが我らの存在は徹底的に隠す」
「それは……」
もはや国作りに他ならぬ事で、まだ元服したての権力委譲が済んでいない者のする事では無い。
今の言葉が単なる今後の希望なら、やんわりと軌道修正してやる事も出来る。
並の者や並の考えなら『すべて爺にお任せを』とも言える。
しかし、今信長が言った事は今までに無い事で、しかも実績を上げている。
「若、一つだけ宜しいか?」
「申してみよ」
「何故、この爺なのですか?」
(来た! 待ち望んだ言葉が来た! まさか『史実を知ってるから忠義に疑い無し』とは言えぬ。ここが肝だ!)
信長は咳払いしつつ語った。
「爺は……ワシを諫める為に腹を斬ろうと考えた事があるだろう?」
「そ、それは……」
政秀は最後の手段として確かに考ていた。
このまま奇行が治らぬのなら『それも致し方なし』と幾度も考えていた。
それ程の『大うつけ者』だったからだ。
(何故分かったのだ!?)
「図星であるか」
「う……左様です。元服してもあの有り様なら、と思案しておりました」
(やはり元服を期に覚悟を固めたのだな。危ない所であった。もし違ったらどうしようかと思ったわ!)
ここは決めたい所だったので、空振りでは恰好がつかない。
「では、危機一髪であるな。爺の様な忠臣を誤解で死なせたらワシも死んでも死にきれぬわ。ははは!」
高らかに笑う信長を見て政秀は思った。
(何と、何と頼もしい若者であるか。この年にもなって、これ程の逸材と共に生きる事になろうとは。この若は元服の場で言った天下布武を成し遂げるかも知れぬ。その片鱗をしかと見た! ならば……)
「この爺、より一層若に忠義を尽くしまする。徹底的に『うつけ者』の若を叱る煩わしい爺を演じましょうぞ!」
(良し! これで1人運命を変えた!)
信長は拳を握って成果を感じた。
「しかし、何故諫死が分かったのですか? 誰にも漏らした事は無いハズですぞ?」
「まあ、ワシの目も節穴では無いと言う事よ」
嘘である。
自分の眼力を磨くと決めたのは平手政秀の諫死が切っ掛けである。
それ以来、光秀や秀吉については致命傷となってしまったが、色んな失敗をしつつも実力ある者を見出し揃えて来た。
ただ、その眼力を持ってしても見抜けなかったのは、平手政秀の演技が大根である事はまた後の話である。
そんなこんなで政秀を自陣営の要に付け信長は積極的に懐かしい顔や、当時聞けなかった事を聞いて回り、情報を集め、野盗刈りに精を出した。
そんな信長を周囲の人間は『思慮深いうつけ』と噂していた。
武辺と思慮と老獪な頭脳。
『うつけ者』なのに人を魅了して止まぬ、色々相反する人物として、信長の当面のライバルには相変わらず侮られて居たが、領民の評価は前世よりも評判は悪く無い。
転生前は信長の評判と言えば地に落ちる所かマイナスと言っても過言では無く、早くも歴史に変化が出て来ていた。
そんな事を正徳寺に向かう馬上の上で思い出していた。
《ファラ! 歴史改変恐れるに足らずよ!》
《おー! 次は斎藤道三との会談ですね! 期待して報告待ってますよ!》
信長はファラージャとの雑談をしつつ、斎藤道三との会談へ気合を入れなおすのだった。
しかし信長は失念していた――
歴史の改変を行う人物は自分以外にも一人いる事を。




