228話 本当に新たな存在 仏か鬼か、安泰か厄災か
ちょっと遅いですが、あけましておめでとうございます!
今年も信長Take3の小説版、漫画版ともによろしくお願いします!
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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)先生です!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)
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よろしくお願いします!!
【お詫び】
母が短期間でクモ膜下出血を再発+感染症併発で意識不明の重体となりました。
その他にも何度も手術を受けて、なんなら日本医学史上初の症例かもしれない事まで発症させました。
私も家族も、精神はボロボロです。
誤字脱字、ストーリーの矛盾があるかもしれません。
投稿後も見直しますが、気が付いたことがあれば指摘などお願いします。
また『なろうチアーズプログラム』に参加してみました。
ページが特に変わった様子は見受けられませんが、不都合があれば廃止します。
これで医療費が稼げれば良いですねぇ……。
【摂津国/堺】
京を壺の内側、三好と織田で壺の外側を作った蠱毒計は終わった。
三好長慶が仕掛けた渾身の、京の毒虫を駆除する計略であったが、9年にも及んだ特大計略だ。
多少の計算違いがあっても仕方ない、と言うより『計算違いは無い』と考える方がどうかしている。
人は明日にだって突然死ぬ。
何の脈絡もなく死ぬ場合さえある。
要するに、先など見えないのだ。
コントロールしてもミスはある。
故に三好長慶をして9年先を見越しても、取りこぼしは絶対にある。
だが問題はない。
何か一つ瓦解した所で問題ない。
そんな緻密で綿密な作戦など、今回は不要だ。
瓦解したらそれを活かす。
天皇が織田家に逃げ込んだのは、何なら好都合。
諺にもある『狡兎死して走狗烹らる』だ。
狡兎は(大体)死した。
あとは走狗を烹て食うだけだ。
残った狡兎は酒のツマミ程度だ。
これで、日本の副王から、真の王へと昇りつめる。
主家を倒して名を挙げた勢力は、天皇家の支配する約2000年間の間でも度々あり、特に今の時代は下剋上が活発だが、天皇家に挑み成功した人間はいない。
天皇打倒を目論んだ(とされる)平将門も足利義満も失敗した。
2000年間、下克上を許さなかった超勢力だ。
だが、そこが穴だった。
天皇は寄生し養分とするのが日本の常識。
その天才的所業を編み出したのが藤原氏だったが、三好長慶はその天才を上回り破るのだ。
先例が無い事をやるのは天才の所業。
ただし、それは成功させて、更に『コレがこれからの常識と庶民に受け入れられて』初めて天才と認められる。
「さて真の天才はどちらかな? ワシと奴の見えている世界は一緒。しかし手段が違う。楽しみな事よ」
そんな、長慶は堺の町で、帰蝶の為の出産祝いを直々に吟味している。
信長は必ず倒さねばならないが、斎藤家は絶対ではない。
信長あっての斎藤家であって、斎藤家単独で長慶に対抗できるとは思わない。
「いや、あのじゃじゃ馬は、意外と新勢力として台頭するか? フフフ。どこまでも飽きさせてくれない夫婦じゃのう。クックック! お、この華やかな絵柄の反物……は普通だったら喜ばれるだろうが、あの御仁は何をもらったら喜ぶかのう? どう思う弾正(松永久秀)」
女の帰蝶ではあるが、戦闘能力から影響力まで、そこらの大名など比較にならない知名度と名声を誇っている。
長慶の頭脳をもってしても、何を贈答するのが適切か迷う。
「う、う~ん……」
将来敵対確実であるのにも関わらず、帰蝶の大ファンでもある松永久秀は、その頭脳をフル回転させて真剣に悩む。
「金子が無難な気がしますが、それは、何か負けた気がします……! しかし女子に刀剣類を送っても……? いやあの御方なら……?」
その様子を見て長慶は笑ってしまった。
「ハッハッハ! 本当に困った御仁よのう。……そこだけは負けを認めても良いな」
久秀と長慶の頭脳をもってしても、たかが贈答品に困る存在である帰蝶。
男の世界に飛び込んで、大暴れし木っ端微塵にする帰蝶。
男だから、女だからを超越した存在である帰蝶。
夫の信長でさえ手に余るのだ。(227話参照)
まったくの他人である長慶が困るのは、ある意味当然だ。
「ん? む、弾正、コレはどうだ?」
「これは武器……ですかね??? 宝剣……? しかし装飾は見事なれば、相応しかろうと思いますぞ!」
長慶が実際に武器を手に取り考える。
「使用方法は分からんが、あの御仁なら戦場で、答えを見せてくれるかもしれんな。ヨシ! これにするぞ! 目玉贈答品はコレで、あとは金子やら適当に見繕うとするか。水夫よ! すまんがコレを売ってくれ。幾らだ?」
「へ、へい! え~とそれならば、これ位で如何でしょう?」
「よし、買った!」
長慶は満足し、カンロンとシーランは頭を下げて見送った。
「ふ~。予備があってよかったのう。義姉上も喜んでくれるといいが」
「叔母上なら、我らが思いもつかない使用方法を編み出すでしょう」
こうして、カンロンこと勘郎こと織田勘十郎信行と、シーランこと喜郎こと斎藤喜太郎龍興は、積み荷を降ろすのであった。
シーランは龍興の幼名の喜太郎から『太』を抜き、中国語読みした名だ。
本来は新九郎と言う仮名があるが、1からのやり直しを決意した身なので、あえて幼名を使っている。
そんな2人が、なんの偶然かこのタイミングで帰還して、それぞれ堺在中の織田家と斎藤家の商館に向かうのであった。
こうして三好長慶と松永久秀、織田信行と斎藤龍興が行動するなか、それぞれが土産を渡す対象である帰蝶は何をしていたのか?
今龍城にて出産準備に入っていた。
当たり前と言えば当たり前だが、この部分だけは流石に女であった。
【近江国/今龍城 斎藤家】
《ともかく、ワシの妻として城外にでるのは出産まで禁ずる! 斎藤家へのお願いは、帰蝶殿の執務代行を立てて下され!!》
以前の信長の命令と懇願は、あっさり無視された、と言う訳ではない。
あの時は信長も怒っており、どこで産むかで、後継者争いが複雑になる可能性をすっかり忘れていた。
信長の妻として出産した場合、斎藤家の後継者として出産した場合、など、色々言い出す輩が湧いて出る可能性を考慮しなくてはならない。
何せ、この子は織田家も斎藤家も継げる可能性のある子なのだ。
男でも女でもだ。
既に女の帰蝶が当主にいる以上、娘であっても問題ない。
もちろん、継ぐに値する能力あっての後継者であるが、とりあえずは、まだ後継者が帰蝶の兄弟以外誰もいない斎藤家を優先すべく、せめて斎藤家の城で出産をする事となった。
「ふ~」
帰蝶が左足の片膝を立て、右手を後方に伸ばし体を支える。
これで左手で煙草を掴んでいれば、実に様になる絵面だが、もちろん違う。
これは出産後の溜息なのだ。
「産んで第一声が『ふ~』なのですか、お姉様……」
いつも行動も視線さえもポヤポヤしている吉乃が、戸惑いつつ問いかける。
「未知の痛みだったと思うのですが……」
葵が青い顔をしつつ、赤子を産湯で洗う。
「えぇ。私なんかは、もう駄目だと思いましたが……」
茜が興奮した赤い顔で、赤子を産湯で洗う。
「私も死ぬかと思いましたよ……」
直子が呆れつつ様々な道具を片付ける。
「いや、普通に痛かったわよ? 人生でも2番目には入る痛みだったわ。でも1番目の痛みを知ってるから、我慢できただけよ」
その言葉を聞いて、吉乃達は、今まで帰蝶が負った怪我を考える。
(目の傷かしら?)
(胸骨を折られた時?)
(足を貫かれた時?)
(訓練で上級者に負けた時かしら)
吉乃、葵、茜、直子がそれぞれ思い当たる節を探すが全部ハズレだ。
正解は、前世の本能寺で自害した時だ。
次元が文字通り違う話なので、ハズレも当たり前。
何せ帰蝶は『死ぬのは死ぬほど痛い』のを知っている。
本能寺では自分で喉を貫く力も無く、信長に首を切り落とされた。
故に生きているなら、どんな痛みも所詮は2番目の痛みである。
ただし、痛いと感じる長さだけなら、出産が断トツで1位だろう。
何せ2人も生まれてしまったからだ。
男女の双子である。
《ファラちゃんは双子って気づいていたわね?》
《えぇ、まぁ……》
常に信長と帰蝶のバイタルなど確認しているファラージャである。
体内で起きた事を知るなど、1億年の先の技術をもってすれば朝飯前。
ただ、そういう事は言わない様にしているだけだ。
《私も確信はできなかったけど、そんな気はしてたわ。何かこう、運命的な双子が生まれるんじゃないかって》
《一応聞きますけど双子が不吉って風習はありますか?》
ファラージャは双子の誕生を知った瞬間から、戦国時代の風習の方を気にしていた。
なぜか1億年先の未来でも蔓延る風習なので、気になって仕方がない。
《あるわね。でも宗教と一緒で迷信なんでしょう?》
《えぇ、まぁ……》
双子が不吉な存在と言われるのは、戦前、つまり昭和の前期の頃までは信じられていた。
一時期、そんな風習は日本では無くなったが、1億年間の間に何があったのか未来では元通りだ。
なお『双子は不吉』について、程度の差はあれど世界を見渡せば、ほとんど世界共通である。
双子が問題な点は幾つかある。
現実的な問題としては、後継者選びに悩む点。
特に力のある家、財産の多い家は困る。
これはまだ理解できる現実的な理由だ。
戦国時代なら、邪魔なら親兄弟も殺すのだ。
同時に生まれた兄弟など、どう考えたって相続の為に争う運命が待っている。
だが迷信の類では、一度にたくさん出産するのは、猫や犬など、獣だけとの迷信があり、双子は畜生腹などとも言われる。
宗教が絶対の世界なのだから、当然の判断だ。
戦前までの日本の歴史上で、双子で名を遺した人は居るのだろうか?
ちゃんと調べた訳では無いので居る可能性はあるが、大半は他家に養子に出されたか、最悪間引かれたかもしれない。
帰蝶は宗教が絶対の世界から脱した身であるので、何も気にはしていないが周りは違う。
安心材料は男女の双子。
江戸時代では、男女の双子は前世で心中した者とされたり、近親相姦の象徴ともされたが、今は戦国時代なので、その迷信はあったとしても一般常識ではない。
従って現在の迷信の類は、先の畜生腹と、異常な生まれ方をした不吉な存在と見られる可能性だ。
《まぁ、偏見を跳ね返すのは私の得意技よ。誰にも何も口出しさせないわ。殿にもね》
《信長さんは大丈夫だと思いますけど?》
《決意の例えよ。『この私にソレを諫言出来るモンならしてみなさい!』ってね。それよりも、法度に『双子を理由に迫害は許さない』と規定しなきゃね。今更だけど、これは凄く迂闊だったわ。そういう忌み嫌われる双子を採用してこその親衛隊なのにね。犠牲になった子も居るでしょうに……。本当に迂闊だったわ》
《確かに!》
「ふう。さて殿達も待ちくたびれているでしょうね。悪いけど、誰か女中に命じて、殿と当主代行の孫四郎兄上(斎藤龍重)を呼んできてくれって伝えてくれる?」
暫くして――
「よく頑張った。まさか双子とは驚いたが……」
「殿。よくぞご無事で。2人産んで、その余裕の佇まいは流石、父の娘にして兄上の妹というべきか……」
信長はそれなりに驚き、龍重は若干の困惑していた。
やはり、宗教が絶対の世界で生きている人間としては正しい反応だ。
そして、2人同時に同じ事を思った。
(何でこんなに余裕なんじゃ……!?)
双子の出産よりも、帰蝶の態度に驚いていた。
信長も龍重も妻が出産で苦労したのを見てきた。
それなのに余りに帰蝶の態度が普通なので、ここが出産現場じゃ無いのかと疑い始めた。
――が、葵と茜がそれぞれ子供を抱いているので、出産現場で間違いない。
これで、ついに明確に認識して歴史に存在しない子が生まれた事になる。
もうすでに、歴史改編の影響で史実に存在しない子は世に沢山いるだろうが、それはこの歴史の流れに乗って生まれた、別次元の一般の子。
しかし信長と帰蝶の子は、明確に、存在しなかった子を作り出したと認識された子だ。
しかも双子。
仏か鬼か、安泰か厄災か――
《『天上天下唯我独尊』とか言い出さんだろうな……?》
《そんなのは尾ひれが付きまくった権威の後付けです! だからありえません! 絶対! 多分……》
《言ったら面白いですね!》
《面白くないッ!》
宗教から解放された信長、帰蝶、ファラージャをもってしても、何か運命的な作用を感じずには居られなかった。




