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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
20章 永禄7年(1564年) 弘治10年(1564年)

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227話 隠蔽 木を隠すなら森の中。現人神を隠すなら――

【お詫び】

現在母が意識不明の重体で、私も精神や心が乱れており、文章の良し悪しの判別に自信がありません。

あとで見返しますが、読者の皆様も何かあれば指摘をお願いします。


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作画担当先生は、八坂たかのり(八坂考訓)先生です!(旧Twitter @Takanori_Yasaka)

八坂先生の作品一覧→https://x.gd/Gj9zO

よろしくお願いします!!

挿絵(By みてみん)

【尾張国/()()


 御所から本願寺へ。

 本願寺から海に出て伊勢湾へ。

 伊勢湾から尾張国に上陸した帝一行。


「ここが尾張国、そして熱田神宮。目も眩むとはこの事か……」


 帝が感嘆した様に呟いた。

 木々が茂る中、にも鳥の鳴き声が響く。

 それなのに、静寂がうるさいと感じる佇まい。


 そう、木を隠すなら森の中。

 現人神を隠すなら神社の中だ。

 更に数ある神社でも最高峰の一角たる熱田神宮に現人神を隠すのだ。


 本当に隠せるだろうか?


 少なくとも、公家関係者が(財政的にはともかく)熱田を参拝しても不自然ではないし『帝が京を離れるハズがない』という盲点なら完全に突いたので、正しい隠れ場所かもしれない。


 何せ、平安京は建設当時の宗教が絶対の世界の、霊的技術の粋を集めて作られた都市だ。

 邪悪な鬼が入り込む鬼門には、延暦寺を守護として利用した。

 その延暦寺が鬼同然だったのは大誤算で、歴代天皇の悩みだったのは公然の秘密である。


「それでは出発しましょう。ここは治安も完全です。ここからは輿を用意しているので御安心下さい」


 近衛前久が、慮外な事を言い出した。


「……出発? ここが熱田神宮じゃないのか?」


 この規模の神社が熱田神宮でなければ何なのか?

 命がけの脱出なので、儀式も何もかもすっ飛ばしてきたが、本来は都を空けるにしても手順がある。

 武士の出陣式が厳格なら、日本の頂点の移動はもっと厳格だ。

 一応、いつでも移動できる様に、形だけでも最低限先にやっておいたのが功を奏したわけだ。

 なのに、苦労してたどり着いたこの立派な神社を無視して、どこに行くというのか?


「はい。ここは偶々近くにある神社にございます」


「……そ、そうであるか」


 その末についた立派な神社が、ただの普通の神社とはドッキリにも程がある。

 ここで十分、隙間風が通り抜ける御所の何倍も凄い規模の神社なのだから。


「それでは、ここからは彼らが護衛いたします」


「えっ」


 前久が武将を紹介した。

 現れたのは尾張の監督者、織田信広。


「この様な事態故、直言は遠慮なさる必要はない。そもそもここに『帝』は居ないのだからな」


 帝は居ない。

 そういう事になっているのだ。

 まさか『帝が尾張に来たから最大限のもてなしじゃ!』と喧伝するわけにもいかない。

 所在不明なのだから。


「はっ! それでは失礼します」


 信広が膝を突き答えた。


「拙者織田弾正忠の兄、織田尾張守信広にございます。()()をお迎えに参上いたしました。我が主から、絶対に粗相の無い様に申し付かっております。熱田まで責任もって万全の警護で案内いたします」


「織田尾張守……弟が主君と申したか?」


 帝は尾張の内情を知らない。

 知っているのは、まだ近衛前久だけ。

 当然『上総守』も伝えていない。

 事が事だけに、タイミングを計っているのだ。


「はっ。織田家では実力主義。拙者は弟に遠く及びませぬ」


「そ、そうか……。そう考えると(ちん)、いや私もいっそ比叡山に送られておけば……いやいや、制御の利かぬ僧兵の相手など今と何も変わらぬか。弟も苦労しているのだろうな」


 全くその通りで、弟の覚恕は延暦寺で兄の為に防戦に徹していた。

 すべて信長の()()プラン通り。

 プランが『ほぼ』なのは長慶不戦と帰蝶の抜け駆けだけ、いや、これだけでも大惨事級のプラン崩壊かもしれないが、ともかく、その上で信長が残党群を蹴散らし、尋円に対する言葉。


『仕方ない。帝の居場所を教えましょう。京は当然、この比叡山にもいない。ここを通過もしておらん』


『ではどこに!?』


()()。まだ移動中だろうがな』


 ()()とは熱田神宮。

 つまり残党軍は帝と接触するなら、比叡山を倒して突破し、南近江を突破して、美濃や伊勢からくる迎撃軍を蹴散らしてやっと熱田神宮にたどり着ける旅行ブランとなる。


 無抵抗で通過出来る訳がない。

 残党軍にできる旅行プランではない。

 ただ、方向だけは合っていた。

 故に信長は『惜しかった』と言ったのだ。


『惜しかったな。だが仮にこの寺門を突破し、比叡山を制圧しても帝はおらぬ。それにその戦力では『熱田神宮』にもたどり着けぬ。故に、骨折り損のくたびれ儲けだな』(226話参照)


 完全武装の疲労ゼロの軍隊でもほぼ不可能の強行軍となる。

 最初から大ダメージを負っている残党軍には不可能なのだ。

 それを最初から教えず、ここで全滅させた信長は優しいのか意地が悪いのか。


 悪いのであろう。

 体力も、精神力も、根性も、恨みも、何もかも骨折させ粉砕して粉微塵にしたのだ。

 延暦寺の門さえ突破させなかったのだから、プライドもズタズタだ。


 余談だが、信長が生まれ持っての強運でもあるのも、作戦が決行できた理由だ。


 何せ信長は領地に、伊勢神宮(伊勢国)と熱田神宮(尾張国)という、帝に直接関わりがある場所を確保していたのだ。

 これは生まれた場所の問題でもあり、他のどの大名、日本の副王たる三好長慶にも真似できない、強運にも程がある剛運だ。


 だが史実で、特に伊勢神宮、熱田神宮を利用した事は()()()()


 利用した事が無い、とは天皇や朝廷を脅す材料にしたとかではなく、むしろ熱田神宮は桶狭間に行く際には参拝したり、数々の寄進を送っている。現実に直面し信仰を徐々に失い、完全に失うのは死後の話(この小説)である


 なお、現代では、伊勢神宮には三種の神器の一つ八咫鏡、熱田神宮には草薙剣が祭られている。

 最後の神器、八尺瓊勾玉は皇居『剣璽の間』に祭られている。


 戦国時代でも基本的には、八咫鏡は伊勢神宮、草薙剣は熱田神宮にあったとされる。

 八尺瓊勾玉は今、帝が肌身離さず身に着けている。

 なお、神器の草薙剣、八尺瓊勾玉は源義経の攻撃で壇ノ浦に沈むなど、失った時期もあり、神器無しで皇位の継承が行われた時代もあったが、2代目の神器が作られたりしたが、現代でも実在を証明できる証拠が無いし、歴史的調査も許されていない秘宝中の秘宝だ。

 だが今は(この小説では)伊勢に、熱田に、帝本人にと、全てがある。


 ある意味信長は、神器三種の内、二種を守護しているとも言える。

 その上、歴史改変の影響で、ついに三種揃った。

 だが三種の神器は、(ドラゴン)(ボール)を集めると願いが叶うという類の、伝説(国民的アニメ)の様な代物ではない。

 基本的には、天皇の交代には三種の神器が揃って成立するとされる程度の使い道だ――と、何か不穏な事を書いたが、ここで神器を奪い『上総守』を龍の玉の様に要求するなど馬鹿な真似はしないし、神器に手出しする気もない。

 むしろ、将来を考えれば、神器に手を出してはならないと考えている。

 これは大分先の未来の余談だ。


「それでは参りましょう。京が安定するまで、どうぞご静養下さい」


「う、うむ。よしなに……な」


「はッ! では出発だ!」


 尾張兵総動員の護衛だが、そもそも熱田が貿易港でもある。

 殆ど目と鼻の先なので、あっけなく、何事もトラブルもなく到着したのは当然の事。

 今や、尾張は東日本最大の治安と活気で作られた国。

 また、信広が尾張守になって始めた文化的都市でもある。(88-2話参照)

 あれから12年。

 天皇を接待するに相応しい地であるのは間違いない。


 きっと帝、いや、()()()()()も御心穏やかに、安心して過ごして頂けるだろう。



【近江国/岐阜城(安土城) 織田家】


「ぬぅぅぅ~~~ッ!! このッッッ……!! 戯ッ! たわッ! タワ馬ッ!?」


 一方、ここに全く心穏やかではない武将が一人。

 織田信長だ。


 その信長が前々世でも見せた事のない怒りを発している。

 (たわ)けの『け』が出て来ない上に『馬鹿』と合体してしまう程の怒りだ。

 また、日本語として存在しない言葉『たわば』と聞こえるが、決して、とある経絡を突かれた訳ではない。


 以前はこんな怒り心頭の時は、武将たちを殴りつけた事もあるが、この歴史では一切、ブチ切れても手出しはしていない。

 決して稽古以外で暴力をふるっていない。

 精神年齢相応に落ち着いたのもあるが、理不尽な暴力が原因で本能寺を起こされても困るからだ。


 一応の例外は、この歴史の過去で、佐々成政をブン殴った事があるが、アレは成政の妄言が原因だからノーカンだ。(外伝35話参照)


 それなのに、今、その禁を破りかけて、左手で右手を抑えている。

 何か制御できない『暗黒の力』が目覚めかけている最中なのか!?

 転生による悪影響がチート能力として発動しようとしているのか!?


 もちろん違う。

 ジャンルも違う。

 原因は帰蝶だ。


 もう、言葉も出ない。

 信長も怒りながら『怒りも頂点に達すると言葉が浮かばんなぁ……』などと新発見に驚く程、怒っている。

 もう殺気で岐阜城の天井が吹き飛びそうなのに、そんな中、殺気の竜巻と、殺気で作った刀剣類がオールレンジで荒れ狂うが、その中で一人涼し気に座る帰蝶。

 殺気の竜巻も、刀剣類も、何故か帰蝶を避けて行く。


 身重の体で出陣はしないと言いながら、その体で三好長慶に会いに行っていた。

 確かに出陣ではない。

 斎藤家の行動ならば『やめて!?』と要請は出来ても『やめろ!』と命令はできない。


 だから怒りの発散場所が無く、信長の右腕に暗黒の力が集中しているのだ。

 あと仮に襲いかっても、座ったまま返り討ちに合いそうな風格が帰蝶に宿っている。

 単独行動が、何か変えたのかもしれない。


《ファラッ!!》


《はいッ!!》


 テレパシーでファラージャを呼ぶ信長と、その信長の問いに気を付けで応じるファラージャ。

 

《こ奴に『身重の体』の意味を教えてやれッ!! これも未来知識かッ!?》


《いえッ! 違いますであるますッ!! 教える事は可能でありますッ! Sir(サー)!!》


 どこかの軍隊の教官と新兵のやり取りを涼し気に聞く帰蝶。

 そして『Sir(サー)』の方が、どちらかと言うと未来知識だが、この場は無視された。

 また『あるます』は誤字ではないと明記しておく。

 殺気がテレパシーを貫通してファラージャのいる5次元まで届いている、感じがするので驚いて噛んだのだ。


《帰蝶さん、いわゆる今は安定期で比較的楽です。運動もやりすぎなければ可能です。ですが……》


 身重の体の意味の様で、若干未来知識も混ざっている説明が続く。


《母子共に健康を願うなら、ストレ……えー、精神的重圧がかかる事は避けるべきかと》


 三好長慶との接触が、母体にストレスを与えない訳がない。


《ファラちゃん? 私が長慶殿に後れを取っている様に見えた?》


 帰蝶は自信満々に問い返す。


《(『太った』と言われた時、かなり心を揺さぶられていた様な……)ご、互角だったと思います》


《じゃあ、精神的重圧は無いも同然。馬での遠出もいい運動の範疇よ》


《この戯けがッ! この信長が認めてやる! 『新うつけ』とな!! ……やっと言えた》


 もう信長も何が目的だったのか忘れかけている。

 帰蝶を『うつけ認定』するのが目的ではない。

 長慶に会ったのも、良くは無いが、情報も持ち帰ってきたから良しとする――訳が無い。


《違う! 妊婦が無茶するなと言いたかったんじゃ!! 朽木城にいるのも論外! 今龍城か、稲葉山城、それか我が妻として岐阜(安土)に居れ! これは斎藤帰蝶殿に対するお願いと、貴様に対する命令だ!》


《はいはい。わかりましたよ。そんなに私たちの子が大切でしたか》


《誰もが大事な子じゃ! 何か勘違いしとらんか!?》


《信長教では厳しくも優しく、子供であっても試練は容赦ない神様ですね》


《う゛ぐぐぐッ! 元服を終えるまではな!? 織田家の武将として働くなら容赦などせん! 女子には常に優しいハズじゃ!》


《あら、意外。女子に優しいのは知っていましたが、我が子でも武将には容赦しませんか》


《……正確には違う。確かに以前は我が子贔屓が無かったとは断言できん。お飾りの総大将として武功を稼がせた事も無くは無い》


《その言い方ですと、この歴史では違うと?》


《あぁ。以前にも言ったが、家督は一番優秀な者にするが、その前に我が覇業を継ぐ意思の無い者に強制はしない。それに追加して、最低でも1回以上は足軽を経験させる。そこで生き残って手柄を立ててこそだ!》(外伝21話参照)


《良いですね! 来年以降になる三好との決戦では、信正殿を元服させて一緒に先駆けでもしましょうか?》


《ッ!! やっても良いが……この歴史の信長公記とやらに何を書かれても文句言うなよ!?》


《いいですねぇ!》


《グッ! 信長の妻は悪鬼羅刹の化身でも構わぬのだな!?》


《そこは巴御前ぐらいで抑えて欲しいですねぇ……》


《と、巴御前て……!!》


 巴御前は、後の夫である木曽義仲を馬ごと持ち上げ投げ飛ばし、遠くの木の枝に引っ掛けた豪傑だ。

 戦では両手で敵の頭を右手左手で、それぞれ捕らえると、そのまま握りつぶしたとか、もうグラップラー同然だ。(187-1話参照)


《又助あたりに命じておくか。今までの事、これからの事を記録編纂せよと》


《又助? どちら様で?》


 帰蝶が訪ねた。

 知らない仮名だった。


《太田信定じゃ。知っているのか?》


《いえ。多分直接は。今の歴史では会ったかもしれませんが、覚えてません》


《(後の太田牛一じゃない! 偶然!? 歴史の修正力!?)》


 帰蝶は知らないのは仕方ないが、ファラージャは当然知っている。

 信長公記の執筆開始と完成は、信長死後である。

 これこそ究極の未来知識だ。


《弓の腕に優れておったが、それよりも政が優れておった。そう言えば、奴の書は妙に惹き付けられたな。なつかし……ッ? もしかしてお主の時代に残っている原本の著者は太田か?》


《……違います》


 最近、自分の言動が読まれている気がして、慎重に答えるファラージャ。

 そんな緊張感で放つ言葉が普通の言葉と同じな訳がない。


《そうか。違うか。(当たりか)》


 信長はそう言っておいた。


《ともかく、ワシの妻として城外にでるのは出産まで禁ずる! 斎藤家へのお願いは、帰蝶殿の執務代行を立てて下され!!》


《分かりました。これ以上無理しては殿が倒れそうですね。兄上達に文を出して、一時的に当主代行を担ってもらいましょう》


 こうして延暦寺防衛線に等しい、夫婦の在り方について決着がついた。

 計算上今年出産予定なので、来年以降の動き、あるいは決戦には間に合うだろう。


(間に合わす前に、三好と決着をつけるか? いや、斎藤の力は必要だし、今出陣を命じても流石に援軍要請しても間に合わん。やはり来年か)


 信長は半ば諦め、帰蝶が大人しくするだけで『良し』としなければならない結果に、妻が頼もしいやら己が情けないのか、訳が分からなくなるのであった。

今年最後の投稿になります。

今年も皆様には大変お世話になりました!

来年もよろしくお願いします!


こちらは八坂先生によるファンアートならぬ本人アート(?)

本当にプロは凄いぜ!

挿絵(By みてみん)

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