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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
20章 永禄7年(1564年) 弘治10年(1564年)

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448/457

226話 見参!!

【宣伝】

漫画版 信長Take3『6話(2)&(3)「初陣」』が先読みとして公開されました!

12/30には(1)が無料公開となります。

マンガBANG!のアプリでご覧ください。


【お詫び】

現在母が2度のクモ膜下出血を患い、何とか生還するも、運悪く『髄膜炎』『水頭症』になり意識不明の重体となりました。

個人的にもショックが大きく、話の良し悪しが判別できなくなりつつあります。

後々明らかにおかしい文章は直しますが、大筋では変化ないと思います。


現在5度の手術を受け、意識の回復を待っていますが、一向に覚醒の兆しがありません。

脳波はあるので植物人間ではありませんし、自力呼吸もしています。

意識不明の重体とは一体何なんでしょう?

この辺の母の病気も皆さんへの警鐘として公開予定です。

不幸な話ですが、1人でもクモ膜下出血の恐ろしさを知ってもらえれば、母の今の状態も無駄にはならないでしょう。

【山城国/比叡山延暦寺西門】


 延暦寺、三好、織田、斎藤連合軍vs残党軍の戦は終わった。

 織田軍が援護射撃に入り、斎藤軍が残党軍の背後を囲った。

 小芝秀吉(羽柴秀吉)が引き連れてきた三好軍が到着する頃には、もう敵は壊滅しており、残党狩りもほぼ終わり、興福寺の尋円、東大寺の智経が虚ろな顔で縄で縛られている。

 残党軍を壊滅させ、残党軍の残党となった兵や僧は散り散りに逃げ去った。


 完勝も完勝、大完勝だ。

 鉄壁要塞の延暦寺に、打ち降ろしの織田軍と、背後横側から急襲する斎藤軍。

 逃げる隙間も閉ざされ、それぞれ興福寺と東大寺別当を捕縛した所で勝鬨をあげて、決着となった。

 死者ゼロ、負傷者少々。

 三好に至っては参戦する前に片付いてしまった。

 戦の結果にこれ以上を求めては贅沢な結果だ。


「これはこれは尋円殿に智経殿。昨年の一件以来ですなぁ。こんな所で縄目になっているとは」


 信長が皮肉たっぷり、には言わず『何でこんな所に!?』という感情を強めていった。

 もちろん『何で』も何も、ここにいるのは百も承知の発言なので皮肉100%だ。


「特に尋円殿には清水寺にでも行けと申しましたのに、本当に何故ここに?」(202-2話参照)


「ヌゥ……ッ!!」


 興福寺の尋円は狂犬の様に歯を剝き出しに呻る。


「……」


 東大寺の智経は放心している。

 もう今の状況を理解していないかもしれない。

 

 一応、尋円の興福寺は明確な攻撃目標として昨年粉砕したが、智経の東大寺については信長も長慶も燃やすつもりでいたが、対応さえ間違えなければ、少なくとも縄目の恥辱に甘んじる事は無かった可能性もあった。

 それだけにショックも大きい様子である。


「しかしアレですな。確かに京に追放しましたが、延暦寺を攻撃しろなどとは命じておりませんぞ? 延暦寺に何ぞ用事でもあったので?」


「決まっておる! 帝に貴様らの蛮行を訴えるのだ!」


 信長の態度にイラついたのか、すっとぼけているのが気に入らないのか、縄目の不自然な体勢でオペラ歌手の如く良く通る声で怒鳴る。


「帝は居らぬと僧兵が応答しておりましたでしょうに」


 信長が言い、隣の僧がウンウン頷く。

 櫓門で話のかみ合わない説得をしていた僧兵だ。


「嘘に決まっておろう! 六角軍と共に比叡山に入るのを見たのだ!」


「成程。確かに六角軍が比叡山へ逃げ込んだのは事実。それに敵の言う事を馬鹿正直に納得するのも愚かな話。しかし、それが囮だとは考え至らなかったので? 本当に帝本人を見たので?」


「至ったに決まっておろう! 確かに帝の御姿を見たわけでもない! だが貴様、考えてもみよ! 我らが分散して怪しい拠点を虱潰しにする戦力に見えるのか!?」


 自慢する事ではないが、確かに残党軍はもう最初からボロボロだ。

 正規軍の様に動ける訳でもない寄せ集めだ。

 情けない事この上ないが、尋円の言っている事は、完璧な正論だ。


「失礼。それは確かに」


 これは信長も愚かな質問だったと反省した。

 残党軍が散り散りになって何の力が発揮できようか。

 主義主張が違う者同士の集まりなのだ。

 勝手に動いては『虱』として潰されるだけ。

 一点突破に賭けずして何が得られるのか?

 ルーレットの数字1点賭けに等しい確率に挑んだのだ。

 そして、順当に賭けに負けたというより、確認もできずに負けた。

 

 だが、これこそ残党軍にやって欲しかった事。

 愚かな賭けをしてくれる事に、信長は賭け勝った。


「仕方ない。帝の居場所を教えましょう。当然、京は当然、この比叡山にもいない。ここを通過もしておらん」


「ではどこに!?」


()()。まだ移動中だろうがな」


 これは秀吉にも教えたとある場所だ。

 現人神を隠すに相応しい場所である。


「なっ……」


「惜しかったな。だが仮にこの城門を突破し、比叡山を制圧しても帝はおらぬ。それにその戦力では『()()』にもたどり着けぬ。故に、骨折り損のくたびれ儲けだな」


「ッ!!」


「何なら延暦寺を検めるかね? 見張りの兵同行で自由に見物させてやろう、いや、宜しいですか、覚恕殿」


「えぇ。なんら(やま)しい事はありませぬ」


 今の延暦寺は、史実の酒池肉林ではなく、完全防御要塞である。

 女や乱れた食生活、居眠りする僧侶もいない。

 いたとしても、それは坂本の町、山を登って降りた先だ。


 山頂の延暦寺は静寂と神聖な寺院のままだ。


「なら検めさせてもらおう……!」


 尋円が信長の言葉を信じていないから故の行動ではない。

 もう生き残る道は無い。

 気の済むまで捜索した後は、処刑されるに決まっている。

 ならば、何かの手違いで帝が延暦寺にいる事に賭るしかない。

 ここまで足掻いたのだから、最後まで足掻くと決めた尋円であった。


《この歴史のこ奴は、坊主をやらせるより武将になるべきであったな》


《そうですね。生に対する執念は凄いと思います》


 信長もファラージャも尋円の一面を褒めた。


「殿! 申し上げます。三好軍の尼子殿ら諸将が参りました」


 秀吉が、三好軍から離れ、織田本陣まで戻ってきた。

 三好軍の武将は一旦、陣幕外で待機である。


「戻ったか。問題なかったか?」


「はッ! 見ての通りにございます。……正直やっと安心したのが本心です」


「帝の居場所を伝えたか?」


「いえ。そう言った話にはなりませんでした」


 秀吉が機密を守り一安心と報告した。


「ならなかった!?」


「えっ」


 突然の信長の大声に秀吉が驚いた。


「は、話した方が良かったですか? 聞かれませんでしたので、無駄に話す必要は無いかと判断しました! 申し訳ありません!」


「い、いや、全権を託したお主の判断だ。それは尊重せねばならん。驚いたのは居場所を聞かれなかった事だ。……聞く必要がないと思っているのか? 奴に聞くしかあるまい……ん? さっき尼子殿と言ったか?」


「は、はい。三好軍総大将は尼子義久。あとは毛利に陶、長曾我部。軍目付に十河一存、北条氏照が同行しておりました。書状通りにございますが……」


「奴が……居ない!?」


 もちろん『奴』とは三好長慶だ。


「書状は確かに確認した。軍の指揮をしていないのもまぁ理解できる。だが、この場に来ないのは何故だ!?」


 消耗戦に三好軍を使いたくないのだと判断していた信長だったが、今、予想を誤った事を知った。

 帝を謀殺したい長慶がここに来ないのは想定外だった。

 せっかく蠱毒の最終勝者が決まったのだ。

 彼らを使って帝を葬りたいハズなのだ。


「急ぎ、尼子ら諸将を招き入れよ。事情を聴かねばならぬ!」


「は、ハッ!」


 秀吉は大急ぎで駆け出して行った。

 その間、信長は何が起きたか考える。


「帝の行き先を読むだと!? そんな事読める訳がない……!!」


 信長はそう言いながら『三好長慶なら、今のこの歴史の精神を患った三好長慶なら読みかねない!』とも思うのであった。 



【摂津国/石山本願寺本殿】


「こ、これは修理大夫様(三好長慶)。お久しぶりにございます」


「うむ。本当にな。あの時の貴殿は11歳の子供なのに、ワシを前にして堂々の振る舞い。正直、将来を恐れましたぞ。あれから10年。月日が経つのは早いものですな」(106-2話参照)


 顕如は精一杯の気力を奮い起こし挨拶をする。


 かつて顕如は、信長の願証寺攻めに対し、三好に対処を求めた。

 ただ、公的にはともかく、内密には三好も承知していた願証寺攻め。

 当時の顕如の神童ぶりに困った長慶は、交渉の末、一向宗宗徒の逃げ場所を提供した経緯がある。

 それ程までに11歳の顕如は、若さ故のクソ度胸なのか無鉄砲なのか、弁舌で長慶から一本取った。

 まさに神童であった。


 そして10年――

 今、織田家は本願寺と内密の約束をしている。

 本願寺の急所『歎異抄』が漏れたのが原因でもあるが、織田家の認識はまだ『タンニショー』であって、ほぼ正解を推測しているが決して100%ではない。

 99.999……%と100%では天地の差があるが、それ以上に、歎異抄の件だけで織田家と密約を結ぶハズもなく、まだ別の密約がある。


 ――という密約の(やま)しい心が、かつての神童を焦らせる訳でもない。

 顕如も大人になった。

 疚しい事も行っている。

 手を汚す事も受け入れた。

 だが、本来その程度で動揺はしない。

 

 顕如が手の震えを法衣で隠す。


 全ては、長慶の成長が、かつての神童を突き放し、精神を犠牲に異常成長しているのだ。

 順当に成長して、長慶と対等に話せる立場になる目論見だった顕如は、一目みて面食らった。


(勝てない!)


 武術は言うまでもなく、弁舌でも太刀打ちできる気がしない。

 十河一存を除いた三好兄弟が揃っているが、それが原因ではない。

 長慶ただ一人が異常なのだ。

 他の兄弟なら、どうとでも言いくるめて見せるが、今の長慶に嘘は通じないし、命も危ないだろう。


「して用件は何でございましょうか?」


「うむ。いくつかあるのじゃが……」


 長慶が懐から書状を取り出し渡した。

 その書状を一目するなり顕如は驚いた。


「ッ!! 織田殿との約束を全て三好家で履行する!?」


「細かい約束までは流石に分らんが、大きな約束は予測できる。この先、三好は蠱毒の清算に入る訳だが、その時の敵は織田になるだろう」


「ッ!! 天下を賭けた決戦と言う訳ですか……!」


「蠱毒を台無しにしてくれた礼をしなければならんからなぁ。クックック!」


 そう言う長慶の顔は楽しそうだ。

 9年かけた蠱毒を破綻させて余裕の表情なのは、こうなる未来を予測していたのだろう。

 それならそれで構わないと、長慶も軌道修正してここまで来たのだ。


「当然我らが勝つ。だが本願寺には役割がある」


「役割……!」


 実は信長にも言われた言葉だ。

 天下を取った後の話になるが、本願寺の力は必ず必要になる。

 政治に宗教を利用しないが、それでも大役があり、それに信長も長慶も期待している。


「だから、織田との約束は、織田が滅んでも三好が責任を持つ。安心せよ、と言うのを約束する書状だ」


「あ、あの織田殿に勝つ……。正直申しますと、拙僧には全く勝者の予測がつきませぬ!」


「だろうな。唯一日本でワシに匹敵する男だ」


「その匹敵する男に私が加勢したらどうでしょう?」


 そう言って、襖から現れたのは帰蝶だった。

 

『オホホ! 流石に来る訳ないでしょ?』


 遠藤直経にそう託した伝令だが、確かに延暦寺決戦の戦場にはこなかった。

 しかし、斎藤軍のすぐ後ろには付いてきており、朽木方面から途中、西の山道を駆け抜けここまで来たのだ。

 戦を横目に京を駆け抜け、尋円と智経が延暦寺を改めている時間で、今こうして長慶と対峙している。

 長慶より僅かに、帰蝶ら女武将の集団が早かったのだ。


「斎藤殿! ……おや? お太りになられましたか?」


「なッ!? ふとッ!? これは妊娠というのですッ!!」


 予想外の帰蝶の登場に面食らう長慶だが、すかさず先制攻撃を行うのは、精神が削られているお陰か。

 帰蝶も驚かす予定が、一発で主導権を握られてしまった。


「失礼。それは目出度いですが、妊婦の身で何と危険な事を……。斎藤家の当主だから出来る行動だと?」


「えぇ。そうです!」


 帰蝶はふんぞり返ってそう答えるが、茜、葵、直子、吉乃は、帰蝶の後ろで首を振っていた。

 散々引き留めて無理だったので、随伴しているだけだ。

 その顔は疲労感にあふれ、三好実休、安宅冬康をして『可哀想に』と同情されていた。

 何せ、自分たちも異常な冴えを見せる長慶に、引っ掻き回されている。

 今回の本願寺訪問も本人の中では計画していたのだろうが、命令は突然だったのだ。


 帰蝶以外の女房衆と長慶の実弟達に、妙な絆が生まれたのは割とどうでもいい話だ。


「無茶な事を。流産でもしたらどうする? と耳を傾ける御仁ではないからここにいる訳か。流石女の身で我が面談を、満点以上で突破した者よ」


「ッ!?」


 その言葉は実休、冬安も初耳だった様で動揺を隠せない。

 自分達は満点を取ったから、ここに存在している。

 あの問答で、満点以上があるとは信じられない思いだった。


「そうだな。ワシとした事が斎藤殿の存在を忘れておったわ。当然決戦の日には出産も済んでおり、戦う準備も万全にするであろう?」


「勿論! 織田家を倒しても私を倒さねば意味はありませんよ」


 自信満々に言う帰蝶は、信長も長慶も計算していない事を実行する予定である。


「フフフ。楽しみにしておこう。さて手切れは強者側から行うのが礼儀よな。だが、まだその時期ではないかならな。それまでは仲良く行こうではないか。出産祝いも楽しみにしているがいい」


「ありがとうございます。フフフ。存分に祝って貰いましょう」


 そんなやり取りを顕如は居心地悪く見届けた。


(決戦の証人としてふるまうべきか? 出産祝いを本願寺としても用意するべきか?)


 しばらく悩んだ顕如は、とりあえず順番に片づける事とした。

 自ら堺に赴いて、まずは出産祝いの目利きをする為に。


(決戦後は、いや決戦は仲介や使者の役割もあるだろう。それにも備えなければな)


 三好と織田の両者から同じ頼まれ事をされている以上、本願寺は大人しくしていれば安泰だが、それ以上の役割を買って出る事が、顕如が本願寺と共に生き残る事だと悟ったのだった。


「あっ」


 そこまで考察して顕如は少し驚いた声を出した。


「三好様。書状の件、決戦の件は承知しましたが、その為だけに本願寺へ?」


「まさか。ここに『帝』が居るのではないか?」


 この『居るのでは?』とは、『()()』と信長が秀吉に伝えた、帝の居場所の事だ。


「やはりそれが真の用件でしたか。確かに一旦訪れ休まれていきましたが、入れ違いになりました。早朝、もう御発ちになられました。中を検めますか?」


「いや、いい。無駄な行動だ。全部信長の策略だろう? ここに滞在させっぱなしな訳が無いわ」


「……ッ!!」


 これには顕如も帰蝶も驚いた。

 ここに来る事を見破り、入れ違いで逃した。

 一歩間違えば大惨事になっていただろう。


「構わぬさ。織田と斎藤殿を倒して悠々と迎えに参ろうではないか」


 勿論、これは死の迎え。

 織田と斎藤を滅ぼし、最後の無力にして最大の大物を殺す。

 無論、その大罪は信長に全部被せる。

 そして自分は日本の王になるのだ。

 順番が変わったが、変わった順番こそ正しい順番だ。


「引き上げるぞ。それでは顕如殿。近い内に会いましょうぞ。その時、ワシは日本の王として顕如殿と接していようぞ」


 長慶一行は門に繋げていた馬に騎乗すると、見る見るうちに遠ざかっていった。

 そんな長慶を見送った帰蝶と顕如は大きな息を吐き、地面に膝をつくのであった。

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挿絵(By みてみん)


こちらは八坂先生によるファンアートならぬ本人アート(?)

本当にプロは凄いぜ!

挿絵(By みてみん)

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