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外伝44話 生駒『農耕中興の祖』吉乃

 この物語は、15章、永禄2年(1559年)弘治5年(1559年)、信長の大偵察後の話である。(140-2話参照)


【1559年 尾張国/人地城 織田家】


《六角と将軍をまずは追い落とす。後は―――》


 この時は、まさか延暦寺の手によって将軍と六角が和睦するとは夢にも思わなかった信長。


《後は京に押し込めた後、更なる蠱毒計で争わせ、そこに延暦寺を巻き込ませる》


 これが当初の近江侵攻の目的であった。

 京は当然、京のある山城国にも延暦寺系列の寺は沢山ある。

 戦火に巻き込まれれば、どちらかの陣営に加勢して寺を守らなければならない。

 しかも将軍側には興福寺出身の覚慶がいるので、京の寺社勢力のバランスが崩れる恐れもある。

 従って延暦寺は、近江でもお隣さんであった六角陣営に付くしか無い。


 だが、それは織田との約定で禁じられている。


 こうなれば、後は延暦寺が参戦するかしないかの我慢比べである。

 しかも信長に絶対有利な我慢比べである。

 どう考えても延暦寺は約定を破る公算が高かった。


 そんな策謀を仕掛けるハズが、紆余曲折あって六角、将軍が和睦し、延暦寺がそれを成し遂げ窮地を脱してしまう。

 しかも信長が己の手で将軍陣営を倒してしまう事になるとは、この時は思いもよらなかった。(16章参照)


《すべき事が分ったなら、内政が大事な事も分ろう? 吉乃がまた面白い事をやっとるらしいしな》


《は、はい……!》


「申し上げます」


 そんな今後の確認を終えた信長と帰蝶のテレパシーを遮る様に、小姓が報告に来た。


「吉乃様? がお見えになりました」


 廊下で小姓が、吉乃の来訪を困惑気味に告げた。

 まさに噂をすれば影とでも言うべきなのだろう。


「何かあったのか? 入れ! ……!?」


「き、吉乃ちゃん……!?」


 まるで幽鬼の様な吉乃が、動いているのに静止している様にしか見えない足取りで入室して来た。

 信長も帰蝶も限界まで眼を開き意識してその姿を確認しないと、見えているのに見失いそうな、それこそ瞬き一回で見失いそうな存在感の無さである。

 吉乃が身に着ける簪の鈴の音がチリンチリンと音を立てる。

 しかも音の方が人間より存在感があり、さながら怪奇現象であった。


《こ奴の気配消しには振り回された事もあったが、まさかここまで進化させておるとは!?》


《どこに感心しているんですか!?》(外伝11話参照) 


「―――殿、―――育児休暇を頂けないでしょうか―――?」


 いつしゃべり始めたのか分らない程の、蚊の鳴く様な声で吉乃は懇願した。


「ど、どうした!? 何か体に不都合があるのか!?」


 気配もそうだが、声まで幻聴と錯覚しそうな程に存在感が無い。

 元々吉乃は存在も気配も視線さえもフワフワとした、本当に捕捉が難しい人物であったが、声は(比較的)快活であったのに、その生気の無い声に信長は驚いた。

 目の前で発せられる声のハズが、どこからともなく聞こえる(ささや)きの様であった。


「―――もう、限界なのです―――」


 吉乃はダウン寸前であった。


「そ、そうか……。そうであったか。配慮はしたつもりであったが足りなかったか。済まぬ事をしたな」


 信長は察した。

 現在、信長の子供は5人居る。


 於勝丸(信正)は5歳、奇妙丸(信忠)は2歳になり、すでに傅役も付いているので育児の手は必要無いが、その代わり勘八(信孝)、茶筅丸(信雄)1歳、五徳(徳姫)0歳が歴史通り生まれている。


 侍女、乳母は当然、茜、葵、直子も総出で対処しているが、それでも足りなかったのだろう。


 もともと体は強くない。

 しかも茶筅丸と五徳は吉乃の実子でもある。

 産後の疲労も抜けきっていない。


 信長は前々世で吉乃を失った理由を『産後の肥立ちの悪さ』と知っている。

 1566年の事である。

 五徳を生んで7年後に至る期間まで肥立ちが回復しなかったのか、五徳以降も出産したが歴史に埋もれた人間が居るのかは判らない。


 史実通りに死ぬなら、後7年猶予があるが、そうはさせじと信長と帰蝶は様々に対策を取った。

 とは言っても体力向上位しか手段が無く色々やったが、しかし今、育児休暇を欲した。

 この歴史の育児休暇は、育児に関わる為の休暇ではなく、育児を休む為の休暇である。

 信長は、何かあったのかと心配になる。


《あー。いわゆるストレスや鬱ですかね。遥か古代(今現在)には産後鬱と命名されてましたねー》


《出産に鬱がある……だと!?》


 産後鬱とは出産に関わる鬱病である。

 産後鬱とあるが妊娠前や妊娠中も含まれ、妊娠に伴う精神の疲弊、ホルモンバランスの変化等の内面問題、夫婦関係、サポート配慮不足が原因とされる。

 もし読者の方々で思い当たる節があるなら、ぜひ病院に行きましょう。


《この時代では特に治療方法もありませんし、医療体制が整っていない以上、正に生きるか死ぬかのストレスを妊娠中の長時間晒される訳ですからねー。しかも吉乃さんは3回目ですか。そりゃあ推して知るべしなのでしょうね》


 信長は鬱に多少なりとも知識がある。

 平手政秀が鬱で死んだ可能性があると知らされたからだ。(6話参照)

 但し、精神に異常を来し狂う前例は知っている。

 三好長慶である。

 他にも大なり小なり、信じられない判断ミスや凡ミスをする武将と関わりを持った事があるから、何となく精神異常、いわゆる『乱心』には心得がある。


 ただ、まさか出産にそんな症状があるとは思わず、不意打ち同然の事実であった。


《成程? 言われてみると思い当たる節が無い訳でも無い。……しかしファラよ? お主、豪快に知識を洩らしとるが良いのか?》


《あっ》


 未来知識であるが信長も聞いてしまった以上、何もしない訳にはいかない。

 信長はこの時代に珍しく、女性に配慮が出来る人物なのだから。


「良いだろう。気分転換が必要なら存分にするが良い。何か心当たりがあってワシが対処可能なら改め様では無いか。子らを育てる人手が足りぬなら増強しよう。何でも申すが良い」


「何でも……? ならばお願いがあります」


「言ってみよ」


「農村へ行かせて下さい。色々試してみたい案があるのです!」


「のうそ……農村!? ま、まさか精神的疲労とは、農業に関われぬ苦しみ、と言う事か?」


 吉乃はダウン寸前であった。

 農業に携われないストレスで。


「そうです!」


 信長は胸を撫で下ろすと同時に、そんな事で良いのかと呆れる思いであった。

 勿論、当人は真剣である。

 何が負担になっているのか、それを他人が察する事は簡単な事では無い。

 だから鬱病は難しいとも言える。


「休息は必要無いのか? 何なら気の済むまで休んでいて良いぞ?」


「そんな殺生な!?」


 何もかも稀薄だった吉乃が、急激に存在感を増した抗議をした。


「しかし無理は禁物じゃぞ? 特にお主は体が……」


「ダメです! 農村に行きたいのです! その為に育児休暇を頂きたいのです! 色々試したいのです!」


 この歴史の吉乃は早くから農業に関わっており、独自の農機具を開発したりした。

 それが吉乃の寿命を延ばす体力向上にも繋がると、信長も理解し容認している。


「わ、分かった。それ位の都合も付けてやれず悪かった……!」


《これは歴史が変わったのでしょうか?》


《まぁ、生きているならそれで良い》


 信長達は歴史改変に驚くやら呆れるやら、複雑な気持ちで吉乃の頼もしさを感じるのであった。


「希望は分かった。止める理由も無い。しかし、まもなく刈り取り収穫も終わる頃だしな。稲作の後押しをするには時期が早いだろう?」


「寧ろ丁度良いと思います! 試したい事がございます!」


「試す……?」


「殿は見ましたよね? 私が工作している道具を」


「あぁ。あの(くし)の妖怪みたいな奴の事か?」


 信長の言う『櫛の妖怪』とは、いわゆる『千歯扱き』である。

 先程、信長が話していた『吉乃がまた面白い事をやっとる』とは、この事である。

 吉乃は戦で破壊された刀や槍を等間隔に並べ、千歯扱きの原型を作り上げた。


「妖怪!? ま、まぁ櫛は別れを招くとも言いますし、妖怪と言えばそうなのでしょうが……」


 宗教が絶対の世界で、『櫛』は大事な頭の手入れや飾りに使う神聖な物として扱われて来た。

 自らの分身として己の櫛を大切な人に手渡す事もある。

 一方、櫛とは『苦と死』でもあり、それを拾ったりする事は災いを招くと考えられて来た。


「別れさせるのは稲です! 刈った稲を米と藁に分離させるんです!」


 吉乃は己の私室に信長と帰蝶を招くと、改めて現物を見せた。


「……やっぱり、櫛の妖怪なんじゃ無いか?」


「妖怪と言うか、拷問道具にしか見えないんですけど……。人の体をこうガリガリと削る」


「拷問!? 酷い!」


 吉乃は抗議したが、刃こぼれしたり、曲がったりの、間違い無く戦場を経験したであろう、その極めて禍々しい瘴気漂う、妖怪同然の千歯扱き。

 仮に『幾人も葬って来た刀剣から生まれた妖怪』と言われたら信じられる程の威圧感ある姿である。

 ある意味説得力抜群であった。


「削る? 削る……あッ!! 成程な! ここに通して分離させる訳だな!?」


「え? 人の体を?」


 信長は気が付いた。

 一方、帰蝶は気が付かなかった上に拷問道具としての認識なのか、とんでもない光景を思い浮かべて居た。


「たわけ! 人を分離させるな! 米と藁と吉乃が言ったじゃろう!?」


「そうです! 帰蝶姉様、酷いです!」


「ご、ごめんなさい……???」


 この後、イマイチ理解していない帰蝶に説明する為に、実地試験となった地獄の櫛妖怪。

 収穫期であるのが幸いし即座に試験が出来たが、当然ながら現地の農民もおっかなびっくりであった。

 誰かが罪を犯し処刑されるのだと騒然となった。


「そ、そんなに酷い形ですかね……!?」


 すっかり涙目の吉乃を、信長は必死に慰める。


「ま、まぁ、その、何だ。百聞は一見にしかずと言うじゃろう? 試して見せれば理解は得られよう。《……多分》」


 信長は機能と原理を理解したが、確かに帰蝶や農民の言い分も理解出来る禍々しさを極めた物体なだけに、失敗したらどうしようと不安になる。


《まぁ、大丈夫じゃないですかねー?》


 ここまで形になっているなら、ファラージャには成功失敗判定は容易である。

 勿論、実地試験はそこそこ上手く行った。

 後は改良の範疇で性能が上がるのは容易に想像出来る成果であった。

 農民も帰蝶も、この櫛妖怪が拷問処刑道具では無いと理解し、この妖怪は福をもたらす妖怪として崇められた。


「結局、妖怪……」


「ま、まぁ良いじゃないか!? 奥州には福の象徴みたいな妖怪もいるらしいぞ!? そ、それにコイツは強そうじゃし!」


 一方吉乃は口を尖らせて遺憾の意を表明し、信長は必死に慰めたが、効果があったかどうかは不明だ。


「次いきます!」


「次!?」


 まだ何かあるのかと信長は焦る。

 今度の道具も妖怪認定されたら、吉乃の機嫌がどうなるか分からない。


「種籾が豊富な今、試したい事がございます!」


「試す? 何を?」


「城に戻りましょう!」



【1561年 近江国/仮設岐阜城(史実:安土城) 織田家】


「どうですか!?」


 仁王立ちの吉乃の腰は反り返り顔は天を仰ぐ。

 鼻が伸びるなら天まで届くだろう。


「見事じゃ! ここまで成果を挙げるとは!?」


 信長は眼前の光景に感嘆するしかなかった。

 近江国では空前の大豊作に見舞われて居たのである。


 吉乃は後の種籾の塩水選別の基になる水選別を、偶然の事故から発見した。(外伝22話参照)


 あれから数年。

 吉乃は常々考えて居た。


『もっと選別に適した方法があるのでは?』


 だが出産と育児で、考えを実践に移す時間が無かった。

 種籾の選別方法は織田家の機密扱いである。(なお流出済み。 外伝24話参照)

 気軽に誰かに『これこれこう言う手法を試して』とは伝えられない。

 

 だから一昨年の育児休暇で入手した種籾を使い、吉乃は色々試した。

 水選別の改良を。


 水より適した液体があるのでは?

 ならば身近にある液体は何がある?


 酒は?

 みりんは?

 泥水は?

 川の水は?

 雪解け水は?

 ―――海水は?


 吉乃はついに塩水選―――の一歩手前、海水選に辿り着いた。

 海の無い近江で海水選は出来ないので、尾張で選別した種籾を運んでの運用である。

 実は海水の塩分濃度では、まだ塩水選の濃度には足り無い。

 それに汲み上げる場所、例えば淡水と海水の混じりあう汽水域でも濃度が変わるので、まだまだ不安定な選別であるが、それでも水より効果が如実に表れた。


 ただ、それを即座に全域で試す事はしなかった。

 海水に漬けた種籾が発芽するか分からなかったからである。

 種籾の分別が出来ても全滅では困る。

 時系列としては1559年に海水選考案、1560年に尾張の一部で試して問題無い事を確認し、1561年の今、領地全域展開で大豊作に繋がった。


 なお、筆者は酒、みりんで試してみた。

 万が一、世紀の大発見をしても困るので念の為である。

 種籾が手に入らず玄米での実験をしたが、酒やみりんでは米は全部沈んだ。

 勿論、水ならある程度、塩水選では更に強く分別は出来た事を記しておく。


「本当に見事じゃ、吉乃!」


「ありがとうございます」


「あの農機具も民には好評じゃったな」


 信長の言う『あの農機具』とは『櫛妖怪』の事では無い。

 吉乃が開発したのは千歯扱きや海水選だけでは無かった。


「そうですね。(チリ)は掃くのが一番です」


 塵は掃くのが一番―――


 人地の城で育児に忙殺されて居る時に、ふと庭に目をやり、とある光景が何となく頭に残った。

 何の事は無い、庭掃除の光景であった。


『竹箒で落ち葉を集めている』


 ただそれだけの光景である。

 しかし、落ち葉はともかく、雑草は箒では取れず鎌で根を土と一緒に掘り起こす。


『硬い土に根を張った草は、そう簡単に取れないのねー。ふ~ん? ……あ!』


 その時閃くモノがあった。


『柔らかい土なら、箒で掃くだけで除草出来るんじゃ!?』


 除草作業は本当につらい。

 中腰での作業は腰痛にもなる。


『水田の除草なら箒で出来るんじゃないかしら?』


 その考えの元、水田の雑草を竹箒で掃くと、草が箒に絡め捕られたのである。

 若い雑草に至っては撫でるだけで取れた。

 何より、中腰にならなくても良い。


 また、ある程度稲が生長した時は、もっと雑に箒を扱っても、稲は抜けず雑草だけが取れる事も分かって来た。

 仮に稲が倒れても、一日たたず持ち上がる。

 こうなると、水田を歩き回るだけで雑草の除去が可能になった。


『ひょっとしたら、箒にしなくても、笹の葉が付いた状態でも出来るんじゃないかしら?』


 箒は竹の枝から笹の葉を取り除く必要がある。

 箒一本作る程度、そこまで手間も掛からないが、南近江、尾張、伊勢全域で展開するには相応の工数も掛かる。

 しかし箒に加工する必要すら無いなら、切り出してきて、そのまま使えば良い。

 これもまずまず上手く行った。

 竹箒の間に合わせとしては十分な効力があった。


『それなら……それなら!? 4本ぐらいの箒、竹笹を担いで複数列同時とかも出来るんじゃないかしら!?』


 吉乃の発想は止まらなかった。

 最終的には背負子を改造し、横木に笹または竹箒を固定し、複数列同時除草を可能にした。


挿絵(By みてみん)


 体力がある者なら5、6列同時も可能な除草システムは、戦国時代の強制無農薬栽培で、手で一つ一つ引っこ抜くしかなかった除草作業を劇的に改善させる革命をもたらした。

 こうして吉乃は、農耕中興の祖の名に恥じぬ閃きで信長を助けたのであった。


 なお、この箒除草システムも他国に漏れる事になったが、そんな事は微々たるモノであった。


「どんな事でも限界は無いのだな。海水選、箒除草、櫛妖……千刃(せんじん)。恐れ入ったわ」


 名前が櫛妖怪ではあんまりなので千歯扱き―――とは命名されず『千刃』となった。

 本来の由来は『一日で千把の稲を処理出来る』とも言われるが、こちらの歴史では『刃をたくさん備える』と定義された。

 更に時が立ち、『千刃(せんじん)』が『千刃(せんば)』、『千刃(せんば)』から『千歯(せんば)』へ変換したりしなかったり、いつからか『扱き』が追加されたりで、あやふやに伝わる事になる。

 ただ、吉乃の功績である事はハッキリと伝えられた。


「今は近江を掌握する為の期間。その大事な初年度を完璧に始められた。こんなに助かる事はそうそう無い!」


 六角から織田に領主が変わった南近江。

 その初年度が大豊作である。

 宗教が絶対の世界において、これは重要である。

 天に愛されているとしか思えない信長の存在は、農民の忠誠を大幅に引き上げた。

 しかも、今回信長は吉乃に休暇を与えた以上の介入はしていない。

 統治に忙しかったのもあるが、殆ど勝手に歴史が改変されたと言っても過言では無い。


 同時多発的に歴史改変を起こしている信長だが、最近は敵の予測が信長を上回りパワーアップしている中、延暦寺に格差を見せ付けたい信長にとっては、本当に有難い成果である。


()()()()になってしまったからな。これで多少は後押し可能になろう」


 今、織田家は()()()()()()()に陥っている。

 今川の侵攻も、武田の侵攻も、足利との戦いも、三好との冷戦も苦しいが、対処可能、或いは対処出来ると信長は思っていたが、今の窮状はある意味当たり前、しかし予想外だったが故である。

 領地が広範囲になった分、その影響も大きい。

 一体何が起きているのかは17章で判明する事である。


「何れは立ったまま全ての作業が出来る様にして見せます!」


 吉乃もその苦境は知っている。

 ただ、流石に戦場では役に立てない。

 だから己の役目はここであると使命感に燃え、将来の野望と理想を語った。


《そ、それは流石に無理じゃないですかねー……?》


 ファラージャは、無理だと断言出来る程度には知っている。

 田植えの機械化は明治に入ってようやく研究が始まるが、機械の動力が無い戦国時代には流石に無理であろう。

 それに機械化以外で腰を曲げずに植えられる方法があるとは、ファラージャには思えなかった。

 稲刈りの場合は動力無しで立ったまま刈り取れる道具が現代にはあるが、戦国時代で望むのは酷であろう。


《別に失敗しても良い。その失敗が別の成果に繋がるかも知れん。挑む事こそが肝要。考えるのを放棄したら終わるのじゃ。ワシも今の苦境を脱する為にひたすら考えよと、改めて学んだわ》


 信長は今の仮設岐阜城(史実:安土城)を見ながら、今後の挽回作戦を考えるのであった。

小説家になろう御用達(?)の千歯扱きですが、今更そのまま登場させても全く面白くないので妖怪扱い、かつ、この小説らしく歴史を変化させてみました!

江戸元禄期に宇兵衛さんの手によって開発されたそうですが、戦国時代で開発されたなら、初期型はこうなるんじゃないか?と想像しました。


箒除草ですが、小説家になろう全体でも初登場、だとは思いませんが、色んなワードで検索しても引っ掛からず、界隈での扱いが不明だったので普通に登場させました。

もちろん箒除草は私の妄想ではなく実在します。

またこの除草方法は古代にもあると思ってましたが、写真が残る近代でも腰を曲げて除草作業をしているので、存在したかもしれないが、普及もしていないと判断しました。


また、海水選まで登場させたのに、なお苦境とは何か?

17章をお楽しみに!

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