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信長Take3【コミカライズ連載中!】  作者: 松岡良佑
16章 永禄3年(1560年) 弘治6年(1560年)契約の化かし合いと、完璧なる蠱毒計
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149-1話 南北近江侵攻戦後始末 足利義輝

149話は3部構成です。

149-1話からご覧下さい。

【近江国北西/高島 織田信長軍 新本陣】


「良し。これにて今回の北近江攻略は終いとする。朽木を残したのは無念だが、今の六角興福寺を想定していない軍でこれ以上の進軍は危険じゃ。斎藤殿には申し訳ないが、朽木攻略の折には必ず援軍を派遣するからと申し伝えて欲しい。勿論、高島の支配は約定通り斎藤殿に任せる」


「承知しました」


 信長は明智光秀に伝えた。

 本当は朽木まで含めた近江攻略予定であったが、狭い朽木で待ち構える想定外の敵を倒すのは今の戦力では心許ないし、別の不安要素が潜んでいる可能性がある。


「六角は朽木から動かぬだろうが、興福寺軍は覚慶(足利義昭)が行方不明とあれば近い内に撤退するじゃろう。それまでは北近江担当軍は十兵衛(明智光秀)に預ける。高島の攻略を中断した拠点を平定しつつ睨みを利かせよ」


「殿は如何されますか?」


「こうなってしまった以上、南近江担当武将とワシは南近江に引き上げじゃ。三左衛門らを安心させねばならぬし、協議する事もある」


 義輝ら捕縛武将の扱い。

 覚慶以外は何の処遇も決まっていない。


 朝倉浅井への対応。

 浅井が朝倉の支配を離れて、将軍に加担した理由を明らかにしなければならない。


 今後の三好への対応。

 予定外に蠱毒計を終わらせてしまった報告と、今後の連携について決めねばならない。


 更にもう一つ。


「わかりました。高島の平定はお任せを。一点だけ確認が。捕縛した者達の扱いです。覚慶殿以外の他の者は如何されますか? 処刑とするならば此方で対処しますが」


 前将軍の処刑を光秀が容赦なく提案した。


「義輝、晴元、輝政(浅井長政)、直経はこのまま連行する。まだ判別出来ぬ事があるからな」


「はっ」


「《ん?》それ以外の捕縛又は投降した敵兵の内、将軍が作った親衛隊は高島平定で使い潰した上で、生き残ればそのまま吸収して戦力とせよ。農兵は武器防具を没収した上で処罰無しでの解放とする。何なら兵糧を土産に持たせてやれ。これはこの後の高島平定でも同じじゃ」


「承りました。……還俗した延暦寺の兵は?」


「殺せ。例外は無い」


「はッ!」


 信長は極めて冷酷無残に処遇を決め、光秀も極めて冷酷無残に了承した。

 覚恕は還俗兵を、延暦寺再建には不要の存在として切り捨てているので、殺されても痛くも痒くも無いが、信長はその思いを知らないし、還俗などこの戦に参加する建前としか思っていない。

 どうせ厚顔無恥にも延暦寺に戻るに決まっていると判断し、戦力に戻るのを警戒し処刑を命じたのである。


《さっき、光秀は残念そうな顔をしたよな? 何故じゃ?》


《どどどどう何ですかねッ!?》


 信長はファラージャに聞いたが、当のファラージャは、先程の信長と光秀のやり取りに縮み上がっていた。


《どうした? まぁ気のせいか》


 信長が『気のせい』と感じた光秀の思惑は、義輝以下捕縛した武将は殺すべきと考えていた。

 理由は単純で、偉大な主たる信長を殺し掛けたからだ。

 その小賢しい策略に気が付かなかった己もに怒りが湧いた。

 勿論、流石に爆発暴走は自重した。

 顔に少し出てしまっただけである。

 信長はその光秀の感情を、鈍感系主人公の如く『気のせい』だと片づけた。


「良し。では行くとするか」


 信長の号令で、信長と南近江担当軍武将は、自分達が伝令の為に乗った船で帰還する事となった。



【近江国南/森可成本陣】


「殿! 良くぞご無事で!」


 南近江に帰還した信長は、さっそくの熱烈な出迎えを受ける。

 信長も可成に『暫く見ない内に(やつ)れたな?』と冗談でも言おうかと思ったが、本当に窶れていたので止めた。


「織田殿。無事で何よりだ」


「これは近衛殿下。殿下のお陰で生き延びる事が出来ました」


「いずれ必ず、今回の御礼を果たしたいと思います」


「フッ。楽しみにしておこう」


 信長は、朝廷に借りを作るのを良しとは考えていない。

 しかし、今回は命を救われる特大の借りを作ってしまった。

 流石に何もしない訳にはいかないだろう。


「三左衛門(森可成)。良くぞ伊勢守(北畠具教)らを北近江に派遣する判断を下した。見事な判断力じゃ。お陰で損害は軽微であった」


「い、いえ、某など伊勢殿に背中を押されて決断出来たに過ぎませぬ」


「ん? そうなのか伊勢守?」


「ははは。森殿が謙遜しているだけですよ」


 信長が無事姿を現し、軍事行動中とは思えぬ弛緩した空気に溢れる可成本陣であった。

 暫くは北近江で何があったか、どんな戦いがあって、何で足立藤次郎と川元晴ノ介が捕虜として連行されているのか、後は、帰蝶が戸板で運ばれて今この場で横になってるか話す。


 特に帰蝶の甲冑無しで浅井輝政、足利義輝を倒し、遠藤直経との戦いに生き延びた詳細を聞いた諸将は、感嘆を通り越して眩暈を覚えた。

 将軍達が、実は織田家に在籍していた事と同じ位に驚いた。

 近衛前久は、朝廷で帰蝶に取り憑いた悪霊に対し、祈祷をしようかと提案する有様であった。

 それは信長も同じで、思わず頼もうかと考える程、自分の妻ながら改めて化け物だと感じるしかなかった。


 そんな恐怖と困惑の空気を信長が一掃した。


「よ、良し! 近衛殿下がいらっしゃるなら丁度良い。改めて詳細を聞くと共に北近江での戦果と今後の方針を定める」


 今この場に居るのは、信長、森可成、後藤賢豊、進藤賢盛、蒲生賢秀、滝川一益、北畠具教、柴田勝家、帰蝶らの織田軍。

 後は、連行された足利義輝、細川晴元、浅井輝政、遠藤直経、覚慶らの足利軍の捕虜。

 更に朝廷から近衛前久である。

 この頃には義輝も目を覚まし、しかし、縫い合わされた片口から胸部の切り傷が元で、帰蝶と同じく戸板に横たわっていた。


「まず、決定事項を伝える。今この場にいる足利中将様(義輝)、細川右京殿(晴元)、覚慶殿、浅井輝政、遠藤直経は全員織田で預かる。人質でもあり、協力者であり、懐柔して家臣に迎えたいと思っておる。縄を切れ」


 義輝は動けず、覚慶は琵琶湖横断前に縄目は解かれていたが、細川晴元、浅井輝政、遠藤直経は今やっと解放された。


「輝政は浅井に対する人質。直経はその武勇をワシは買う。不服は承知。しかし断れば輝政の身の安全は保障しない。諦めよ」


「……。良かろう。だが浅井の殿への忠誠を忘れた訳では無いぞ? あの方は少々世の流れが見えておらぬが、それでも民に必要な方なのだ」


 遠藤直経は、主君久政の足利家への盲信には頭を痛めている。

 足利家に対する方針は信長の方が正しいと思ってすらいるが、だからと言って主を変える程に見限っている訳では無い。


「それで良い。貴様が本心からワシに忠誠を誓うなど期待しておらん。期待しておるのはその能力。貴様が励む程、輝政にも自由が与えられる。将来浅井に戻りたいなら励むが良い」


「……フン」


「輝政も妙な真似をすれば、その罰は直経に向かうと思え。貴様らは一蓮托生。励めば誰も辛い思いをしなくて済む」


「わ、分かりました……」


 信長はまず浅井輝政と遠藤直経を自陣営に引き入れた。

 かつて欲した直経を手に入れ、信長は内心ほくそ笑む。


「次、細川右京(晴元)。此度の采配と策は誠に見事であった。お主にここまで追い詰められるとは思いもよらなかった。その個人の能力をワシは買う。更に、細川京兆家としての立場。管領としての役目。お主をこのまま手放すのはワシの戦略としても痛い。その全ての立場のままワシの配下となれ」


 細川京兆家。

 名門細川家の宗家である。

 信長は史実でこの家格を織田政権で利用した。

 晴元の子の細川昭元などは、信長の妹を与えられ重用された。


「まぁ、管領の立場は14代の手によって解任されるかも知れぬが、それは大した問題ではあるまい。何なら15代の管領として復帰しても良いだろう」


 実は信長は、細川家の家格だけが必要であった。

 この戦の前まではそう思っていた。

 だが、晴元の覚醒とも表現すべき能力の高さに方針を変更し、息子ではなく親ごと手に入れる事にした。


「……断る理由はありませぬな。ただ、それは中将様が生きている事が条件。それが叶うなら織田殿に協力しよう」


 一方、晴元個人としては、既に信長に魅了されていると言っても過言では無い。

 正直願ったり叶ったりかも知れない。

 ただ、そこは長年義輝を支えて来た管領である。

 最低限の役目は果たさねばならない。


「中将殿か……。さてどうしたものかな?」 


 信長は戸板に横たわる義輝を見る。


「……」


 義輝は体が動くのなら、今すぐ噛み付きそうな程に憎悪に狂った獣の目をしている。


「将軍職を退き、大御所の立場も失われ、足利宗家としての立場も無いに等しい。以前尾張に来た時に掛けた言葉を覚えておるかな? 『日ノ本の誰よりも高い地位に居ながら誰よりも不利な立場』とワシは言ったな?」(73話参照)


「……クッ!」


「今はそれに加えて、右京ら先の4人の誰よりも価値が無いな。いや? 右京を抱える条件としての価値は認めよう」


「ど、どこまで余を愚弄すれば……ッ!!」 


 怒りの義輝は、斬り裂かれた胸の痛みを忘れて立ち上がる。

 居並ぶ諸将も、余りに辛辣で残酷な信長の言葉に、冷や汗とも悪寒とも言えない表現不可能な圧力を感じる。

 信長が北近江から帰還した先程は、あんなに和やかで安堵感あふれる空気だったのに、そんな事があったのを忘れそうになる。


「高島や朽木では苦労した様だな。統治した地の状態を見れば分かる。心血注いで親衛隊も組織した。六角相手に互角に戦えた。蠱毒計の中にあって滅びず生き延びた。大したものだ。ここまで不利な立場から挽回したのは称賛に値する。正直ワシは無理だと思っていた」


 さっき『利用価値が無い』と言った口で義輝を持ち上げる信長。

 怒りの義輝も、信長が何が言いたいのか分からない。


「い、一体何を―――」


「だが諦めろ。足利義輝は終わったのだ」


「!!」


 義輝は言葉の刃に一刀両断された。

 切腹や斬首に処される言葉よりも遥かに重く、鋭く、魂まで両断する信長の覇気溢れる言葉であった。

 信長は帰蝶以上に殺気を放てるが、それとは全く違う、こればかりは幾ら転生しても資質の無い者には永遠に不可能で、真なる支配者にしか纏えない威厳。

 日本の副王たる三好長慶と同等か、それ以上の、まさに覇王としか表現出来ない気配。


 全ての者に格の違いを思い知らされる。

 絶対に逆らってはならない相手だと、脳が、体が、心が納得してしまう。


(こ、この感覚! 長慶にも感じ、追い求めてついに届かなかった威厳! そうか……)


 義輝は信長と初めて対面した時を思い出す。

 無位無官の信長に『まずは自分が頭を下げて挨拶しなければならない』と錯覚した時を。


(……ワシは終わったのだな。……死ぬか)


 もうそれしか手段が無いと思い込んだ時、義輝は複数の視線を感じた。

 信長の家臣や、捕縛された晴元ら4人、近衛前久が、懸命に義輝に視線を送っていた。

 彼らは突如浴びせられた恐怖と威厳に何とか抗いながら、懸命に目で何かを訴えている。


(こ奴らは一体―――まさか―――何か活路があると―――活路―――馬鹿な!?)


「……」


 信長は黙っている。

 もう数刻もこの場に居る様な感覚に陥る義輝は、それでも懸命に考え答えに辿り着いた。


「あ……? まさか……!? あ、足立藤次郎として生きろと言いたいのか……?」


 正解であった。

 義輝以外の全員が、信長の話しぶりから『足立藤次郎』に辿り着いていた。


 信長は義輝に価値は無いと言った。

 言った言葉に嘘は無い。

 足利義輝の役目は終わったのだ。

 しかし言った言葉以外には価値を見出していた。


 義昭の兄である事実。

 信長に屈服した義輝が睨みを聞かせれば、将来可能性のある義昭の暴走に対策が打てるかも知れない。


 信長でさえ無理だと思っていた朽木高島での挽回。

 三好と織田に囲まれ、これ程の苦境から立ち上がった経験に価値が無い訳が無い。


「お主は足利の血に呪われておると言っても過言では無い。気持ちは分かるが足利ではもう先は無い。足利では良くて元に戻す事しか出来ぬ。始祖尊氏公への原点回帰しか出来ぬのだ」


「それの何が悪い!?」


 強い言葉ではあるが、先程より格段に冷静だ。


「そこに一切の未来への構想は無い」


「何だと……!? ……あっ」


 義輝は言われて気が付いた。

 崩壊し掛けている足利将軍家を、元に戻す事しか考えていなかった。

 仮に元に戻っても、辿るのは同じ方法で、それは将来必ず、元の木阿弥になる事など考えもつかなかった。 


「ワシは尾張で言ったな? 『挽回の為の第三の答え、ワシなりの答えがある』と。その答えを言おう。とは言っても、今、自力で気が付いたな?」


 足利の血筋からの解放。

 即ち足立藤次郎―――でも誰でも良いが、とにかく生まれ変わるに他ならない。

 違う人間になったのなら、足利将軍家以外の考えが浮かぶ可能性もある。

 しかし、足利将軍家に囚われていては、絶対辿り着けないと信長は断言した。


「足立藤次郎……。成程な! その立場で織田に仕えよと言うのだな!?」


「そうじゃ」


「……狙うのは足利将軍家の将軍職返還か?」


「ほう? 一足飛びにソコに気が付いたか」


 義輝が、さっそく将軍家に居ては絶対に思いつかない方法に気が付いた。

 その言葉には家臣も、捕虜も、前久も驚いた。


「織田が力を付け、足利家が将軍と政権を辞する。その為に、そう振舞っても問題ない状態まで織田家を育てる。そこで15代となる覚慶殿よ。覚慶殿には将軍職返上の大任を担って貰いたい」


 かつて史実では散々扱いに困った足利義昭。

 前々世で将軍職返上を迫らなかったのは、将軍のまま追放した方が、より名声が下がって織田の有利に運ぶと判断したからである。

 しかし今は、最初から武力で屈服させ、格の違いを見せ付けた上で、兄の要請があるならば、覚慶にその決断をさせるのは容易いと睨んでいる。

 これは覚慶を生かすと決め、琵琶湖を南下中に電撃的に気が付いた事である。


(義輝は足利から解放して、義昭をどうする? 奴は足利の汚点だったが、それは同時にワシの首も絞めた。じゃあ逆は? 足利の英雄に仕立て上げられないか? ……奴が足利の英雄?)


 突拍子も無い事をふと思いついた信長。

 だが、見る見る内に妄想が現実味を帯びて来る。


(……こ、これは、全てを丸く収める事が出来るのでは無いか? どうすればそこまで持っていける!?)


 琵琶湖南下中ずっと考え続け、今やっとここまで辿り着いた。


「これは足利家の為でもある。お主らは後世に判断を誤り続けた愚かな末代の兄弟と語り継がれたいか? 英雄尊氏の子孫は、自らの役目を感じ次代にその役割を託したと語られたく無いか? このままではお主らは怨霊確実じゃぞ?」


 怨霊化の条件は、とにかく理不尽に悲惨で、不幸である事が必須条件で、高い身分であればある程、強力な怨霊となれる。

 足利義輝と足利義昭はその条件を史実も今も全て満たしている。

 勿論、条件を達成した所で怨霊になる事など無いが、この時代の人間には効果抜群の殺し文句である。

 事実、覚慶は今、重大かつ厄介な将軍職に何ら魅力を感じていなかったし、現役の僧侶である覚慶は己が怨霊と化す未来に絶望していた。


(お、怨霊!? こ奴がそんな事を言うタマか?)


 一方、義輝は辛うじて踏み止まる。

 義輝は霊的現象を否定している訳では無いし、確かに魅力的な提案だとは認めつつ、信長が足利家から権力を奪って何がしたいか考えた。

 この期に及んで、信長による自分達の怨霊化阻止を信じる程、能天気な義輝では無い。


(あっ)


 不意に、尾張から去る時を思い出し戦慄し、膝から(くずお)れる 義輝。


(まさか……まさか―――『人地』か!?)


 地面に膝を突いた衝撃で胸の傷が激しく痛む。


「……分かった。足利義輝は死んだのだな」


 義輝はとうとう屈した。


「但し! これで織田家がしくじれば、それこそ沈む織田家に権力を渡した将軍家と後世まで伝わる事になる! それは絶対に許さん! 織田に綻びが見え始めたらワシは容赦無く裏切るぞ! それでも良いなら足立藤次郎としてお主に仕えようぞ!」


「それで良い」


 足利義輝の家臣化。

 とんでもない快挙である。

 可成本陣は、興奮とも熱気とも、困惑とも不安とも付かぬ異様な雰囲気に包まれた。

 まだ実現していないのに、未来のビジョンが確定したかの様に鮮明になる。


《と、殿!! こんな手段を考えていたんですか!?》


《まぁ良い夢は見せてやらねば誰も付いて来ぬよ。これからが辛い戦いとなろうが、こ奴らも活用せねば未来は開けぬ。それに義輝が言った様に、ワシが倒れたら画餅何じゃぞ?》


《それでもです!》


 帰蝶は極めて興奮している。

 信長のプランに今までで一番強い、明確な未来変化の可能性を感じたからだ。


《将軍の家臣化と将軍職を返上させる何て、良く思い付きましたね?(成る程。これは豊臣秀吉が取った手段ね)》


 豊臣秀吉が取った手段。

 秀吉は正に足利義昭を臣従させ、将軍職を返上させたのである。


 源頼朝以降、受け継がれるのが伝統となった将軍職で、将軍の地位を返上し次の将軍を指名しなかったのは、鎌倉最後の守邦親王、大政奉還の徳川慶喜と、豊臣秀吉に臣従した足利義昭だけである。

 豊臣秀吉は、信長の失敗に学んだ。

 秀吉は信長の戦略を継承する、義昭にとって憎い相手でありながら、懐柔する快挙を成し遂げた。


 当然、本能寺後の話であり信長が知る由も無いが、当事者の信長もやり直せるなら学べる。

 ならば思い付く手段であろう。


《フン。ワシも右大臣を返上した身だから問題無いはずだ。(コイツ余り驚かんな? これは未来にもある例だな?)》


 ファラージャは未来の例を知っていたので、感心ししきりだ。

 信長はその思考も読み取り、可能である事を確信する。

 

「良し。では次だ。具体的な今後の展開を伝える」

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[一言] 鈍感系主人公…フラグ!?
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